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【評価】『バトルフィールド5』の感想レビュー【BFV/Battlefield V】改革は成功か失敗か

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まず良い所から評価しよう。

 

素晴らしいと感じたのは、何と言ってもマップデザイン。BFシリーズは年々微妙なマップを作っていて、それが一番不満だったんだけど、今作のマップはかなり良くなったと思う。

とにかく立体的なマップが増えた。

ノルウェーの雪原を舞台とする「NARVIK」であれば、北部の高地から海岸までなだらかな坂になっていて、高地側が明らかに攻める時に有利。一方海岸に存在するドックはちょっとした砦になっていて、海岸からも攻める事は出来る。

オランダの首都が戦場となる「ROTTERDAM」なら、中央に架かった高架が非常に大きな戦略的優位があり、ここからAからEまでスナイパーの射程を抑えることが出来る他、北部の建物に直接アクセスが出来る。

こんな具合に、本作はベータで採用された2つ共、高低差を活かしたユニークなマップが増え、それによって多様な撃ち合いの場面が増えた。今までひたすら一本道で爆発物スパムをするか、或いはだだっ広い平原で狙撃合戦になるか、みたいなマップが多かったのでここは是非評価したい点。

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もう一つ本作の優れた点は、思った以上に第二次世界大戦という舞台を忠実に再現している点だ。

例の女性兵士騒動で個人的に相当不安だったのだが、いざゲームを始めてみると、やはり最新のグラフィックで再現されたVI号戦車(ティーガー戦車)はど迫力だし、最早芸術品のように美しいブレン軽機関銃を持って走り回ってるだけで、男の子としては嬉しくて鼻血が出そうになる。

何より圧巻なのは、サウンドもちろん描写力もスゴイのだが、ことサウンドに関して本作は現状あらゆるビデオゲームを凌駕していると思う。何種類あるのかという足音に、砲撃の爆音、戦車のエンジン音、ヘッドホンで遊んでいると本当に戦場にいる気分になってくる。

さすがに性的・人種的マイノリティが当然のように登場するのは、やっぱり何だかなぁと思う所はあるが、ディティールを見れば圧巻のこだわりで、軸は「大戦」にあるということを確認できただけでも、ベータは大きな収穫だった。

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シュトルムティーガー……いいよね……ちな口径380mm

 

で、次にこのゲームの抱えている問題なのだが、

まずベータ版であることを加味して、武器バランスからバグまで細かな問題は全て製品版で解決すると仮定して、それでも尚、ゲーム全体のデザインが非常に複雑で、それぞれ衝突している(コンフリクトが発生している)点を私は強く懸念している。

 

前提として、この『BFV』という作品はこれまでのシリーズ、特に『BF3』から7年殆ど変わらなかったゲームプレイに対して、大きな変更を目論んでいる点を抑えたい。

特にSNSでも反響の大きかった要素、スポットの廃止、携行弾薬の削減、蘇生システムの変更、ビークルのスポーン大幅減、陣地構築と弾薬回復スポットの追加等、いずれもゲームプレイに大きな変える、特にプレイヤー1人辺りのパワーを減らす仕様変更だ。

ではこうした仕様変更によって、『BFV』は何を目指しているのかといえば、恐らく「リアル性」の追求であり、「チームプレイ」の強化だ。

スポット廃止や索敵手段の減退で、プレイヤーは目視の索敵を余儀なくされたのは、『Red Orchestra』や『Insurgency』でみられる「リアル系FPS」の特徴であるし、

携行弾薬の削減やビークルの弱体化は、各クラス同士で助け合えという『Team Fortress 2』や『Rainbow Six Siege』で見られる「チームプレイFPS」の特徴なのだ。

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WW2でリアル系といえばRed Orchestra!……『2』より初代派です

 

ここまで述べただけなら、なるほど確かに、色々不便な仕様変更ではあるものの、「リアル系FPS」で得られるような戦場における死闘を演出させたいのだろうし、「チームプレイ系FPS」で皆まとまって行動する喜びを教えたいのだと考えれば、マンネリ気味だったシリーズのテコ入れとしても歓迎したい。

だが問題は、結局「リアル系FPS」が良いのか、「チームプレイ系FPS」が良いのか、迷った末に決断が出せておらず、更にこの上、前作までのBFシリーズで見られた「カジュアル系FPS」としての側面まで捨てきれていない点である。

いずれも普通に作れば相反する、それだけ個性の強いゲームデザインでありながら、全て取り込もうとしている欲張りな姿勢が、本作をして「不可解」と感じる点だ。

 

例えば、「携行弾薬が少ない(予備は弾倉一本だけ)」という本作の仕様は、弾薬をばらまける援護兵の価値を増すための「チームプレイ系」的な仕様だ。

これまでは戦闘職の突撃兵といえど弾倉四本は持っていて、普通は全弾倉使い切る前に死んでいたので、援護兵の「弾薬供給係」という役割の意義は薄かったのだ。

だが一方で、拠点に弾薬や救急箱が置かれている。これは『BF1942』ぶりの仕様で、拠点毎の価値を高めて戦略的に攻めさせる「リアル系FPS的な仕様」と考えれば、良い仕様だと思う。

