ゲーマー日日新聞

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モンスターハンターワールドは、14年かけて遂に完成した【評価/レビュー】

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初代にして完成されながら、最新作にして未完成なシリーズ

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『モンスターハンター』は常に野心がありながら、技術的な制約あるいは経済的な制約によって、完成に至らないでいた。

2004年に発売された『モンスターハンター』は、最初オンライン向けのカプコン製のタイトルとして出発した。*1『PSO』にカプコンの強みであるアクション要素を取り入れたような本作は、粗削りながら評価も高く、『MHG』『MH2』と展開する中でボリュームを増やし、バランスと操作性、UIも少しずつ整えていった。

それでも一つ問題があった。当初からPS2の拡張機器「PlayStation BB Unit」を活用したオンラインでの複数プレイを前提としていたが、肝心のこのPSBBがコスト的にも技術的にもハードルが高く、そこまで浸透していなかった。

 

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↑Playstation BB Unit(15,000円税別)

 

ここまでなら、カプコンの「隠れた名作ACT」で終わったかもしれないが、PSPというハードの出会いで運命を変える。

そう、BBunitの導入が面倒なら、PSPで近づいて無線通信すれば良かったのだ。その方向で大人から中高生までの心を鷲掴みにしたのが『MHP』である。

こうして一挙に知名度を上げた本シリーズは、『MHP2』『MHP2G』と勢いを伸ばし、WiiやWiiUに出張することもあったが携帯機での開発がメインとなっていった。

それは同時に、携帯機というハードウェアとしての限界からモンスターや武器を水増ししただけの、進歩の少ない続編が続くことにもなった。

 

そんな紆余曲折、初代から約14年の時を経てリリースされたのが本作『モンスターハンターワールド』だ。(以下『MHW』)

据置機では経済的に限界があり、携帯機では技術的制約がつきまとった。だからこそファンは制約の少ない次世代機での、本気の『モンハン』を待ち続けた。

そして、待ち続けた甲斐はあった。『MHW』はその期待に応えるものだったと断言できる。モンスターハンターの、いや日本の3Dアクションにおける、一種の到達点なのだ。

 

アイディアの間欠泉と化したMHW

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さて、『MHW』はシリーズの中でどれほど進歩したのだろうか。

ボリュームに関しても、言わずもがな増えまくった。武器の種類は前作同様に14種類だが、できるアクションや繋げるコンボも圧倒的に増えた。バランスも見直され、概ね殆どの武器に活躍の余地がある点も素晴らしい。(ただし狩猟笛だけ妙に弱い)

モンスターに関しても同様だ。大型モンスターだけで18種類追加され、どれも抜群に戦っていて楽しいモンスターに仕上がっている。特に看板モンスターのアンジャナフやオドガロン、古龍たちは次世代機の表現力によって遥かに存在感が増し、生態系の頂点に君臨する「モンスター」として相応しい風格を手に入れている。

そして新フィールド。今作の舞台となる、古代樹、蟻塚、陸珊瑚、瘴気の谷、竜結晶(名前略)は全て新規のフィールドとして作られ、広さも従来の作品と比較にならない。ディティールも凄まじく、特に陸珊瑚や瘴気の谷は、従来のMHになかったファンタジーな雰囲気もあり息を呑むような美しさだ。そして言うまでもなく、フィールド間の移動でロードは挟まない(!)。

 

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圧倒的な体躯差。本作でのモンスターは間違いなく「絶対強者」なのだ。

 

圧巻である。追加要素の間欠泉とでも言うべきか。新しい要素、追加要素などあげればキリがない。

そもそも、『MH3』がそうであったように、次世代機で初めての開発といえば、普通は技術的な研究にリソースが割かれ小さくまとまるものだ。こうした「引っ越し」の手間を含めて尚これだけ用意できたのだから、カプコンの社員が毎日ぶっ倒れる寸前まで開発していたのではないかと勘ぐってしまう。

無論、量だけでなく質もシリーズ最高クラスだ。どこにも使いまわしはなく、一種類の武器、一頭のモンスターに至るまで、並大抵のビデオゲームでは到底作り得ない奥深さがある。

以上から、『モンスターハンター』シリーズの続編としての評価は、質・量共に歴代最高の作品だと断言したい。

 

