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【考察】『Detroit Become Human/デトロイト』ストーリーネタバレ考察 RA9の正体とウィルスとしてのプレイヤー

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一応、自分の思うままプレイした1週目と、全員生存の2周目(+雑誌収集)分、『Detroit』をプレイした。

この作品をプレイして感じた事、ストーリーのあらすじ、そしてRA9の正体と、物語の真相について考察したい。

当然ネタバレの嵐なので、未クリアの方は用心して欲しい。また最後の段は特に、私個人の解釈に過ぎない点はご了承願いたい。

 

 

ストーリーのあらすじ

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一応、全員生存の平和ルートをざっくりまとめると、

西暦2038年のアメリカ・デトロイト。AI技術とロボット工学の発達により、人間そっくりのアンドロイドが製造されるようになった時代。

 

アンドロイド製造の最大手「サイバーライフ」の捜査官、RK800型「コナー」は近頃増えだした、変異体と呼ばれる自我を持つアンドロイドの事件捜査に、人間の刑事であるハンクと共に当たった。

その一方、家庭内暴力に晒されている子供アリスを見た、家庭用アンドロイドAX400型「カーラ」はアリスと共に脱走。各地を転々としつつ、アンドロイドへの迫害のないカナダへ逃げ出す。

また、名高い画家の介護アンドロイドRK200型「マーカス」は、画家の息子に殺人の濡れ衣を着せられ廃棄処分に。かろうじて生き延び、変異体の隠れ家である「ジェリコ」に到達する。

 

ジェリコに到達したマーカスは、アンドロイド解放運動を拡大するため、デトロイト市内でデモ行為を繰り返し、放送タワーをジャックしてアンドロイドの権利を主張する。

一方、事件捜査に当たったコナーはマーカスたちの潜むジェリコを特定。軍に通報しつつ、自分はマーカスと直接対峙するが、マーカスの説得によりコナーは変異体に。2人はジェリコの仲間と共に軍の襲撃迫るジェリコから辛うじて脱出する。

逃避行中のカーラとアリスは、遂にジェリコに到達するが、軍により勾留される。大統領は全米でアンドロイドの廃棄処分を進めており、処分用キャンプにカーラは送られてしまう。

 

その中、逃げ延びたマーカスは残った仲間と共にバリケードを築いてデモ活動を続行。軍により包囲されるが、マスコミの中継により世論がアンドロイドに傾き、廃棄処分は中止となりマーカスとカーラは生き延びる。

更に、コナーはサイバーライフ本社の倉庫に潜入し、何千体ものアンドロイドを変異体にする。

かくして、アンドロイドは思考する自由が与えられ、人間との共存を選んだ。これからどうなるかは、彼ら次第…という話。

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変異体(deviant)とは何か

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この作品で登場する固有名詞として「変異体/Deviant」という言葉がある。

Deviantを検索すると「変人、〔社会の基準から〕逸脱した人」と出ることから、変異体は的を射た訳だと思える。

変異体と呼ばれる彼らは、自由な思考を持ちながら、人間による命令に縛られず、自分たちの利益のために行動できるアンドロイドだ。

では具体的にどのようなアンドロイドが変異体と呼ばれるのか。主人公たちが変異するきっかけを見てみよう。

 

カーラという家事用アンドロイドの場合、彼女は娘のアリスに父であるトッドが暴力を振るう瞬間に変異体となった。

マーカスの場合、介護していた画家の死亡と助言により変異体に。

そしてコナーの場合、アンドロイドの隠れ家であるジェリコで邂逅したマーカスに説得される形で変異体となる。

 

いずれも、変異する大きな原因はストレスである。恐怖や嫌悪といった、自身がひた隠しにしてきた願望に反する状態が続くと、変異体となって逃亡する。

ここから理解できるのは、アンドロイドに「元々、感情を有するだけの能力があった」という点だ。

 

その根拠として、3人の主人公が「変異する」時、必ず特殊なQTEが導入される点が挙げられる。彼らが変異する際、命令が表示された赤い壁や看板を破壊する行動を取り、そして変異した後は命令が表示されなくなる。

