ゲーマー日日新聞

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2018年のゲーム業界と弊紙を振り返る &新年の挨拶

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新年明けましておめでとうございます。

今年もエメラルド奪い合ったり、鍵っぽい剣と夢の国を冒険したり、絡繰で空を飛んだりしながら、楽しく過ごしましょうね。

というわけで、少し遅い気もするが2018年のゲーム業界と弊紙を振り返ろうと思う。

 

2018年 多様化・多角化が進むゲーム業界

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まず今年はとにかくソニーが強かった。「ソニーの年」と言っても過言ではないだろう。

MSの『Forza Horizon 4』や任天堂の『スマブラSP』もすごかったが、ソニーは『モンスターハンターワールド』に始まり、『God of War』『Maervel Spider-Man』と、批評的*1にも市場的にも、PS4というハードが一年中強かった。去年、Switchにゼルダとマリオまで引っさげた任天堂が業界を席巻した2017年とは対照的だ。

個人的にゲーム企業の優劣を競う宗教戦争には興味がないが、どうあれ巨大ゲーム企業が鍔迫り合いをしてることは好ましい。大体10年前までのコンシューマ市場には、ガチンコで殴る体力すらないのが現状だった。彼らが殴り合うほど俺たち草むらは潤うのだから、もっとやれ。

 

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またソニーが強かったのは王道のAAA級タイトルだけではない。『Déraciné』『ASTRO Bot Rescue Mission』『Firewall Zero Hour』等、PSVRにおいても革新的なVRゲームを連発している。

下馬評ではスペック等から他VRプラットフォームとの競争で生き残れるか不安視されたが、PSVRはファーストパーティのアドバンテージをフルに活かしてソフトパワーで攻めた。PS MoveやPS vita(あとMSのKinectや任天堂のWiiUとか)でやらかした、「クローズドな割にファーストがショボい」反省を活かしてきたと言えるだろう。興味深いことに、実はこれNintendo Switchが成功を収めた秘訣でもある。

 

しかし、そうしたマンモスとゴーレムの殴り合いから少し目を話すと、今度はドラゴンとかクラーケンが大暴れしてるのがゲーム界隈の怖いところ。

今年が流行の元年だという人と、20年前がそうだという人で分裂するesportsだが、世界的に見ても勢いの伸び方は圧倒的。特にバトロワのいいところを詰め込んだような『Fortnite』の快進撃は凄まじく、日本でもTOKIOがCM出てたよ。一体なんなんだ。

 

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かたや、インディーゲームもとんでもない。インディーといえば、ただ意欲的なだけの実験作や、タンスの底から掘り出したような懐かしのゲームという偏見はすでに拭われ、紛れもなく一つのゲーム市場・ゲームシーンとして確立している。

『Return of the Obra Dinn』『Celeste』は真新しさとクオリティを両立した紛れもない名作だし、モバイルからは『Florence』『My Child Lebensborn』がユニークな目線から攻め立て、かたやじっくりと煮詰めた『Rim World』『Kenshi』のようなアーリーアクセスタイトルがついに完成を迎える等、一言にインディーといっても多角化がしっかり進んでるのが、音楽や文学と同じくインディペンデントな創作の在り方が広く受け入れられたのだなぁと感慨深い。

 

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ただそんな名作揃いの2018年の中で、あえて一本推すなら、GOTY記事にも記載したように『Red Dead Redemption 2』が最高だった。自分も二度批評を書いたその魅力は、シムとしての古典的なアプローチを再発見しつつ、その延長線上で個人的な人生を描き通した執念にある。

これまで幾度となく「ゲームは映画、小説を超えた」と言われてきたが、今回ばかりはこの陳腐な言い回しも引用したくなる程に感服した。ゲーム以前のメディアで表現されてきた、人間の根幹的な精神、人格、体験それら全ての変化や成長を含めた人生を、完璧に再現したアメリカ南部の空想に詰め込んで、インタラクティブな体験に接続させたのだから。

 

今回に限らず、実に”人間的な”ゲームが増えた。

『God of War』もそうだ。暴力に荒れ狂う神としての本質を、息子に対する使命感から押し殺すクレイトスを、ベタな説明や台詞を用いずゲームプレイの中に再現した見事さたるや。かたや『Celeste』は精神的なハンディを背負う人間の心境を、ごくシビアな2Dプラットフォームに例えてみせた。

いずれにしても、ビデオゲームにおけるインタラクティブなゲームプレイを、人類史上あらゆるエンタメで最も普遍的なテーマである、人間の在り方に重ね合わせた。こうした永久の課題に正面から全力でぶつかる作品が増えたことは、個人的に好ましい。

 

興味深いのは、これらは決して特殊なルールやトリックを用いていない点だ。いずれも、ゲームプレイのシステムとしてはごくありふれている。だが既存的な手法に、新規性や発明を求めるだけで掘り下げられなかった可能性を見出し、新鮮な体験としてプレイヤーの脳裏に結びついた。

