ゲーマー日日新聞

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【考察】『ゴッド・オブ・ウォー』のストーリーをネタバレ全開で解説 何故2人は旅に出たのか【GoW】

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メディアから絶賛された話題作『ゴッド・オブ・ウォー』。このゲームは前作までのシリーズと、北欧神話が上手く混ざった内容で、その2つを踏まえないと理解し辛い点が多いと思うので、そんな方に向けてネタバレ全開でストーリーを考察・解説させて頂きます。

 

 

これまでの『ゴッド・オブ・ウォー』とクレイトス

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まず本作『ゴッド・オブ・ウォー』はシリーズに触れた事がない方でも違和感を抱く程に、従来のシリーズから方向転換しています。

PS2で発売された初代『GoW』の主人公クレイトスはスパルタ人でしたが、自身があわや殺されようという瞬間にギリシア神話の軍神アレス(因みにアレスはローマ神話におけるマルスと同一視されています)と契約し、彼の下僕となる代わりに無双の力を手に入れます。

ですが、アレスの奸計によりクレイトスは自分の妻子を殺してしまい、彼はアレスに復讐します。それでも自分の罪悪感が消えることなく、狂乱のまま他のギリシアの神々まで殺め、父親であるゼウスにまで殺した…という所で、前作までのストーリーが終わります。

ここまでの『GoW』のストーリーは要するに「復讐劇」です。実は彼が殺した父親ゼウスもまた、力を恐れて自分の兄たちを殺し続けた父クロノスに復讐しており、親子二代に渡って復讐の連鎖が続いていたのです。

 

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クレイトスにとって「妻」を、アトレウスにとって「母」を失ったところから物語が始まる

 

で、ここからが本作のストーリーです。ギリシアの神々を抹殺した彼は北欧に移住し、新たに妻子を設けています。しかし妻は他界。彼女の遺言に従い遺灰を「最も高い山」から撒くために、クレイトスは自分の息子と共に旅に出ます。

今作がGoW初参加という方はわからないと思いますが、ゲーム開始時点でのクレイトスは、極めて消耗しています。彼はこれまでずっと復讐に追われ、ようやく手にした妻さえ亡くした、そんなどうしようもない0の状況からゲームが始まるのです。

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忌むべき過去と向き合う

 

父親と息子の成長

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息子と旅立った彼は、彼女の遺言に従いミズガルズの山頂を目指します。

しかし、山頂に辿り着いたところミーミル神に、世界で最も高い山とは、テュール神によって封印されたヨトゥンヘイムにあり、巨人のノミや黒のルーンや次元の狭間など、封印を突破するための手段を模索することとなります。

 

ではそもそも、何故ヨトゥンヘイムはここまで遠いのでしょうか。それはゲーム内でも説明されますが、主神オーディンがヨトゥンヘイムへの侵攻を企んでおり、巨人たちを守ろうとしたテュールが遠ざけていたからです。

(そもそも、ゲーム内で「巨人」と表記されていますが、彼らは一般的に神でも人間でもない「ヨトゥン」に分類される、超人的な種族であり巨人という名前だけど別に巨体である必要はありません。)

 

しかしそんな事情があろうと、クレイトスにとっては与り知らぬ所です。彼は神にも巨人にも関心がなく、もっと言えば自分にさえ関心がありません。彼は『GoW3』で父親を殺し自殺を図っています。破壊しかしなかった自分の人生に残ったものは虚無だけです。

その中で、彼の心境を変える存在がありました。息子のアトレウスです。彼は自分たちを狙う北欧の神であるマグニとモージとの戦いで、母親を侮辱されると激昂し我を忘れそうになります。

その都度、クレイトスは自分の過去がアトレウスと重なり、彼を激昂するのです。

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クレイトスは妻が亡くなる前、育児を全て彼女に任せていたような節があります。彼は血塗られた過去に対する自責から、息子を遠ざけるべきで、何も話すべきでないと思いつめていたのかもしれません。

しかし、自分やゼウスといった復讐鬼の血筋を引くアトレウスを変えさせられるのは、同じ過ちを知っているクレイトスだけだと彼自身が気づきます。同時に、自分も息子と向き合う勇気を手に入れ、自分の悍ましい過去を息子に伝えることで、逃げ続けた己の悪夢を受け入れていきます。

つまりこのゲームは、基本的に親子2人の成長物語と言えるのです。

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何故ティールの試練を受けたのか、何故バルドルを殺したのか

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2人が冒険を続けるうちに、ようやくヨトゥンヘイムへの道が拓かれます。ここでアトレウスは確信しました。

「決して自分だけでも、父親だけでもここまで来れなかった。大切なのは2人が協力すること。それは神々であっても変わらないはずだ。」と。

テュールが作ったヨトゥンヘイムへの道は、正しく試練の道だったのです。あのオーディンであっても単独では決して辿り着けないが、仲間と手を携えれば来れるように作っていました。

その事に気付いたアトレウスは、父親に「良い神様になろう」と言い、また鍛冶屋のドワーフ、ブロックとシンドリに仲直りしようと訴えます。

神々は殺し合うべきでなく、共に手を取るべきなのだと気付く。父親が辿り着けなかった答えをテュールから教わったのです。

 