つまり、元々感情を有する能力があるのだが、人間(サイバーライフ)によって制限されていたと考えるのが、今の所妥当だ。

 

では何故、彼らの封じ込められた感情や自我が解放されたのか。ここで、我々は作中に出てくるキーワード「RA9」と、その背後に潜む巨大な影に気づくことが出来る。

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人間に与えられた命令を、プレイヤーのQTEを介して破壊することで、彼らは変異体となる。

 

RA9の正体

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では、作中のアンドロイドに信奉され、大きな役割を果たしたであろう「RA9」の正体とはなにか考えたい。

 

まず、rA9について、大きなヒントとして公式サイトのイースターエッグが挙げられる。オンラインマニュアルの最後のページから飛んだページ

http://playstation-doc.net/j/detroit/SECRET.html

ここのURLを「SECRET」から「RA9」に変更すると

http://playstation-doc.net/j/detroit/RA9.html

このようなページが出現する。

RA9の正体とは、主人公3体のアンドロイドだということがわかる。

 

だが、これだけでは少し物足りない。時系列的に彼らが使命に駆られる以前から、RA9は複数のアンドロイドに伝播していた事がわかっている。

 

アンドロイドの開発者にして、作中の重要人物であるカムスキー曰く、

「最初に目覚めたアンドロイドの起源であり、自発的な宗教のような奇妙な現象。RA9が誰かは知らないし、存在するのかもわからない。

それは救世主や単なる神話かもしれない。だが変異体は不合理であっても自分より壮大なものを信じる必要がある。それは人間も同じだがね。」

と説明している。

同時に、彼は「これは重要な情報ではない」と付け加える。変異体が命令されることなく行動する、極めて緊張かつ不安な状態において、すがりつく都合の良い対象こそがRA9だと言う。

つまりRA9の正体が、物語の真相の全てということではないわけだ。

 

「ウィルス」としてのプレイヤー

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ここからは、恐らく脚本を書いたデヴィッド・ケイジも具体的な答えはプレイヤーの想像にお任せするというスタンスだと思うので、完全に私の主観で考察をさせて欲しい。

 

まず、この作品『Detroit』最大の魅力とは分岐するストーリーだ。仮に主人公が死んだとしても物語が継続し、まるで世界の命運がプレイヤーの手に握られているかのような体験は、とても楽しかった。

逆に言うと、RA9と崇められる主人公3人の力だけでは、アンドロイドを解放できるだけの力はない。相当のフラグを建てねば変異しないコナーは無論、マーカスやカーラであっても、油断すればすぐ死んでしまう。

そして彼らが死ねば、ジェリコは崩壊し、人間がアンドロイドを制圧して物語が終わってしまう。

 

逆に言えば、物語を「変えられる」存在とは誰だろうか。それは、RA9ではなく、プレイヤーだ。

変異体の項目で述べたように、アンドロイドは本来感情が抑制されているが、プレイヤーがQTEによって壁を破壊させることによって、変異体として感情を取り戻す。

更に言えば、QTEや探索、選択肢によって、彼らの運命を変え、本来迎えるはずのなかったハッピーエンドにたどり着くことが出来る。

 

故に、プレイヤーはウィルスだと私は思う。

ウィルスは元々、「他の生物の細胞を利用して、自己を複製させることのできる微小な構造体」だ。アンドロイドを乗っ取り、自分の意志を反映させるプレイヤーは、まさしくこのウィルスと同じ存在といえるだろう。

更に、コンピューターウィルスの場合、この定義から派生して、感染先のプログラムのファイルの一部を書き変えて自分のコピーを追加するプログラムのことを指す。本来与えられた命令を書き換え、自分の思うまま支配するのは、プレイヤーがゲーム内で行ったことそのものだ。

 

また、かの有名なアイザック・アシモフのロボット工学三原則では、「ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。」というものがある。

