ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『They Are Billions』の感想やレビュー 蘇る引きこもりストラテジー

スポンサーリンク

 

www.youtube.com

 

年末に現れた魔物

f:id:arcadia11:20171225034906j:plain

もう有名ゲーム誌が一通り「Game of the Year」を発表した12月中旬。突如としてSteamに魔物が現れた。

本作『They Are Billions』はゾンビが蠢く世紀末社会で、植民地(コロニー)を形成し生き残るストラテジーゲームだ。

ゲームを開始すると、プレイヤーは木材、石材、食料といった資源を確保しつつ、定期的に訪れるゾンビたちの襲撃を防がねばならない。

 

私がまず驚いたことが、この「ゾンビ」と「ストラテジー」というジャンルの交配である。古くは『Plants vs Zombies』や『SPAZ』のようなカジュアルな作品から、『Atom Zombie Smasher』や『Project Zomboid』などインディーズからも続々と名作が生み出された、良い土壌だった。

そこで、この『They Are Billions』は「ゾンビ×ストラテジー」の、数年ぶりの待望の新作だった。

 

引きこもってるだけで勝てる楽しさ

最初にこう説明しておいて何だが、実は本作の「ゾンビ」要素というのは、そこまで重要なエッセンスではない。仮にゾンビがエイリアンだろうと、なんなら熊であろうと、そこまで面白さは変わらないだろう。

重要なことは、本作の「引きこもりストラテジー」としての完成度の高さだ。

 

f:id:arcadia11:20171225034946j:plain

2001年に発売されたストラテジーゲームに『Stronghold』という作品がある。本作は小粒ながら、陣地で敵を撃退しているだけでクリアできる「引きこもりストラテジー」として、多くのファンを獲得した名作だ。

何故「引きこもる」ことが評価されたかというと、当時のRTSでは敵は時間経過と共にNPC補正で資源をネズミ算式で増やすので、必要最小限の規模で攻めに転じる必要があったからだ。いくら自分が頭を捻って美しい街を作ろうとも、結局は敵城を攻め落とすための「陣地」に過ぎない。それは少し寂しいと感じるプレイヤーも多かったのだ。

最も、その名作も、続編を出すにつれ段々と評価が落ち、その名前も消えていったのだが、本作は正にそのエッセンスを絶妙に吸収しているのである。

 

f:id:arcadia11:20171225035017j:plain

まず、本作の操作性は『AOE』や『Stronghold』に近いクラシックなものだ。少し複雑だが、その分操作も多い。PCゲーならではの、硬派な戦略性を楽しめるだろう。

一方で、敵の陣地を攻める必要がない。というか攻められない。ゾンビは無数の軍勢を誇り、初期の弓装備では到底太刀打ちできない。まずは施設を拡張し、人口を増やし、城壁を築きつつ、領土を広げる必要がある。

そのために必要な防衛設備は揃っている。ライフル兵のような軍事ユニットに加え、彼らを収納するための櫓を立てたり、動けないが火力は抜群のバリスタを建設したり、古典的トラップである落とし穴を仕掛けたり、なんなら火炎放射器兵で”消毒”することも出来る。

そして定期的に襲い来るゾンビ。限られた人員と資源でどう奴らを捌くかは、プレイヤーの戦略に掛かっている。現状の資源を兵士に注いで安全をとるか、先んじて研究するハイリスクな選択肢もある。

このゲームは難しい。最初は何度も村人ごと蹂躙されるだろうが、幾度となくトライする中で徐々に敵をいなし、最終的に攻勢に転じるのは、まるで歴戦の将軍になったようなカタルシスがある。これぞ「引きこもりストラテジー」ならではの達成感だ。

 

 

 

まだEA中ではあるが、作品の完成度は十分だろう。年末にひっそり現れた名作。防衛戦というワードに聞き覚えのある人には、是非手にとって頂きたい。