ゲーマー日日新聞

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【評価/感想/レビュー】『キングダムハーツ3』を13年待った甲斐はあったのか?【KH3】

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『キングダムハーツ』が13年も待望された理由

長かった。あまりにも長かった。

 

2002年、『キングダムハーツ』発売。

 

2005年、『キングダムハーツⅡ』発売。

 

それから、13年待ってようやく2019年1月に発売されたのが今回紹介する『キングダム ハーツIII』(以下『KH3』)だ。

 

13年。

当時小学生だった子供が、中学生になり、高校生になり、大学生に合格して一人暮らしにも慣れてきた頃。さすがに待ちくたびれたファンも多いだろう。

(一応、その間に外伝は何本も出たのだが、ハードは携帯機、内容も本筋とは良くも悪くもかなり別物だった。)

 

この長い期間で忘れてしまったり、そもそも知らない若い読者に向けて説明すると、『キングダムハーツ』シリーズとはスクウェア・エニックスが発売したアクションRPGシリーズだ。

国民的RPGの『ファイナルファンタジー』を作るスクエニが、世界的エンターテインメントである『Disney』とコラボし、完全新作のゲームを作るという、当時から現代においても前代未聞のプロジェクトだった。

本シリーズの魅力は何よりも『Disney』というコンテンツの圧倒的なポテンシャル。『Disney』は80年以上前からアニメ、映画等を通して築き上げたその量に加え、質に関しても徹底した研磨と検査で世界最高水準で磨き上げられた正しく至極のコンテンツ。

私自身は熱心なディスニーファンではないが、とにかく、かわいい、アツい、かっこいい、美しい、何よりも「楽しい」。コンテンツの根源的な魅力、ポジティブな感情を惹起させる何か、それを世界で最も成功させたのが『Disney』といえる。

 

そして、その『Disney』を「遊ぶ」ことができれば、無論楽しいはず。

そんな当たり前の事実を、しかし畏れ多くも傲岸不遜な願いを、実現しようとした男こそスクエニの野村哲也であり、スクエア・エニックスだった。

ディズニー社は『Disney』の世界観が野村氏のオリジナリティと融合させたこの世界観に難色を示したが、それでも双方の努力により2002年に『キングダムハーツ』は完成。これまた国民的なアーティストだった宇多田ヒカルのテーマソングも相まって、日本だけで約150万本売り上げた。

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ゲーム開始して真っ先に表示されるロゴから感じる「圧」

 

だがもちろん、ただ『Disney』というだけで売れる程ゲームの世界は甘くない。スクエニは実に見事に『Disney』のコンテンツをビデオゲームという新たな表現手法に取り入れていった。

まず『スーパーマリオ64』のような立体的な空間を設けて、そこに『Disney』の世界観を詰め込んだ。『アラジン』のアグラバー、『ターザン』のジャングル、『リトルマーメイド』のアトランティカ。誰もが一度は映画でみた『Disney』の世界を自由に冒険し、キャラクターと触れ合える。これほどの幸福があるだろうか。

東京ディズニーランドのキャッチコピー「夢が叶う場所」は、『キングダムハーツ』にも通ずると思う。ゲームで他の表現媒体を引用するとはこういうことだと、ビデオゲームにおけるメディアミックスの代表例と言えるだろう。

 

(この辺の『キングダムハーツ』の凄さに関しては、近日有料記事を公開予定!)

 

全てが新たに生まれ変わった『キングダムハーツ』

話が少し脱線したが、この記事を読んでくださる方の疑問は一つだろう。結局その13年待って発売された『キングダムハーツ3』は面白いのか?過去の栄光と膨れ上がった期待で押し潰されはしなかっただろうか?と。

 

実際めちゃくちゃ面白い、というのが自分の認識だ。

自分も発売前は不安ではあったが、『キングダムハーツ3』は紛れもなく『キングダムハーツ』だ。手頃でスマートなアクション、『Disney』の世界観や人物像の見事な再現、そして複数の神話が混ざることで生まれる重厚な体験がプレイヤーを待っている。 

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まず戦闘が面白い。

初代『KH』の戦闘は何とかゲームとしての体裁を維持する微妙なクオリティで、この上カメラ操作が劣悪だったので今プレイするとかなり悲惨な内容だった。それが『KH2』でグッと改善され、更に『KH3』ではその何倍も進化し、数あるARPGの中でも戦闘シーケンスの楽しさはピカイチとなった。

