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【評価】『スパイダーマン』(PS4)の感想レビュー【Marvel's SPIDER-MAN】 既存のメディアミックスゲーを超える本格派の到来

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2018年、メディアミックスゲームは「本格派」に

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しばらく遊んで、これはアメコミゲーの常識を打ち破る作品だという確信を抱いた。

従来の『Batman: Arkham Asylum』(2009)『The Amazing Spider-Man』(2011)『Dead Pool』(2013)『Injustice: Gods Among Us』(2013)辺りの、「アメコミゲーと言えどちゃんと楽しめるぜ」という第二世代のアメコミゲーに対して、

今年2018年に発売された『Marvel's SPIDER-MAN』(以下『スパイダーマン』)は、こうした第二世代のメディアミックス作品に対して、「第三世代」とも言うべき、新たな境地に到達している。

最早、「ちゃんとしたゲーム」に並ぶ… どころではない。そこいらのアクションゲームを「上回った」とすら言って良い、それだけのクオリティなのだ。

これまで既存の作品の延長線上にあっただけのアメコミ作品が、そこにゲームプレイとしての進展を加える事で、完全にアメコミに関心がないゲーマーさえも巻き込む事に成功したのだ。

 

単なる移動でなく「競争」として楽しめる移動アクション

では、具体的に何を持って「本格派」とするのか。まず移動アクションから見ていこう。

林立するビル街にクモ糸を飛ばし、さながら源義経の八艘飛び伝説よろしくニューヨークの摩天楼を跳躍する……

『スパイダーマン』において、クモ糸を組み合わせた「スパイダームーヴ」は、絶対に外せない見せ場だ。

 

実は、意外にもこの「スパイダームーヴ」は、ここ20年間の作られたスパイダーマンゲームにおいて、またたく間に進化していた。詳しくはこの動画を見て欲しい。

www.youtube.com日本ではあまり売れなかったものの、Beenox開発の『The Amazing Spider-Man 2』の時点で、動画で見る限り本作とほとんど変わらない、見事なスパイダームーヴを実現していたのだ。

では本作の価値は薄いのか?いやいやとんでもない。Twitterで見る動画では決して伝わらない部分にこそ、本作の「スパイダームーヴ」の凄さがある。

 

それは、先程述べたように「本格派」、つまりゲームとして奥深い点だ。

これを具体的に説明するなら、単なる移動手段としてでなく、様々なコンボや技術を使って「加速」することで、まるでレースゲームのようにスピードを競って楽しめると言い換えてもいい。

例えば、ビルにクモ糸を埋め込んで移動する基本の動きに、ジャンプを組み合わせると一時的に加速する。更に建物の縁や街燈に直接ジャンプすれば、この間に一気にスピードがアップし、その加速を維持したままジャンプに移動する事も出来る。

単にクモ糸を垂らして移動しても爽快感はあるのだが、そこに地形を活かした巧みなアクションを挟む事で、比較にならないスピードで移動することが出来る。Twitterで見た動画に感動した?悪いがそれでもまだ「遅い」方なんだよ。多分。

ある意味では本格派パルクールアクション『Mirror's Edge』、またトリックを組み合わせる『Tony Hawk's Pro Skater』に近いゲームプレイへ進化したと言えるだろう。

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こうした進歩は、従来ただ移動するだけで飽きてしまったパルクールへの一つの解答と言える。

無論、ただスパイダーマンのゲームを遊びたいという層に向けて、カジュアルな選択肢は用意する。だが一方で、常に技術の向上を求めるゲーマーに向けて、更に「ワンランク上のゲームプレイ」も用意しているのだ。

 

シビアかつ戦略的ながらバランスの良い戦闘

もう一つ、本作で特筆すべきは戦闘だ。こちらも、やはり「本格派」として既存のゲームを超えてきたのである。

 

本作の戦闘は、基本的には自分を包囲する敵を一方的に殴り、反撃や遠距離攻撃に対してはカウンターを仕掛け、時折ガジェットやスキルで一層するといった、

『Batman:Arkham』シリーズでアメコミゲームの新時代を築いた、Rockstady Studiosのノウハウをそっくり引き継いでいる。

 

だが、本作はやはりここにも一癖二癖加えている。

まず、本作『スパイダーマン』において万能だったカウンターが存在せず、スキルの育ってない序盤では無敵時間も少ない。自動回復すら備わっていない。

更に、敵のチンピラは「多人数だけど戦うのは1人だけ」という、この手のチャンバラゲーにおける暗黙の了解を普通に無視して、平然と袋叩きにしてくる。

つまり、油断をすれば一瞬でゲームオーバーにされてしまう程、本作の戦闘は難易度が跳ね上がっているのだ。

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だが単に難しくなったわけでない。スパイダーマンはバットマン程のタフさと火力はないが、その分クモ糸の機動力とメカがある。

