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Spec Ops: The Line批評 砂漠に消える感情と戦争とサスペンス

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 ここ10年でビデオゲームに求められる形も大きく変わった。据置機のスペックが跳ね上がると、それを活かすために演出を重視した作品が増えたためだ。欧米においてはこの変化が顕著で、FPSやTPSといったシューターではムービーと演出を多用したシネマライクな作品が増えた。

 『Spec Ops: The line』はドイツYager Developmentの開発したTPSだ。災害級の砂嵐により孤立したドバイに足止めされたアメリカ陸軍を救出するため主人公ら特殊部隊3人が向かうという作品。主人公は2人に命令を下し、上手くカバーポジションを維持しながら援護させるという、タクティカル要素の強さがウリだ。

 本作のメインテーマがジョセフ・コンラッド著『闇の奥』にあることは、作品の最重要人物の名前が同じく「コンラッド将軍」であることからも推察できる。誰も助けを呼んでないのに何故来たのか。誰も悪くないのに何故殺すのか。それが独善的に侵略する米軍への政治的アイロニーと、殺戮を娯楽として平然と受け入れるビデオゲームへの文化的アイロニーであることは言うまでもない。

 だが圧巻なのはありふれた「演出重視のAAA級ゲーム」という可能性を徹底追求した下地だ。「消えた大隊と狂ったドバイ」という目標により、常に主人公たちを悩ませ、また期待を裏切らせるという、サスペンスとしての完成度が極めて高い。単純なスクリプト前提のゲームでありながら、その演出とプロットの完成度の高さから「先が気になる」ために、やらされている感は全くない。

 また主人公らが自分たちの殺戮に常に苦しみ、消えた大隊もまた自己矛盾に陥る、戦場の狂気を描いたヒューマンドラマとしても完成度は高い。「こんなはずじゃない」常に主人公はこう呟くが、決して戦場という沼地からは抜け出そうとしない。そしてこの苦しみから目を背け、戦争の娯楽化に傾倒したビデオゲームの視野の狭さを露呈させる。

 アイロニーに満ちた作風も興味深いが、何より演出重視の作品においてサスペンスをたっぷり盛り込み、常に先が気になる展開を作り上げた点から後世に語り継ぐべき名作と言える『Spec Ops: The Line』。文字通りの砂上の楼閣となったドバイがあなたを待っている。

 

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