まず、武器となるキーブレードの種類が格段に増えた。それも、ただの剣ではなく、ハンマーや2丁拳銃といったものも用意され、アクションも全く別物で戦闘ごとに新しい手段を試すことができる。

その上、カメラも初代の劣悪さから考えられない程洗練され、FOVの広さやフレームレートの安定もあり、いつまで戦闘を続けていても飽きない。

何より、今作から新たに追加された「アトラクションフロー」が最高に楽しい。これは戦闘中にある簡単な条件を満たすと、「スプラッシュライド」や「パイレーツシップ」といったテーマパークにある乗り物に乗って攻撃できるというアクション。戦闘が格段に楽になる他、エフェクトもとても派手で、実に『キングダムハーツ』らしい絢爛な新アクションだと思う。

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ただ「戦闘が面白くなった」と言っても、例えば『モンスターハンター』のような戦略的な楽しさが増したわけでない。

むしろ、『キングダムハーツ3』はシリーズで最も簡単な部類だと思う。新アクションはプレイヤーを複雑さから開放し、代わりに強すぎる程の「おもちゃ」をたっぷりとくれてやる、とにかく楽しんでもらう事を大前提に作った、遊園地のアトラクションのようなゲームなのである。

この割り切ったカジュアルさこそ、個人的に『キングダムハーツ』の醍醐味だと思う。女性ファンを始めとした、普段ゲームをプレイしない層にも楽しめるような作品は据置機では希少だ。それでは物足りないという本格的なゲーマーには、難易度「プラウド」で挑戦してほしい。

 

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だが何より『キングダムハーツ3』で注目すべきは、スクエニに『Disney』更に『Pixar』まで加わった、「コンテンツの坩堝」を全く違和感なく冒険させる世界だ。

『キングダムハーツ』では、各作品の世界観が「星」として分離されており、プレイヤーはそれらを冒険する。

その星には、今作では毎度おなじみ、『ヘラクレス』、『くまのプーさん』に加え、新たに『アナと雪の女王』や『ベイマックス』等が参戦。更に、21世紀のディズニー作品に大きく貢献したPixarから、『トイ・ストーリー』、『モンスターズインク』らが追加された。

そしてこれらの世界を彩るのが、Unreal Engine 4をベースに作られた映像表現である。元々『Disney』のカートゥーンを前提に作った『キングダムハーツ』だが、精緻で写実的な映像表現と加わると格段に世界のリアリティが増したのは興味深い。

確かに、ミッキーには皺がないし、ソラには何万本と描きこむ髪の毛も生えてない。だが、元々細かく描かれた世界に加え、独自のエフェクトやパーティクルと相まって本当に『Disney』の世界に干渉しているような気分に陥るほど。

恐らく本家ディスニー社でもこのクオリティをゲームで実現するのは不可能だろう。そこは「ゲーム屋」の意地を見せたスクエニのデザイナーたちの技術とセンスに拍手を送りたいところだ。

 

何より、面白いのがPixarとのコラボレーション。

元々『キングダムハーツ』はディズニー×スクエニの企画だったが、今回はそこにピクサーが加わった。だが、ピクサーはディズニーの子会社でありながら独自のクリエイティビティと権力を持つ程の集団であり、作品の在り方もディズニーと異なる。

この、全く方向性が異なるスクエニ、ディズニー、ピクサーの鼎立を『キングダムハーツ3』は違和感なくミックスしている。ここが『キングダムハーツ3』の優れた点だ。

違和感がないために、プレイヤーは「凄い」と大げさに感動しない。ソラ、ドナルド、バズライトイヤーの共同戦線も、既に一度見たようにさえ思ってしまう。

だが思想も経緯も異なる3つの世界観を合わせ、更に無数の作品まで混ざる今作の「違和感の無さ」は正しく匠の技と呼ぶべきで、世界でもスクエニにしかできないことだと思う。

『KH3』において「普通のゲームだった」という印象は、最大級の褒め言葉なのである。

 

『キングダムハーツ』という束縛

と、ここまで『キングダムハーツ3』の美点を種々述べてきたが、一点不満を挙げるとすればこの『キングダムハーツ3』という作品が、『キングダムハーツ』という13年続いたシリーズに束縛されているよう感じられる点だ。

 