つまるところ、ゲームの進歩の可能性がまた増えたということになる。革新的なゲームとは、新しいルールやシステムを採用するだけなのか、むしろ既存のアプローチになにかを加えたり改変したり、ただ徹底的に突き詰めたりすることでも、本当に優れたゲームを生み出せるのではないかと。これはインディーゲームのトレンドとも被ってくる。一種のゲーム・ルネサンスと呼べるかもしれないが、掘り下げるのはまた次回に。

 

と、こんな具合で駆け足気味に2018年を俯瞰してみたが、ここ数年の中でも2018年で顕著だったのは、ビデオゲームの多様化が進んだことだと思う。

ゲーム市場一つとっても、大企業同士が大量に放出するAAA級タイトルに加えて、esports、インディーゲーム、VRがそれぞれ独自の市場を抱えている。またビデオゲームのシーンを鑑みても、ただ新しいシステムを模索するだけでなく、既存のシステムの延長線上から近現代文学的なアプローチを試行する。

企業ブランド、プラットフォーム、アプローチ、マーケット、トレンド、あらゆる分野で進む多様化・多角化は、これまで市場や人口の規模でのみ論じられてきた「ビデオゲーム文化の成熟」の、最も重要な点だと筆者は考える。それも単に複数の企業が競争するのでなく、規格や目標の違いによって多角化してるのは実に興味深い。映像、芸術、文学、こうした営みにあってゲームに足りないものは、正しくこうした多様性を受け入れる寛容さだと感じていたからだ。

(念のために追記しておくと、何でも好意的に褒めちぎるのが多様性ではない。あくまで方向性や形式の問題であって、その深度は別問題。つまりダメなゲームはどうやってもダメ。)

 

ゲーマー日日新聞の2018年

2018年は、弊紙ゲーマー日日新聞にとって最も手応えを感じられた年だと思う。開設して4年間、少しずつ蓄積した経験や知識をようやく結果に反映させられたというか。

手前味噌だが、この進歩は自分で書いていて一番感じることでもある。これまで、書いた記事の半分以上は自分でも満足できない品質だったけど、今年は8割以上は満足できているので、まぁコツを掴んできた感じ。

一番の進歩は、ちゃんと読み手の目線を意識して記事を書けるようになったこと。わざわざ読んでくれた方に最適な記事を提供すること。いや、すごく当たり前なことなんだけど、なかなか難しいのよねこれ。けどこの辺を形にできるようになると、しっかりインプレッションに反映されたので、やっぱ必要なことなのだろう。

 

その上で自分だけの強みはなにか考えたら「素直さ」だと思う。ウソつけ!と思った方もいるかもしれんが、多分自分は数あるゲームオタクの中でも相当に素直。

素直というのは、要はゲームが持ってる正しさを受け入れる度量だと思う。ただし、何でもかんでもすごいすごいと絶賛することじゃない。正しさがないものはない。ただ自分がどこまでフラットに受け止められるかという点で、自分はかなり素直だし、意識高いサブカル系の人との違い。

根本的にまず自分は根っからのゲーマーでなく、後天的なゲーマーだったので、幼少期で形成された一種の信仰めいた懐古がない。そのうえで、あらゆるハードや企業が送る、大作、インディー、esports、ソシャゲにエロゲまで、面白いなら全部遊ぼうと思ってるし射程内に抑えてる、というライター(この言い方すっげぇ嫌い)はあんまいないと思う。

もちろん、根拠を並べ、論理的に組み立てても、その大前提にあるのは当たり前だけど自分の意志。テキストが必ず人工的であるならば、それが主観的にであるのは必然であり、自分はそこに躊躇しない。だからこそ自分はもっと素直でいたい。その方が面白いテキストになると思うから。

 

そんなこんなで、個人ゲームメディアの中では攻略・ニュース系を除いて恐らく総合的に最も読まれてる弊紙だけど、最近SNSのシェア数が凄くて、SEOに依存しない流入の多角化が進んだのが嬉しい。

特に秋頃からnoteで始めた有料記事は、本当に多くの方にご購読いただけてめちゃくちゃ助かってる。結局どこのメディアも数字を追えばトレンド一直線で薄い記事を量産するのが最適解になってしまう一方、有料記事はちゃんと必要としてる方に高品質なテキストを提供できて「これが自分のやりたかったことだな」と思う。もっと本格化したいし、月額購読モデルの移行も検討したい。

(因みに、有料記事の売上のおかげでゲームを買うハードルが凄く減ったので、購読者の型には本当にゲーマー日日新聞というメディアを支えてもらってる。その分、こっちでは書けない内容まで掘り下げてるので、よしなに。)

こんな具合に嬉しいニュースが多いんだけど、それは特に2018年は年中通して本当に名作が多かったおかげでモチベーションが続いただと思う。さっきも説明した業界の多様化もそうだし、何より『RDR2』とか、ついにゲームでこういう事を表現できる時代になったんだと感慨深かった。

 