だが、前者の「携行弾薬が少ない」という仕様に対し、「拠点で弾薬を補給できる」という仕様もあるせいで、結局味方の援護兵に頼るより自分で弾薬を取りに行った方が早いということになる。

そうなると、携行弾薬が少ないのは単なるストレスに過ぎない。これではアベコベだ。

本当に「チームプレイ系」として遊ばせたいなら、弾薬の入手手段は極力援護兵の弾薬箱に限定すべきだ。多少不便であるが、必然的に味方は連携し、クラスのバランスも考え出す。だが一方、そうしきれない曖昧さが、ゲームデザインにヒビを作っている。

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こうした補給ポイントがマップ各所に存在する

 

これだけではない。例えば、蘇生は分隊ないなら誰でも可能だが、一方で非常にリスクある行為となった。今までは一人衛生兵がいるだけでゾンビの如く小隊が復活したので、「リアル系」としては良い変更だ。

だが、蘇生自体がリスキーなのに、何らかで即死すると蘇生できなくなったり、死んだの猶予が妙に短かったりして、あまりにも蘇生の使い勝手が悪い。分隊員なら誰でも蘇生できる仕様なのは良いが、分隊は前作より1人減って4人編成に変えたのはどういうことだ。

蘇生はBFの「チームプレイ系」として非常に重要な要素なのに、それが出来ないなら疎らに単独行動してキルを稼ごうと考えるのは当然だ。

これだけ蘇生(注射針)が弱体化する一方、何故か武器(SMG)は従来通り普通に強いのはよくわからない。確かに衛生兵は強すぎたが、チームプレイを重視するタイトルなのに、弱体化すべきは武器であってガジェットではなかろう。それなら『COD』のように撃ち合えば良い。

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ここまで「リアル性」と「チームプレイ性」のコンフリクトを説明してきたが、本作は結局「カジュアル系」としての側面も捨てきれていない点が良くない。

例えば、本作は従来以上に死にやすく、拠点確保やビークル破壊のために身命を賭しても動くべき場面は多い。これは「リアル系」として、実際の兵士になった気分になれるし、「チームプレイ系」としても味方の役に立てたと実感できる。

だが、その割にスコアボードにデカデカと「Kill」と「Death」が並び、あまつさえ敵に倒された時に「お前はコイツに◯◯回殺されたぞ」と右下に表示するのは、一体どういうことだ?

これは『BF4』からずっと不思議だったのだが、『BF』はそもそも大局的な戦略と連携を問うゲームであって、何回キルする/される、というのは全く無関係だろう。だから戦闘と無関係にポイントも入手できるのだし。

BFはチームゲームだ。いい加減、『OVERWATCH』がそうしたように、安易にキルやデスを求める「カジュアル系FPS」みたいな仕様は廃止したらどうか。爆撃機に乗ったプレイヤーに3回殺されたと表示されても、そりゃそうなるよとしか言い様がない。

こうした点に限らず、この時代はまだ貴重だったARやSMGが何故か『BF4』時代の「ACE 23」みたいな精度と火力を持ってたり、「カジュアルFPS」として親しみやすさを捨てきれない結果、「リアル系」に向いたゲーム性と衝突しており、どう楽しめば良いのかわからなくなっている。

 

このように、『BFV』はタコ足配線のように「リアル系」「チームプレイ系」「カジュアル系」としてのゲームデザインの方向性が絡み合い、結局どう遊んで欲しいのかわからなくなっている。

これはハッキリ言って愚策だ。

リアル系なら『PUBG』『Escape from Trakov』、チームプレイ系なら『OVERWATCH』『Siege』、カジュアル系なら『COD』やバトロワタイトルが存在する等、現代では各ジャンルで既に名作が確立され、遊ばれている。

その結果、色々なジャンルを混ぜたバランスにしたいのだろうが、それこそ無茶な話。ジャンル同士は水と油のようなもので、混ざりあうことはない。結果、どう遊んで欲しいのかわからず、遊んでいて非常にぎこちなく感じてしまう。

『Team Fortress 2』を作ったValveは、元々スポーツ系とチームプレイ系の良い所取りだった『TFC』からスポーツ系をほぼ削るため、作品を一から作り直した。そして他の要素に関しても、不要な部分をバッサリと切り落とし、何年も遊ばれるFPSを完成させた。

競技シューターが群雄割拠の現代だからこそ、『Battlefield V』は潔く独自の道を示さなければならない。ごく当然のことだが、マルチプレイのゲームは必ずプレイヤー「こう遊んでください」という筋を理解させなければならないからだ。

とは言え、私は『BF』シリーズは1942からずっとファンだし、まぁ何より何年も待ち続けた第二次世界大戦のBFだ。製品版に期待したい。

 

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