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ダークソウルで積みかけたら、逃げろ

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フロムソフトウェアの看板タイトルにして、国内外からの評価も高い『ダークソウル』(及び『デモンズソウル』『ブラッドボーン』)。ダークな世界を舞台としたARPGで、何より難しいゲームとして有名だ。

これらのゲームをある程度プレイしていると、ある戦略に気がつく。それは「逃げ」である。

本作のモンスターは痛い・硬い・早いの三点揃った強敵ばかりだ。ならば、戦わずして逃げれば良いのだ。

 

だが実際、これはゲーム的に正しい攻略方法なのだろうか。

少なくとも、厳つい甲冑を装備した騎士が、襲い来るグロテスクなモンスターに対して、映画『フォレスト・ガンプ』よろしくひたすら走って逃げ続けるのは相当に滑稽な姿だ。

が、既に『デモンズソウル』の時点で多様されたこの戦略が、シリーズ上未だ修正されていない点を鑑みるに、フロムはこの戦略を認めていると言って良いだろう。

これもまた、プレイヤーの取りうる戦略の一つなのだと。

 

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RTA中はランニングが基本ムーヴ。走れフォレスト走れ。

 

私もまた、「逃げる」ことが出来る本作を高く評価している。「逃げ」が許されるのは『ダークソウル』の大きな美点だ。

 

まず「逃げ」がもたらすゲーム的な面白さとして、常に困難な課題を与えるゲーム上でちゃんと逃げ道を用意し、プレイヤーに選択肢を設けている点を評価したい。

難易度調整がない本作において、「逃げ」はプレイヤーの心理的負担を緩和する救済的な攻略法だ。『ダークソウル』は血も涙もない難しいゲームでなく、常にオルタナティブを提示している。

過去に流行したインディーズの高難易度2Dプラットフォームと違う点として、本作は3Dアクション故に逃げる余裕が常にあるのだ。

 

また「逃げ」が常に最適解になると限らない。逃げ続ける事でフィールドを探索できず、貴重なアイテムやソウルを入手する機会を失うからだ。

同時にボス戦の時には霧が生まれ、プレイヤーはボスを倒すまで逃げ出すことが出来ない。ボスに挑むためには相応に自身を強化しなければならず、結局探索して強力なアイテムを手に入れた方が楽に攻略できる事に気づく。

これはアクションRPGならではのメリットであり、仮に純粋なアクションゲームならスルーが最適解となるだろう。このバランス故に、「逃げ」もまた選択肢の一つに過ぎない。

 

もう一つ大きな「逃げ」による面白さは、プレイヤーが地形を利用して戦える点だ。

プレイヤーが強力な敵をスルーする場合、そのまま逃げ切っても良いが、ある程度逃げて自分に有利な地点で戦うという選択肢もある。

例えば、『Diablo』でメイジがkiteするように、敵を狭い通路に誘導して範囲魔法で一掃するとか、高台に登って高所から射撃する等だ。

この地形を活かした戦いは本シリーズの大きな魅力だ。フロムが用意した悪意満載の敵の配置を、うまく乱して自分の有利な戦法を意識する。それは同時に、筋力武器や魔法など自分が育てたビルドに応じて変化するわけだ。

 

逆に、「逃げ」が出来ないゲームはどうだろう。

海外のゲームは比較的この傾向が強い。最近では操作性も似せた『God of War』がそうだったし、『Batman Arkham』シリーズもそうだ。

これらのゲームでは、戦闘が始まると周囲から隔絶され一種の「アリーナ」が形成される。敵を全滅させるまで先に進めない、という仕様だ。

この場合、全ての敵を倒さないと先に進めないため、まずゲームのテンポが悪い。加えて難易度が高い場合、雑魚敵ですら詰む可能性がある。

何より、先程述べたように地形を活かして戦えないのは惜しい。アリーナ化により戦闘領域が限られるので、一旦逃げて体制を立て直すとか、有利な地形を選ぶとか出来ず、延々と古い時代劇の殺陣をさせられるハメになる。

 

しかし「逃げ」にもデメリットはある。

例えば、DLCステージや複数周回したステージの『ダークソウル』は、あまりにも敵が強く硬すぎる割に、得られるものが少量のソウル程度で、「逃げ」以外の選択肢がなくなってしまう点。

周回プレイヤーにとってボス以外全てスルーするどころか、ボスすらルートで回避できるものは回避してしまうと、もはやアクションRPGというより、ランニングRPGになってしまう。

あえて全ての敵を倒すのは、大抵白霊を呼んでのCOOPや、何周もした上級者、あるいはアイテムドロップのマラソンでもなければ、割に合わない。

理想は初見プレイから「逃げ」が最適解の選択とならず、なおかつ何周も遊べるような難易度だ。凄いことに、『ダークソウル』は初代を除いた1週目は大抵この難易度に調整されている。

 

何にせよ、色々な優れたゲームデザインがある中、あえて戦わずして逃げることが選択肢にあり、かつそれを大々的に表に出さない『ダークソウル』はとてもクレバーで優れた作品だと思う。

今、数多くの作品が『ダークソウル』を模倣している。そんな後輩には、ダークファンタジーなガワだけでなく、こうした核心に存在するメカニクスを理解し、取り入れて欲しいものだ。(『The Surge』、君のことだよ)