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最たる例はまずカットシーンの多さ、そして長さだ。

最初に『キングダムハーツ3』を起動すると、壮大なオーケストラ曲と共に3分程で過去作の総集編のようなOPが「約3分」入る。次はその総集編をリアルな表現で再現した2つ目のOPが宇多田ヒカルの「Face my Fears」と共に「約5分」流れ、ようやく操作手順を確認するチュートリアルが始まる。すると次のワールド「オリンピア」に辿り着くまで「約7分」のカットシーンが始まり・・・。

 

一体これはゲームなのか映画なのかどっちだ。『キングダムハーツ』シリーズ自体、スクエニ作品ということもあってムービーの多さが有名だったが、いくら何でも多すぎるし長過ぎる。ゲームプレイの倍の時間ムービー流れてるぞ。

 

これだけではない。最初のマップ「オリンピア」においても、ボスを倒して「オリンピアから離脱するシーン」が5分、「同時刻にリクとミッキーがダーク・ワールドを探索するシーン」が10分、更に「イェン・シッドの元で合流するシーン」に10分、グミシップの移動を挟み、「次のワールドに到着したシーン」でまた5分のムービーである。

ほぼ、4連続、30分の、カットシーン。いくら何でもやりすぎである。

確かに、元々アニメを中心とした映像であるDisney作品やPixar作品を引用する上で、カットシーンが増えるのは理解できる。が、それにしても多すぎて大半のプレイヤーは飽きるだろう。

また、仮にカットシーンを導入するにしても、ちゃんと説得力があったり、映像として洗練されているなら良いのだが、本作のカットシーンにそういった映像的魅力はない。カメラも演技も脚本も、ごく平凡な、悪い意味でゲームらしいカットシーンの連続だ。

 

こうなってしまう理由として、先述した「『キングダムハーツ』というシリーズの束縛」が考えられる。

『キングダムハーツ』は13年続く作品であり、ナンバリングは本作含めて3本でも、外伝を入れれば9本存在している。この「外伝」というのが実に厄介で、本筋に関係する程重大でもないが、さりとて全く無関係というほどでもなく、半端な設定や登場人物といった要素が多い。

そして『キングダムハーツ3』はこれら外伝を含めたシリーズの物語の結末を、一気に書き上げようとしているので、カットシーンも膨大なものになるし、登場人物もべらぼうに増え、また全体的なクオリティにムラがある。

外伝自体、開発規模やハードの制約もあってクオリティもピンキリであり、そうした質的な歪さも目立つ。

(余談だが、この課題は『メタルギア』シリーズの最終章『MGS4』でも感じた。物語という面では、あちらの方が数段上手だったが。)

 

特に野村哲也さんのスクエニ陣は、良くも悪くも自分たちの過去作をリスペクトし、シリーズ単位で売り出そうとするので、『キングダムハーツ3』もこの方針になったのだろうが、悪手と言わざるを得ない。

筆者自身、『KH』シリーズ特有のXIII機関といった組織やロクサスといった人物は筆者も愛着が湧いているのだが、さすがにもう少し厳選すべきだ。

何より、この過去作の設定や、独自の専門用語がバンバン飛び出す物語は、『キングダムハーツ』ファン以外の人からすればチンプンカンプンなので、本来『KH』シリーズの魅力だった「誰でも遊びやすい」というカジュアルさが、このシナリオ部分で一気に絞られてしまうのは、大きな矛盾だと筆者は考える。

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専門用語が多いのはいいとして、その文脈が仰々しすぎるのが良くない。もっとさりげなく、自然な形で導入する方が読みやすい。


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と、カットシーンや物語面での不満はあれど、『キングダムハーツ3』オリジナルの冒険は最高だ。新しいワールドには発見に満ちており、DisneyやPixarのキャラクターたちとの掛け合いも悪くない。

また、最新技術で再現されたDisney、Pixar、スクエニが鼎立する世界観も圧巻の一言で、新しいソラの戦闘は爽快感と自由度に満ち溢れており、地味なチャンバラARPGを一蹴する楽しさだ。

総じて、『キングダムハーツ3』は紛れもなく優れた作品だ。世界最高峰のコンテンツをビデオゲームという媒体に定着させ、それでいてオリジナリティを堅持する姿勢は、決して他のゲーム企業にはない情熱と意欲と、何よりコンテンツ全般に対する敬意によって成立している。

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