よりフェアなゲームとして

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さてここからは、2018年に発売されるであろう、無数のゲームの一本として、少し離れた立場から評価しようと思う。

私は本作の評価を始めるにあたり、巷のレビューを何本か読ませて頂いた。すると、やはり本作をシリーズの一本として、「過去より良くなった」という意見が散見された。さすがに長大シリーズだけあり、『モンハン』はポケモンやスマブラのようば、若かりし記憶と結びついた特別なシリーズなのかもしない。

だが本作は『モンスターハンターワールド』。『MHW』であり『MH5』のようなナンバリングではない。つまり完全新規タイトルである。ンターと同様に、次世代機という新天地にて、新たな顧客をハントするために作られた、カプコンにとっての撃龍槍なのだ。

 

そもそも、国内はともかく国際的に『モンスターハンター』がウケなかった理由は、国際的にFPSやTPSのようながシューターが盛んな一方、Melee Action(剣戟による接近戦アクション)というジャンルは日本国内を中心に研究されたジャンル*2、という文化的な違いが大きいと個人的に予想している。*3

無論、文化が違うからというだけで、『モンスターハンター』が国際的にそこまで評価されなかった理由にはならない。優れたゲームは価値観をも変えることがある。より掘り下げると、国内ではもとよりMelee Actionが流行していたので不便でも奥深い『モンスターハンター』が評価されたが、国外ではMelee Action自体に慣れないプレイヤーが多い分『モンハン』の独特な癖がハードルを上げていたのだと思う。

いずれにせよ、『モンスターハンター』は一から作り直す必要があった。いくら土台が優秀でも14年使い続けたシステムには綻びも数多くあった。そして携帯機というハードの制限がなくなった今、ようやく『モンハン』を作り直す機会が訪れたのである。

 

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米国におけるMelee Actionの代表とも言える『God of War』

 

そうして産まれた『モンスターハンターワールド』は極めて「フェアなゲーム」と感じた。

まず無数の面倒な要素が撤廃された。当たり判定の大幅見直しに始まり、「強化を戻す」機能、武器のFFの低減、ピッケル等の採取アイテムの撤廃、アイテムポーチの分割、防具一部位でスキル発動可、ハンターノートで弱点その他確認、キャンプでの装備変更アイテム補給など。

これまで、MMO的な原点とPS2時代のアクション飽食時代故に「個性」として受け入れてきた面倒な要素がバッサリ減り、格段に遊びやすく純粋なハンターとモンスターとの「狩り」に特化したゲームになった。

 

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それにしても便利だ

 

驚くことは、これほど「近代化」しているにも関わらず、『モンハン』としてのコア部分は全く失われていないどころか、むしろ武器バランスの見直しや、強力なモンスターの存在により、一層強化されていることだ。

つまり、飛竜のブレスを間一髪で避け、渾身の一撃を叩き込み、尻尾を切り落とす、狩りの熾烈な駆け引き、アクションゲームとして至高の戦略性は一切衰えていない。

先程、「アイディアの間欠泉」として、シリーズでも質・量共に追加要素が最高クラスと言った点こそ、ここで重要になってくる。単に欠点を削り、海外向けに丸くしただけではなく、日本のコアなファンも満足できるだけの、奥深いハンティングアクションもしっかりと伸ばしてきた。

本作は贅肉だけ切り落としながらも、決して臓器を傷つけていない。あくまで個性豊かな武器で、屈強なモンスターたちを狩り、その素材で新たな装具を作る、という抜本的な面白さは何一つ揺らいでいない。仮にそれが初心者にとって「難しい」「とっつきにくい」と感じる部分であったとしても、それを超えて尚楽しませる、圧倒的なノウハウは健在だった。

だからこそ、改めてシリーズとしてでなく、一本のMelee Actionとして『MHW』を評価した際にも、あえて「最高のハンティングアクションゲーム」だと私は考えている。

 

次回作への課題

ただ、もとより完成度の高いゲームなだけに、デリケートな欠点が主に2つ残っている。

まず上位からやや理不尽な難易度上昇が目立つ点。

例えば、上位から多くのモンスターが、前作でいうシャガルマガラの地雷攻撃のような、一種の設置型攻撃(個人的にゾーニング攻撃と呼んでいる)を多用している。ゾーニング攻撃により、単純に動ける場所が狭くなりアクションの幅も狭まるので、やや過剰に感じた。*4