ただウチが読まれると言っても、実数はそんなに多くなくて、ゲームメディア全体的に勢いがなさすぎて相対的に読まれてるだけだと思う。

単純に記事が面白くないとか、情報が遅いとか、その結果任天堂を始めとした企業が「直接」情報を伝えるようになってるとか、色々理由はあるにせよ、とにかく完全に時代に取り残されてるのは否定できない。

その結果、ゲームメディアは淘汰されていってるんだけど……。この辺の問題はまた別に記事で書きたい。

 

まぁ何にしても、個人的には2018年はゲームを遊ぶのも書くのも面白い一年で、至れり尽くせりな一年だった。一方で、まだまだ書きたいネタ、改善する余地は去年以上に見つかる始末で、2019年も時間のある限り続けていきたいところ。

(ただ今年から環境が変わると思うので保証できないが)

以下、評判の良かった記事の回想

 

arcadia11.hatenablog.com

Steamというプラットフォームについて、海賊版への対策という起源から彼らが実行している政策まで5つ並べて説明した記事。

正直なんでここまでバズったか自分でもよくわかってない記事。主にPCゲームをプレイしない層に読んでもらえたみたいで、そこは嬉しかった。

日本はメディアを問わず出版業が大変入り組んでいるので、Steamのようなプラットフォームは正に隣の芝生だよなぁ。

 

arcadia11.hatenablog.com

企業型ゲーム攻略サイトの悪質な運営と記事を糾弾した記事。

いやほんと酷い。企業型ゲーム攻略サイトはここでも列挙したが極めて悪質かつ、ゲームメディアの洛陽を象徴するようなサイトだと思う。WELQの時代からゲームだけは何も変わってないっていう。

でもこの記事を書いてから、明らかにこうしたサイトへの批判もSNS上で見られるようになったし、それに対応する形で「多少は」マシになったり、ならなかったりしてるので、自分でも書いてよかったなと満足している。

 

arcadia11.hatenablog.com

自分がSteamで一押しのゲームを50本厳選して全部ガッツリレビューする記事。2018年のはてなブックマークランキングのアニメ・ゲーム部門で2位取ったらしいよ。(現在はURL移行済み)

正直かなり自分の趣味に寄せた記事なのでそんな読まれると思ってなかったが、ゲーマー日日新聞で一番読まれる記事に。素直に嬉しい。

「ゲームで泣いてもいいんだよ」に10本の枠を割いてる所が、実にゲーマー日日新聞なのだと自分でも苦笑いしてしまう。

 

arcadia11.hatenablog.com

note.mu

LJLにおけるPGMの制裁及び問題を取り上げた記事。上は2月時点(制裁の後日)で、下が5月時点(被害者のDara選手が引退を発表した後日)のもの。

当たり前だけど、看過しがたい事件。この件におけるPGMの問題、及びLJLの処罰は明らかに選手とコミュニティに対して不誠実極まるものであり、絶対に許してはならない問題だった。自身も現地会場まで何度も応援に行ったファンとして、筆舌に尽くしがたい失望を感じた。

一応断っておくと、自分自身ずっとLJLを応援してきた以上ファンだし、滞りない運営を期待してる。だけどそれが、看過し難い不正の上に成立しているなら、遅かれ早かれ確実に土台から崩れるわけで、そうなれば元も子もない。

あと取材に対しても、一部の選手は事実を打ち明けてくれる良識を持った方もいた点は書いておく。

 

結果的に、2019年からLJLは運営の方針を大きく転換。経済的に危ない2部制自体を切り、経済力のないチームは実力を問わずリーグから外す、その上でコンプラを徹底させたようだし、各チームもこれまで以上にコンプラに配慮してくれてるようで。

GW全返上して韓国最大手esportsコミュニティのINVENと連絡取るとか、自分なりにやれることをしたつもりだけど、今の所その成果はちゃんと出てるのかなと思う。

 

arcadia11.hatenablog.com

arcadia11.hatenablog.com

「ゲームと政治」というテーマで、市場や評価という目線で追求した前編と、古今東西の作品個別の批評的目線で描いた後編の連載記事。

先ほど述べた通り、この頃からビデオゲームの多様化・多角化はヒシヒシと感じていて、そうした議論の上で避けれない政治的影響、政治的メッセージについて考察した。

こうした、コンテクストを通してビデオゲームを批評する記事も今後書いていきたい。(が、手間の割に需要がない)

 

arcadia11.hatenablog.com

note.mu

今年は色々な記事をバズらせることが出来たけど、やっぱりゲーム批評を読んで貰えるのが一番嬉しいというのが、率直な気持ち。

元々、消滅したあるPCゲームサイトの批評への渇望が、このメディアを運営する動機になっていたぐらいだし、自分が一番書きたいのは何だかんだゲームの批評だと思う。

なるべく新しい視点を、なるべくわかりやすく、ビデオゲームという作品をテキストの上で再構築する試みは本当に刺激的でまだ同時に困難だ。だからこそまるで飽きない。今後はもっと批評を書きたい。

 

では今年もよろしくおねがいします!!!!!!!!!!!

*1:いずれもGOTY候補