ゲーマー日日新聞

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僕らはゲーム版オーディオコメンタリーを希求する

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私は一人のゲーマーとして、或いは本紙の記者として、一つ困ることがある。

それはゲームにおける様々なデザインの意図や工夫を知る機会が少ないことだ。下記に我々でも開発者の考えを知るための手段を記したが、それを差っ引いてもゲーム開発の工程は中々にブラックボックスである。

 

映画にはオーディオコメンタリーというものがある。

制作陣の偉い人、例えば監督とか脚本家とか演出家が、映画を見ながら「あの時はこんなハプニングがあったね」「ここはこんな工夫をしたんだよね」みたいに喋ってくれる副音声&副字幕のことである。

私はこれが大変気に入っており、楽しめた映画の2周目歴訪時には必ずこれをONにして楽しむし、そのために高いDVDを買うこともあるほどだ。

 

で、ゲームにはこうした「作品の中でクリエイターの考えを知る」機会が本当に少ない。それは映画と異なり、まず作品のボリュームが多すぎて説明が間に合わないとか、ゲームにピッタリ合った説明がないからだろう。

そこで、様々なゲームの「オーディオコメンタリー」を紹介し、今後開発者の預言を頂ける機会を僅かでも増えないか祈祷する次第である。

 

Valveのオーディオコメンタリー

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Valveのオーディオコメンタリーは専用のモードを作るぐらいには拘っていて、「解説モード」で遊ぶと、マップのそこらに立体で回転する吹き出しのオブジェクトが出現し、それに触れると開発者が技術、精神、芸術、戦略、UI、様々な観点で作品を作った工夫を教えてくれる。

その音声量たるや膨大で、『Half-Life 2』では全クリで10時間近くかかる内容にも関わらず、ほぼ全面に解説用のオブジェクトが設置されている。中には、かのゲイブ・ニューウェルのような雲の上の存在さえこの解説に参加している。

もしゲームデザイナーを目指していて、かつこれらの作品を遊んでいないのなら、この解説を聞くだけでも十分買う価値はあるだろう。むしろ義務教育にこれを読ませたっていい。これらをまとめるだけで、1冊分の解説本が書けそうな程の分量だが。

いずれにせよ、ゲームのオーディオコメンタリーにおいてValve程に完成されたものは他に存在しないだろう。

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「マルチプレイゲームで遊び続けられるマップはごく一部。だから一生遊び続けられるようなマップを少数だけ作ろうと考えた」

うんうん

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「初期の衝突判定システムでは、正確な衝突判定処理を行うのに、0.5秒、つまり500ミリ秒かかっていた。」

おー・・・お?

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「こうしたデメリットのために、ステンシルバッファで特定のポータルのピクセルを隔離させ、ポータル越しの視界をフレームバッファに繰り返しレンダリングするシステムに切り替えたんだ」

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双葉社

 

『MGS4』のi-podとヒデラジ

もう一つの例に上げた、『MGS4』の「ヒデラジ」(正式名称Guns of The HIDECHAN!Radio.)はValveのそれと比べるとかなりくだけたノリのオーディオコメンタリーだ。

本作にはアイテムとして「i-pod」(名称まんま)が登場し、これでMGSの歴代名BGMを聞きながらゲームをプレイするのだが、この中に登場する曲がこの「ヒデラジ」。

名称から察されるだろうが、かの小島秀夫監督が菊地由美らといつものノリで色々喋るという内容。ゲーム内のアイテムと組み合わせることで、実際にゲームを遊びながら開発事情も知れる、中々にスマートなアイディアだと思う。

この「ヒデラジ」に限らず小島秀夫監督はメディア露出も積極的にこなし、ゲーム制作におけるノウハウや情熱についてもファンに打ち明けることもあるクリエイターだ。彼ならではの粋な計らいだと思う。

www.youtube.comYoutubeに色々アップされてるぞ!

【その真実】メタルギアソリッド3【オーディオコメンタリー】1/4 - ニコニコ動画

そういえばこんなのもあったね

 

スマブラ拳!!

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言わずとしれた人気シリーズ『スマッシュブラザーズ』……のゲーム要素や、開発の様子を徹底的に伝えるのが、スマブラ拳!!なのである。

残念ながら『X』を最後に、新作でスマブラ拳!!が再開することはなかったが(SNSでは公開済み)、今でも初代スマブラ拳、つまり2001年のサイトがちゃんと保存されているのだから凄まじい。

https://www.nintendo.co.jp/n01/n64/software/nus_p_nalj/smash/

『X』におけるスマブラ拳は特に、Valveや小島監督が行ったように、開発の現場を逐一レポートする内容も充実しており、オーディオコメンタリーとしての価値も高い。

https://www.smashbros.com/wii/jp/list/index.html

それもこれも、桜井政博氏のゲームに対する途方もない情熱あってのこと。敬服せざるを得ない。

 

ゲーム開発の情報やノウハウはどこで拾えるのか?

では、オーディオコメンタリーのないゲームで、開発者の意見や体験を知るためにはどうすれば良いのだろうか?

 

最も簡単なのは、インタビュー記事を読むことだ。よく大型ゲーム雑誌、サイトではゲーム開発者がマーケティングついでに色々な工夫を語ってくれたりする。

だがこの手段には一つ致命的な欠点があり、発売前の宣伝で来る以上、ネタバレになりそうな内容には触れられない、つまりゲームの本質に関わる部分はディティールに関してはノータッチという点だ。

特に読み手の解釈に委ねるべき脚本については、作者はあまり語りたがらない。

(最近は発売後のインタビューも増えつつあるが)

 

あとは、国内外で定期的に開催されるGDC(Game Developers Conference)やCEDEC(Computer Entertainment Developers Conference)等の開発者向けカンファレンスに出席することだ。

こちらは発売後で奥深い話を伺うことが出来るが、なまじ業界関係者に話す前提の内容なので基本的に難しい話が多い。

自分の知識を深めようという意識の高い方なら、是非オススメしたい手段だ。(こちらも大手ゲーム誌が取材記事を書いてることがあるので探してみても良い)

 

また、海外のゲーム誌や、開発者自信のブログやSNSは情報の宝庫だ。国内のメディアに比べて海外は圧倒的に開発者のインタビューや意見等の記事は需要が高く充実している。

何よりオススメなのは、アートブックだ。『FF』シリーズのアルティマニアもそうだし、『モンスターハンター』のハンター大全はあくまでモンスターハンターの世界の中の書物という形で書かれており、芸が細かい。一冊数千円からと決して安くはないが、好きなゲームなら買う価値は十分ある。

最近ではSteamのようなダウンロード販売を中心に、DLCや初回購入特典でアートブックのデジタル版を付属するというケースも増えた。

『Doki Doki Literature Club!』は本体が無料だが、アートブックは支援という形で売り出されており、こちらで様々な開発事情や資料を窺い知ることが出来る。

 

最後に、色々話せない事情もあるだろうが、次の世代にノウハウを残すためにも、映画のオーディオコメンタリーやインタビューのような機会を、もっとゲームそのものにも搭載されればなと思う。

日本のゲームの情報をあさってたら、何故か海外のメディアによるインタビューばっかり出てきたりするし。