もう一つ気がかりなのが、上位から常にバゼルギウスが乱入するので大変面倒な点。本作では2種のモンスターが「縄張り争い」として潰し合うこともあるが、頻出するバゼルギウスに限ってそれがなく、こやし玉が簡単に作れないこともあり、ただ面倒なだけの要素に感じる。(最もバゼルギウス自体は戦うとかなり面白いモンスターなのだが)

また上記の欠点はいずれも上位以降から出て来ることから、恐らく出るであろう、『ワールドG』のような続編から再び高難度化しないか心配だ。結局また難しくなる→不便にするといった同じ轍を踏まないようにしたい。

 

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もう一つは、マッチングの問題とグローバル文化への対応が乏しい点。

本作から海外ユーザーが増えたことは喜ばしいのだが、明らかに特定の国籍のプレイヤー*5はマナーがひどい。前作で「ゆうた」など揶揄された低年齢層など遥かに可愛らしいもので、何度も味方をふっとばす、狩り中に採取しだすなどはまだしも、狩りに参加せず傍観するといった寄生プレイに走るプレイヤーが続出している。

更に、狩り中にPTを募集する「救難信号」という本作の新システムが便利すぎるため、集会所で募集しても人が集まらない。よってこうした迷惑プレイヤーを事前に省くことが出来ず、身内で固めるかソロで回すしかない。

加えて、拠点では集会エリア以外でも他人のクエストを受注できるが、それにより、他人の姿をロビーで見かけることがないのは寂しい(集会エリア以外では他人の姿が見えない)。拠点の全エリアで他人を視認できるようにすれば、オンラインゲームとして没入感も増すと思う。

全体的に、マッチングに関しては携帯機よりも不便なのは理解できない。高度ながら完成度も高い本作なだけに残念だ。元よりオンラインゲームとして出発した本作なのだから、次回からはプレイヤーの交流を円滑に行うマッチングシステムの改善に期待したい。

 

14年の旅路、その最果て

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かつてPS2で意欲的なタイトルとして産声を上げ、携帯機で支持を伸ばしていった『モンスターハンター』は、良くも悪くもガラパゴス的な性質があったことを否定できない。

それでも、私は以前から『モンスターハンター』は、Melee Actionというジャンルでの到達点だと考えていたし、国外でも評価されるべきだと考えていた。

こうした中、ハードの技術的制約が消え、新天地に向けて新たに作り直された『MHW』は、早くも2018年のGame of the Year候補と断言できるほどの紛れもない傑作だった。

 

まず前時代的な贅肉はバッサリと削り、現代ゲームの中でも高いユーザビリティを実現。それでも『モンハン』のコアとしてのハンティングアクションは決して削らず、むしろ新アクションや新モンスターで、圧倒的に狩りの奥深さは増した。

加えて、リアリティあるマップの探索、リアルな造形で生まれ変わったモンスターにより、生態系のある「生きた世界」を作り出すことで、新たな『モンスターハンター』の魅力を確立した。

「悪習を削り、良習を深め、新しきを生み出す」。考えうる限り、本作はゲームにとって最良の続編となった。

狩りの駆け引き、迫力の世界観、奥深いエンドコンテンツ、その全てが集約した傑作ハンティングアクションゲーム、『モンスターハンター』は14年かけて遂に完成したのだ。

 

 

 

*1:『ハンター大全』のインタビュー参照。

*2:『鬼武者』『デビルメイクライ』を始めとするカプコンの無数のタイトルを基点に、Team Ninjaの『NINJA GAIDEN』、プラチナ『ベヨネッタ』、フロム『アーマード・コア』なども。一方海外でもSCE『ゴッド・オブ・ウォー』、ワーナー『バットマン』など秀逸な3DMAもある。

*3:他にも国産ハードの普及率、特に携帯ハードの普及率の違い等も考えられる。一方、よく聞く「モッサリだから」という理由は、国内で無双系アクションが流行る一方、海外でリアル系FPSが流行しているという点を考えると妥当ではないし、「ルーチンで作業ゲー」という理由は、国外でもMMOやハクスラが楽しまれてる背景から適切な理由ではないと考えている。

*4:バゼルギウスを始めとして、ウラガンキン、各種古龍、ゼノシーヴァなど

*5:定型文が全部漢字の人