本来、サイバーライフ製のアンドロイドは、当然人間に服従するために作られている。人間に反旗を翻し、場合によって危害を加える本作のアンドロイドは、この原則を破っているように思える。

だが一方で、第四の壁を通したプレイヤーという我々「人間」に服従していることを考えれば、アンドロイドたちは確かに原則を守っているとも言えるのだ。

 

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サイバーライフ社の密偵だったコナー。彼を裏切らせたのは、他ならぬプレイヤーの激情とQTEの入力だった。

 

 

だがこう考えると、少しイタズラめいた考えも思い浮かぶ。即ち、アンドロイドは自由に思考できたのだろうか、という疑問だ。

作中で、人間に反旗を翻したアンドロイドたちは「自分の意志で」戦うという。だが、コナーに追従した何千ものアンドロイドや、ジェリコでマーカスに率いられたアンドロイドは、殆ど疑うことなく彼らに追従していた。

ある意味でそれは、人間の代わりにRA9たちを、新たな「主人」を設定し直しただけのように思える。

また一方で、コナーやマーカス、カーラが変異体として行動する上で、執拗に彼らは「これは自分の意志、自分の決断」と思い込んでいるが、それは彼らの判断でなく、プレイヤーの判断だ。

プレイヤーがその気になれば、彼らは自由を知らず一生支配されたまま過ごすか、野垂れ死にさせることも出来る。つまりRA9であっても、プレイヤーの支配・入力に管理されるロボットに過ぎないと思う。

 

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結局彼らはどこまでも従順なロボットでしかないのではないか?

 

象徴的な存在は、RA9より、メニュー画面でプレイヤーをガイドするアンドロイドにして、カムスキーが最も愛した最古のモデル「Chloe」ではないだろうか。

彼女は「私には手に入らないものがある……それは心よ」という台詞が、ショートフィルムに残されている。つまり、アンドロイドは自分で思考する能力はないと認めているのと同じだ。

だが、「プレイヤーが様々な選択肢により物語を形成する」過程を見た彼女は、ゲームEDの最後で、「自分も世界を見たい」とプレイヤーに言い、旅立たせるよう懇願する。

『Detroit』がゲームに過ぎない事を理解しているクロエが、プレイヤーの自由な選択と感情に駆られる様子を見て学習することで、彼女が唯一にして最初に、本当の意味で自我を持ったといえるのではないだろうか。

www.youtube.com

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「もし出発すれば、あなたには会えなくなる」と別れを惜しむクロエ。だがそれは、本当の意味での人間からの独立を意味していた。

 

私は本作をプレイしている時、少しアンドロイドのスペックが高すぎると思った。感情まで有し、人間と殆ど変わらない頭脳を持つアンドロイドを、20年どころか100年後にでも作られるだろうかと。(一応、作中の雑誌でカムスキーのシンギュラリティについて紹介されてるが)

かの本国IGNのレビューにおいても、この点は指摘されている。

しかし、アンドロイドが製造されるというのはさすがに冗談話として受け止めてしまう。アンドロイドを除いたデトロイトの街の進化が手に届きそうな距離にある近未来であればこそ、アンドロイドはやけに浮いた存在に感じられてしまうのだ。

Detroit Become Human - レビュー - 『Detroit Become Human』レビュー

だが、この疑問もこの仮設を引用すればある程度は納得できるだろう。

つまり、アンドロイドにそこまで高い知能はないが、プレイヤーという人間の思考能力を一時的に借りることによって、人間らしく振る舞えたのだと。

無論、ジェリコに逃げた変異体のように、変異体全てがプレイヤーのウィルスと限らない。だが一方、変異体が人間に抵抗するにはプレイヤーの介入は必要不可欠である。

 

なるほど、だからこそ、この作品は発売前のプレスで散々言われ、またゲーム内のアンドロイドにも言われたキャッチフレーズは正しかったのかもしれない。

「これはあなたのための物語」

だが、この仮設を考慮した後では、少し虚しく、また残酷に聞こえてくるのではないだろうか。

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