ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

アニメ『ゲーマーズ!』はガチのゲーマーが観ても面白い名作だという感想

 

f:id:arcadia11:20170727013544j:plain

J1N1です。

最近、アニメ『ゲーマーズ!』にハマってます。最初は全然期待してなかったんですが、いざ観始めると思いの外よく作られていると驚き、その感想をまとめようと考えた次第です。

普段あまりアニメを見ないので、色々とおかしな評価が混じってると思いますが、ご容赦くださると助かります。

 

さて、『ゲーマーズ!』というアニメは、ただゲームが好きな平凡な高校生を主人公に据えた、ラブコメ要素の強いラノベを原作とした作品です。

あらすじは、うだつの上がらない主人公雨野が、唐突に学年トップの美少女天道に「ゲーム部」に勧誘される。で、知らず知らずのうちに2人目のヒロインも登場して、主人公を奪い合う関係になる。みたいな話です。

ええ、言いたいことはわかります。「それゲームをダシにしただけの、量産型ラブコメでしょ」と私も正直思いました。冷やかしついでに1話を10分ぐらい観た感想はそんな感じです。

ではここから、ここまで観た1話と2話の感想を含めて、本作の魅力を紹介したいと思います。

 

1話:ゲーマー同士はそうそう仲良くなれない

f:id:arcadia11:20170727013536j:plain

1話の流れは、作品の導入部分を兼ねているだけにシンプルです。

 

ある日、雨野がゲームショップでゲームを吟味していると、唐突に美少女の天道に話しかけられ、ゲーム部に勧誘される。

翌日、そのゲーム部を訪れると、同じく勧誘された男子が一人到着していて、彼らの先輩を紹介される。先輩は実力のあるFPSプレイヤーと格闘ゲーマーで、さっそく新歓を兼ねて様々な対戦ゲームでプレイする。

これまで友人そのものが少なかった主人公は、人とゲームを遊ぶことの喜びを知るが・・・

 

ここまでは極めてありきたりな話だと思いました。ところが、雨野は違和感を感じます。対戦しても、楽しくないのです。

何故か。それはゲーム部の部員全員が何かしら競技ゲームを遊んでいて、ゲームの技術を磨くことに喜びを感じていたからです。一方、雨野はゲームは好きでも、ただ触れていれば良いという立場でした。

その点に気づき、気圧された雨野は、天道に「残念だが、自分はゲーム部にはいられない。恐らく我々は違う人種なのだ」と告げ、ゲーム部入部を辞退します。

雨野は既に気付いたのです。「ゲーマー」なる人種にも色々いる。ただ作品に触れていれば楽しい人間もいれば、切磋琢磨して強くなろうとする人間もいる。そして彼はその前者にして、完全なマイノリティだったのです。

同時に、才色兼備と謳われる天道には、それが理解できません。既にゲームが趣味という自身の異端さは理解してるだけに、その異端者の中で更に価値観が異なることが納得できない。

 

さて、ここまでシビアに書いてきましたが、実際に作品自体がシビアなわけではありません。実際は雨野も天道も楽しくラブコメしているので、ご安心してください。

とは言え、この「課題」を1話から盛り込む姿勢は素晴らしい。すっかり作品の虜になりました。

「課題」というのは、無論同じゲーマーでも方向性が違うという課題です。所謂「エンジョイ勢」と「ガチ勢」の違いという奴でしょう。

これはゲーマーにとって切実な問題です。私にも覚えがありますが、ゲーム仲間の輪が崩壊する大抵の原因はこれです。「何でもいいから楽しくやろうよ」と「強くならないと楽しくないよ」という意見は絶対に理解出来ないのです。

そもそも、こうした些細にして重要な人間関係の軋轢を、しっかりと作品に盛り込む丁寧な姿勢は素晴らしいと思います。ゲームやラブコメ関係なしに、こうした細かい描写が作品のリアリティを裏打ちすることは、物語の基本中の基本ですから。

 

それはそうと、当紙でも同じ話題をエントリにして、それなりに拡散されたこともあります。個人的に思う所を書いたので、読んで頂ければ幸い。

ゲーム初心者の「人権」 初心者は保護すべきなのか? - ゲーマー日日新聞

 

2話:何故ゲームを遊ぶのか

f:id:arcadia11:20170727013733p:plain

才色兼備の天道の勧誘を断った、日陰者の雨野。それを周囲のクラスメイトは冷ややかに見ています。スクールカースト上位の上原は、特に何か思うところがある様子。

上原と取り巻きは、いつものように放課後にゲームセンターで暇を潰します。すると挙動不審な雨野を発見。上原は雨野を一緒に遊ぼうと誘います。雨野も萎縮しながらも、一緒にゲームを遊べることに喜び、夢中になって遊びます。そんなはしゃぐ様を見て、上原もまんざらではありません。

しかし、上原の取り巻きが近づくと、突然雨野は理由も告げずに逃げ出します。それを見て、上原は雨野を追いかけ問い詰めます。

すると、雨野は「上原くんは”リア充”だから」と答えます。それを聞いた上原は激怒。「人にレッテル貼りして、自分はゲームに現実逃避して、辛うじてプライドを保っている。自分も日陰者だったが努力の末に今の自分がある。お前もゲーム部も似たようなものだろう」と。

一方、雨野も怒りながら、「自分が現実逃避して、努力していないが傲慢なのも事実。だがゲーム部の人間は別物だから、その点については撤回しろ」と答えます。その答えに満足した両者共に和解し、ついでに天道さんは改めて雨野に惚れましたとさ。