まず戦闘中でスパイダーマンは走ることもジャンプすることも可能なので、積極的にポジションを移して遮蔽物に隠れたり、はぐれた敵を処理することが出来る。

更に、クモ糸(ガジェット)は極めて強力であり、お馴染みウェブシューターで武装解除したり、ドローンで電撃を飛ばす、手榴弾でまとめて攻撃する等、弾数が限られているものの使い所次第で一気に苦境を打破することが出来るのだ。

そして何より、こうした「長所」を加え、自分の脆さという「短所」を組み合わせた、絶妙なバランスが素晴らしい。プレイヤーを常に試す姿勢からは、キャラゲー特有の容赦・接待を一切感じず、純粋に画面の前にいる「ゲーマー」を信じているように感じられる。

このように、従来攻撃にカウンターを入力するだけの戦闘だった類似作品に対し、本作では敵側は更に情け容赦無く、また味方側は、回避、移動、ガジェットで対抗する完成された戦闘は、現代におけるMelee-Combat(近接戦闘)ゲームにおいて、類のない戦略性を帯びている。

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Insomniac Gamesの驚異的な職人魂

こうした「移動」「戦闘」から見られる「本格派」の気風は、本作『スパイダーマン』全体を覆っている。

兎に角、本作には無駄がない。ここは冗長気味かなと感じる部分がまるでないのだ。使わない部分が一切ない、そうとも言えるだろう。

これは一見、遊び心がないというか、余裕のない作りに思えてくる。特に新規性が薄いと感じるために(実際には上述したように全くそんな事はないのだが)、物足りないと感じるかも知れない。

しかし、だからこそ実現した本格派の気風なのだと私は思う。そのケジメとして、移動や戦闘以外にもゲームの基礎的な部分は、全て完成されている。

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例えば、ミッションの合間に挟まるカットシーン。特段見張るべきストーリーはないのだが、若干弱気ながら善人として振る舞うピーター・パーカーや、個性豊かなヴィランたちの存在のおかげで、文句なしに原作ファンも堪能できるはずだ。

また、これまたお馴染みのパズルは、オマケと思えない程によく作られていて、多様なルールがありながら難易度も少し頭を使えば攻略できる絶妙な調整に仕上がっている。

正直、基本的に私が嫌いなコレクタブル要素だが、本作では語りきれなかった壮大なスパイダーマンの世界観を補完する点で、大変こだわった内容にもなっている。

ニューヨークを再現したオープンワールドは、クモ糸を使わず徒歩で観光しても十分楽しめる程に描きこまれているのは圧巻である。

 

だが更に興味深いのは、これらのパズル、そしてQTEといった要素をオプションで排除できる点だ。

これは、開発Insomniac Gamesの底知れない職人としての意地だ。常識で考えて自分たちが頑張って作ったゲームは全部遊んで欲しい。でなければ勿体無いと考える。それでも尚、彼らは「スキップする」というオプションを搭載した。

彼らが無駄を削り、純粋にゲームとして面白い形をもたらしたい、そういう強い意志があったことが、作品全体を通して感じるのである。

長年続けた『ラチェット&クランク』そして『Sunset Overdrive』、こうした作品で培ったノウハウを、見事にInsomniac Gamesは本作で発揮している。

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機動力×ユニークメカを活かした本格派なアクションといえばInsomniac。海外でACTを作らせて彼らの右に出る者はいないだろう。

 

改めて、凄いゲームだと思う。

私は正直、本作にそこまで期待していなかった。というのも、アメコミ出身のゲームは確かにここ10年でレベルは上がったものの、そのどれも感動する程に面白いとは思わなかったからだ。

だが本作は、ついにメディアミックスという認識の中で、既存のビデオゲームを超越した。

スパイダーマンというIPに依存せず、さりとてスパイダーマンでなければ作れない、自分たちの本格的なアクションゲームを作ってみせた。(個人的には『The Chronicles of Riddick』とか好きだけどね)

仮に、スパイダーマンに一切興味がない純粋な「ゲーマー」が遊んでも、(アクションが嫌いとかでもない限りは)きっと満足していただけるだろう名作である。

逆にカジュアルにスパイダーマンの世界観を楽しみたい、という方にとっては少々ハードすぎるかもしれない。

 

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