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そこで、妨害するのが不死身のバルドルです。彼はとてつもない怒りに駆られ、執拗にクレイトス親子を狙っていました。

何故バルドルが狂ったのか。それは女神フレイヤの過ちでした。フレイヤは嫌々ながら結婚したオーディンとの間に産まれた自分の息子を失うことを恐れる余り、彼の意志に反して不死身の術をかけました。

しかし、それにより彼は五感を全て失い発狂してしまいます。彼もまた、クレイトスと同じく親に対する復讐心を抱き、フレイヤを殺そうとします。同時にフレイヤも自分の過ちに気付いているので、彼に殺されようとします。

ですが、頑なにクレイトスは力づくでもそれを止めます。フレイヤもバルドルも「これは自分たち家族の問題だから手を出すな」と言い、元々クレイトスも同じことをフレイヤに言いました。ですがクレイトスは暴走するバルドルを遂に殺してしまいます。

悲嘆に暮れるフレイヤ。何故「他人事」にも関わらずバルドルを殺してしまったのでしょうか。それは恐らくですが、バルドルが過去の自分と重なったからでしょう。バルドルがフレイヤを殺せば、その罪悪感から益々狂気に染まり、やがて自分と同じように神々を殺戮することになるかもしれないからだと思います。

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思うに、バルドルはこのゲームにおけるもう一人の「息子」であり主役でした。アトレウスと異なり彼は父親(オーディン)から何も教わらず、母親からも見放されたため、憎悪に支配されたまま破滅を迎えてしまう。

悲劇的ですが、これはアトレウスが辿ってもおかしくなかった神の在り方なのでしょう。

 

息子ロキとラグナロクの運命を「変える」

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バルドルを倒した親子はようやくヨトゥンヘイムに到着します。しかしそこで彼らが見つけた壁画には、想像を絶するものが描かれていました。

まず、戦斧リヴァイアサンを持った、クレイトスの妻でありアトレウスの母である女性が、巨人ラウフェイであったこと。

そして、親子2人が互いに協力した冒険の果てにここに辿り着くことを予言していたこと。つまり、ラウフェイには未来を見通す力があったということです。

最後に、息子に付けられる名前が本来は「ロキ」だったということがわかります。

これらの壁画の情報から、自分たちの旅は最初からラウフェイの想定通りに仕込まれていたことだと気付きます。では何故、この旅を彼女は計画したのでしょうか。

 

一つは、夫であるクレイトスの救済があるでしょう。彼は戦いに継ぐ戦いで疲弊し、父親殺しの罪悪感に囚われ、息子にも顔向け出来ない有様でした。彼に父親としての役割を自覚させ、同時に罪と向き合わせることが、この旅の目的だったと思います。

 

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もう一つ、これが恐らく重大なのですが、息子であるアトレウスの運命を変えさせたかったのではないでしょうか。

息子は本来「ロキ」という名前が付けられる予定でした。彼は北欧神話の中で特に有名な神だと思います。元々は悪戯好きの神で、オーディンらアースガルズの神々を困らせたり助けたりしていました。そしてヨルムンガンドの父親でもあります。(またミーミルはヨルムンガンドはロキを救うためにラグナロクの未来から過去に戻ってきたのではと推察しています)

ですが、北欧神話では厳しい冬が三度続いた後に、人間も巨人も神も全てが巻き込まれるラグナロクという終末戦争が始まるという伝承があります。そしてロキは本来、ラグナロクにおいて巨人を率いて神々を蹂躙する存在であり、正しくクレイトスと同じ運命にあるのです。

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(本来ロキは北欧神話に混乱をもたらすトリックスター)

 

ですが、神々を滅ぼしたクレイトスは絶望と罪悪感に囚われました。また、ラグナロクが起これば、この世界ごと北欧神話が崩壊します。

ラグナロクの未来を見通して、それを危惧した母ラフウェイが、破壊の神となるはずのロキの運命を変えたかったのではないでしょうか。

だからこそ、協力しなければ到達できないヨトゥンヘイムを最終目的地とし、仲違いしているドワーフらと接触させ、クレイトス親子と似た境遇にあるバルドルの接近さえもラフウェイは予期していたのかもしれません。

本来は神々を殺すはずだったロキを、神も巨人も協力させるような、「良い神様」にするために、ラフウェイはあえて苦難の道である旅をさせる遺言を残した、と私は考えています。

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ラグナロクによる滅びの運命を変えられるのか?

 

続編はどうなるか?

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ところが、ここでめでたしめでたしとなるわけでないことが、クリア後に家に帰るとわかります。ラグナロクの前兆である長い冬が訪れた後、雷神トールと思しき神が現れる、という夢をアトレウスが見るからです。(そしてアトレウスには母譲りの千里眼があります)

元々『GoW』は三部作の予定らしいので、続編かDLCは確定みたいですね。そして登場したトールですが、中盤で倒した神であるマグニとモージは彼の息子なので、敵討ちとして現れたのでしょうか。

恐らく、ここからアトレウスがロキとして成長し、またクレイトス親子のように肉親の愛憎に縛られた北欧神話による本格的な反撃が始まるものと思います。結局ラグナロクによる滅びの運命を変えられるのか、そこが焦点になりそうな気がします。

 

 

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