 

こんな話です。ここもとてもよかったですね。

2話の肝は、当然上原と雨野の衝突だと思うのですが、まずこの衝突、「ゲームが好きだからゲーマー」なのか「ゲームしか出来ないからゲーマー」という衝突だと思います。

 

ゲームを含めた趣味を嗜好する人間は一般にオタクと言われます。問題は、そのオタクたちが、何故その趣味を好むかです。

普通、趣味は何らかの魅力があって没頭します。しかし、オタク趣味と言われる類は、「それが好きだから」というより、「それしかないから」「それ以外のハードルが高いから」好まれる傾向にあるのも事実でしょう。

実際ゲームのハードルは低い。作品次第とは言え、他人と比較もされず、安い価格と短い時間で、小学生でも遊べるよう作られている。安いペイで安いカタルシスを得られるのも間違いではない。

故に、人はオタク趣味を「暇潰し」と蔑むのです。そして、スポーツや競技で努力できず、労力も費用も少ない「暇潰し」で妥協した人もいるでしょう。

雨野はそうした己の弱さを認めますし、その弱さ故に上原を「リア充」呼ばわりして、彼の追求から逃げようとした。口八丁で正々堂々とコミュニケーションを取ることさえ拒絶したのです。

 

一方、そうした弱者の立場から立ち上がる者もいる。ゲームに本当の魅力を感じて参入する者、或いは、他の趣味を遮断されてゲームに追いやられながらも、その可能性を見出して世界中に100万人のファンを抱えるプロゲーマーになった男もいます。

雨野が激怒したのはそういう点です。自分は実際そうだが、ゲーマー全員がそうと限らない。天道さんやゲーム部の皆は弛まない努力でそれを証明していると。

そもそも、ゲーム部の真剣なゲーマーたちに気圧され、参加を断った雨野ですから、その言葉には一層の真実味がります。既に1話と2話が繋がっているわけですね。

この「喧嘩」は、一見ありふれていて、ゲーマーが一度は考えたであろう課題です。この点を例によって盛り込む姿勢は、素晴らしい観察眼だと思います。

 

もう一つ、このシーンの素晴らしさは、「公平な描写」だと思います。

要するに、主人公が正論を吐いて一方を「論破する」ではないんです。雨野も上原も一定の正しさがあり、間違いがある。故に今回は和解になっています。

最近では「弱い主人公」が流行っているようですが、だからといて気合で乗り切ったり、露骨に作者の意見を代弁させて、強さを描写する陳腐にはうんざりします。

それでも、主人公にはしっかり精神的な落ち度がある。本来、ゲーマーであろう読者が感情移入するのは主人公のはずですから、その雨野の致命的な欠点を描き、物語に活かすのは驚きました。

 

結論:本当に「ゲーマー」を描いている

ということで、『ゲーマーズ!』の紹介でした。長くなりましたが、それだけ1話も2話も、ゲーマーにとって普遍的な、しかし大きなテーマを描いた内容だと思いました。

最も、これからどうなるかは知りません。私は原作を読んでいないし、アニメが完結するまで読まないでしょう。原作と映像化作品は、完全に別物だと考えているので。

それでも面白かったのは事実です。普段からアニメは見ないけど、それを後悔しました。こんなテーマ、ラノベやアニメじゃないと取り扱ってくれないからねぇ。

 

「ガチ勢とエンジョイ勢の違い」とか「リアルで充実してないからゲームをするのか否か」とか、本当に興味深いテーマも優れているのですが、作品全体として特に感心した点が一つ。

本作の最も優れている点は、本当に「ゲーマー」の姿を描いていることです。

基本のテーマである「ラブコメ」「ゲーム」に関しても、無論よく描かれています。ヒロインは魅力的で、かつ恋愛に進展する描写が丁寧。登場するゲームはリアリティで、しかもジャンルの偏りも少ない。

しかし、中核にあるのはタイトル通り「ゲーマー」、いや「人間」なんです。1話であれ2話であれ、描かれる内容はゲーマーという人種が直面する問題です。

これが本当に嬉しかった。ゲーマーをオマージュする、ラブコメを展開する、そんな作品はいくらでもあります。『ハイスコアガール』『ソードアート・オンライン』。

それよりも、ゲーマーという人間そのものの描写が本当に上手い。物語の運び方は至ってシンプルなんだけど、それが丁度いい舞台に思える程、個性豊かなゲーマーが活躍します。

 

ところで、当紙の名前は「ゲーマー日日新聞」。ゲームだけでなく、ゲーマーの方に何かしら伝えたい想いで作ったブログです。

一時、「尊敬するゲーマー」特集として色々な人に取材して記事にしたこともありましたが、それぐらい私は「ゲーム」と同じく「ゲーマー」の姿にも関心があります。

ゲーマーはまだ世間的にはオタクであって弱者です。それは単に虐げられているというより、無関心のそれです。だから、小説であれラノベであれアニメであれ、この特殊な人間たちを掘り下げた作品は少ない。これは大変勿体無いと思います。

それをしっかり掘り下げた、見ごたえのあるアニメが放送された。これはとても嬉しいし、是非多くの「ゲーマー」に観て頂きたい一本です。

 

ゲーマーズ! 雨野景太と青春コンティニュー (富士見ファンタジア文庫)
KADOKAWA / 富士見書房 (2015-04-24)
売り上げランキング: 54