ゲーマー日日新聞

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【評価】『Graveyard Keeper』の感想レビュー 汚い牧場物語は面白い?

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うだるような暑さで目が覚める。

鞄に作業道具一式が揃っていることを確認し、外に出ると途方もない量の霧がかかっていた。5メートル先も見えず、湿気で呼吸ができない。

だが仕事だ。俺は「ポスト」を見に行くと、定刻通りにロバはいつもの荷物を落としていった。

それは全長1メートル60センチ前後、麻袋に入れられた、まだ微かに温もりが残った肉体だった。俺は墓守だ。どこの誰だかも知らない、この人間の魂を鎮めなければならない。

だが、俺の足が向かったのは処理場の一角だった。脂と血がこびり付いた台に彼を載せ、慣れた手付きで彼の大切なものを奪っていく。

まず皮を剥ぎ、肉を削ぎ、次は内蔵、心臓、腸を。

自分が何をしているかはわかっているとも。だが俺も生きなければならない。生きてこの狂った世界から脱出せねばならない。そのために、もう必要のないモノを頂くことがそんなに悪いことだろうか?

どうせ、地中に埋めてバクテリアにくれてやるぐらいなら、俺にも分け前をよこしたって良いだろう。こいつ一人埋める報酬は、一日に飲むエール代にもならないのだから。

 

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『Graveyard Keeper』はロシアに拠点を持つLazy Bear Studiosによって作られた、「中世墓場管理シミュレーター」である。

プレイヤーは、ややファンタジー色の強い中世ヨーロッパのどこか(非常に曖昧)で、墓守として生計を立てる。

だが、ただ死体を埋めるだけでは儲からない。墓場を改善するための技術を開発し、そのための素材をダンジョンやフィールドから集め、農業や漁業といった副業にも手を出すこともできる。

また、中世の価値観を反映したマッポー社会な価値観とブラックジョークも売りであり、死体を埋めるための墓がないなら川に流すとか、その死体から色々拝領してしまうとか、その拝領した肉を調理して村民に振る舞うとか、割と無茶苦茶できてしまう作品だ。

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さて、プロローグにも少し書いたがゲームの流れを改めて説明しよう。

まず、序盤は『Minecraft』の要領で、周囲の樹木を伐採したり、石材を掘り起こしたりして素材を手に入れ、そこからクラフトによって作業台や炉を作り、更に色々なものに加工する。

クラフトや採掘を行うと、経験値を手に入れる。この経験値を使って技術ツリーを開放し、更にクラフトや建築の幅を広げる事ができる。DIY精神の発揮だ。

こうした素材を持って墓場を改良したり、また街中にある壊れた施設を修繕することで、また行動の余地が増える。その間にも、村人の願いを聞いたり、ダンジョンの探索、農場の開発を行うことも可能だ。

こうした行程を繰り返す中で、資源や資金を貯め、クエストに使う、というのが基本的な『Graveyard Keeper』の流れである。

 

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少しずつ邸宅を拡張していこう

 

こうして技術を開発し、そこから様々な施設を運営、利益を増幅させるというゲームは、本作がよく比較される『牧場物語』(本作は日本で「汚い牧場物語」と評される程だ)や『Stardrew Valley』に近い。

確かに、特に操作性やUI部分においては、そのまんま『Stardrew Valley』である。かのファンであれば、少なくとも序盤に躓くことはないだろう。

だが実際にプレイしていくと、本作は『牧場物語』や『Stardrew Valley』とはまた異なった魅力も感じさせる。

 

墓守も慣れたら悪くない

『Graveyard Keeper』は墓守だ。現代でも中世でも、恐らくそこまで人気のない職業だと思うが、実際慣れると悪くないものである。

この作品はとにかく緩い。タイムリミットがあるわけでもないし、モンスターに喧嘩を売らない限り空腹で倒れることもない。

手近にある木材や石材から道具を作り、そこから得た経験値でスキルを伸ばす。どうにもソーシャルゲームに近いゆったりとした進行具合だ。

 

また、『牧場物語』や『Stardrew Valley』における醍醐味であるNPCとの関係も、本作では割と希薄だ。

放っても好感度が減るわけでもなし、ただひたすら、アイテムとの交換ないしクエストの達成でのみ好感度が増える。

墓守の職場が村から遠く離れているのも相まって、コミュ障な陰の者には、存外こちらの方が楽しいかも知れない。

住人は、よく喋る頭蓋骨、陰湿極まりない変人、仕事しない神父と、どいつもこいつも変な奴ばかり。ブラックジョークのスパイシーな会話も楽しめる。

 

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そして何と言っても、タイトル通り墓守としての営みはなかなかに楽しい。自前で畑を耕すでなく、死体を埋めて、少しずつその一部を借り受けて生活するのは、案外馴染んでしまう。

こう、共感できない人には全く共感できないだろうが、生物でなく死体相手に商売するというのは存外、心地よいのである。ある種の静謐と、ある種の孤独が混在し、夜中に一人でゲームをしていると妙な陶酔感を覚える。

少なくとも、自分が田舎に暮らして鍬を振る様子があまり想像できない、地下に生息してるほうが良いという陰の者にとって、こちらの方が感情移入しやすいだろう。」

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『私のお腹の皮膚の厚みの下にいる、軟骨と粘液質の肉のかたまり、肉の紐につながって肥っている小さいかたまりが、この水槽の人たちと似ているように思えてくるのよ』

-大江健三郎『死者の奢り』

 

ほぼアーリーアクセスという完成度

見てくれは『Stardrew Valley』をパクリながらも、ちゃんと中身は独自の胡散臭さと陰険さ、そして重商主義に対する重農主義とでも言うような、技術に依存したゲームプレイはなかなか興味深い。

だがどうだろう。正直今のままでは完成度が低すぎるのが実情だ。

 

兎も角、このゲームはメチャクチャ不便だ。世界観や雰囲気を大事にしていると言えば聞こえは良いが、UIが『Stardrew Valley』まんまではその言い訳も通用しない。最適化が十分とは言えないだろう。

まず一番不満点として多いのが、移動速度の遅さ。マジで遅い。

家から職場である墓場までは良いとしても、物資の売買やクエストの受注を行う街まで、自宅から徒歩約40秒の距離にあり、それを何度も往復する。意味がわからない。

馬やロバみたいな乗り物が解禁されるのかと思ったらそんな事もない。それどころか、ゲームが進むと行動範囲が広がり、更に移動の煩雑さは増すようになる。

 

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あとインベントリの狭さ。デフォルトで20枠だが、ここに道具類から食料、素材まで全部詰め込むので一瞬でパンパンに。オマケに移動ルート確保に資材を使うので、どう考えても足りない。

またチェストや作業台などを、どういう訳か自宅以外に設置できない。墓場を改良しようとしても自宅で素材を作って持ち込まなければならない。これがまた非常に不便。

そして、兎に角出てくる経験値も得られる金銭も何もかもしょっぱい。いくら墓守と言えどあんまりだ。序盤で辞めてしまう人も多いだろう。

 

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ただ発売後は、かなり慌てて修正しているようで、毎日パッチが配信されている。

意欲的で興味深い作風だっただけに、今後に期待したい作品。少なくとも今購入するのは、アーリーアクセス版に手を出すようなものだと考えて欲しい。(一応アルファテストやってるみたいだけどね)

とは言え、死体から臓物を抜き取るのは、なかなかに得難い高揚感があった。クックックッ・・・黒マテリア

 

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