ゲーマー日日新聞

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【評価/感想/レビュー】次世代の分隊バトロワ『Apex Legends』にタイタンは不要だった

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 自分は色々な対戦ゲームをプレイしてきたが、その都度開発スタッフの心境に、身勝手ながら同情することがある。

 

 ゲームを作ることは、言うまでもなく大変な困難を伴う作業である。人材も、予算も、期間も、それはもう膨大なリソースを注ぎ込んで作られるものだ。

 

 それだけのリソースをつぎ込む以上、ゲームを発表する瞬間や発売する前夜の開発スタッフの緊張と興奮は、我々には想像もつかないものだろう。その瞬間、開発スタッフたちは自分たちの作品がどうか成功してほしいと、宮本茂やジョン・D・カーマックといった、各々が信じるゲームの神に祈っているかもしれない。

 

 

え?タイタンなし?

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 そんな中、かつて『タイタンフォール』というFPSシリーズで名を馳せたチームRespawnが、「今回は、タイタン抜きのバトルロワイヤルを売ります。エヘエヘ。」と発表する前夜の緊張と興奮はいかほどのものだろうか。常人なら胃に穴が空いてもそうおかしくはない。労災が降りるかどうかは知らないが。

 

 2月5日、発表と同時にサービス開始という異例のスタートを切った、Respawnが送る新作『Apex Legends』。本作の原則的なルールは『PUBG』や『Fortnite』で知られるバトルロワイヤル。つまり、徐々に狭まっていく戦場の中で最後まで生き残れば勝利というものだ。

 

 本作はそこに加えて、主に以下のようなルールが加わっている。

・原則3人が1つのチームで行動し、20チーム合計60人でバトルロワイヤル。仮に1人で参加しても強制的に他メンバーと3人分隊を組まされる。

・操作キャラクターは8種類存在し、それぞれ使用できるスキル等が存在する。

・敵の位置を報告するping等のコミュニケーション機能が存在する。

 

 が、なんと言ってもファンに衝撃を与えたのは、何度も言うように「タイタン」が存在しないこと。ついでに言えば、ウォールランスライドホップといったシリーズお馴染みの移動を加速させるテクニックも削除されてしまった。当然ながら『タイタンフォール』ファンは憤り、SNSの反応も芳しいものではなかった。

 

 もちろん自分も『タイタンフォール』シリーズは1も2もプレイした人間であり、彼らの判断に一体どんな意図があるのか測りかねていたのは事実。

 

 だが実際に遊ぶと、なるほど『Apex Legends』は『タイタンフォール』から独立した作品としてちゃんと作られていると納得した。

 

 

 

 話が少し変わるのだが、私は以前『タイタンフォール2』の批評においてこのような文章を書いた。

 

よく収納術などで、「箱になるべく多くのモノを詰め込みたいなら、まず大きなものから入れなければならない。」と言われる。

(中略)

『Titanfall 2』における「大きなもの」とは、主に高性能パイロットスーツを使った「ウォールラン」と、タイトルにもある通りの巨大ロボット「タイタン」だ。

本作はこの重要な”コア”となるメカニクスを、極めて順序よくゲームプレイに取り込んでいる。」

arcadia11.hatenablog.com

 

 私がこの『タイタンフォール』を絶賛した理由は、「タイタン」というゲームのルールを大きく変化させる重要な要素を先にゲームに投入し、それを中心に様々なルール、例えばウォールラン等の挙動や、ミニオン兵士の存在などを、タイタンの次に重要な順から『タイタンフォール』というゲームに投入していった、「美しい優先順位」にある。

 

 例えばキャンペーンモードであれば、いついかなる場面においてもプレイヤーであるパイロットとタイタンは一心同体であり、ごく一部を除いて離れることがない。そしてくっついている間、巨大な敵タイタンと戦うとか、遠い場所へカタパルト代わりにタイタンを使うなど、常にタイタンを使うギミックが用意されている。

 

 他プレイヤーと対戦するマルチプレイにおいても同様である。プレイヤーは誰もがタイタンに搭乗することが可能で、その間は生身で戦っている時より何倍も心強く感じられる。その一方、タイタンの高火力・重装甲に対して、パイロットはウォールランやスライドホップといったテクニックから得られる機動力がカウンターとなることで、タイタンが一方的にパイロットを押しつぶすバランスにはなっていなかった。

 

 つまり、このゲームが単に『CoD』っぽいゲームにタイタンを載せただけでなく、むしろ逆に、タイタンという存在を用いて面白いゲームを作るには、どのようなルール、テクニック、バランスが最適か、ちゃんと順を追って調整されていたのである。

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「タイタンに乗ってない時」ですら面白いから、『タイタンフォール』は評価された。

Respawnのゲームデザインにおける優先順位

 さて話を『Apex Legends』に戻そう。まず、『Apex Legends』と『タイタンフォール』には大きな違いがある。

 

 それはタイタンの有無以前のルールだ。『タイタンフォール』は大規模な軍団同士が正面からぶつかりあう戦場(大体6v6)だが、『Apex Legends』は小規模な分隊同士が最後まで生き残ろうとする戦場(3v3v3…)と、根本的なルールと規模が異なっている。

 

 ここで、先ほど説明したRespawnの美学たる、「優先順位」を思い出して欲しい。ゲームの根幹となる「大きな石」は、全く異なる形の容器には入らない。すなわち、タイタンという存在は2チーム同士がぶつかる大規模な戦場ではゲームを楽しく遊ばせるシステムだが、小規模の兵士同士がぶつかるバトロワの戦場でも有効とは限らないのだ。

www.youtube.com『タイタンフォール』のテーマはあくまで大規模な戦場における軍事衝突。

 

 そこで、『Apex Legends』のルールである「原則3人チーム同士のバトロワ」という点を改めて評価したい。

 

 従来、『PUBG』を始めとする、バトロワと呼ばれるタイトルは大抵、1人で遊ぶ「ソロ」、2人で遊ぶ「デュオ」、4人で遊ぶ「スクワッド(分隊)」という選択肢が用意されている。

 

 ソロは緊張感ある生き残りが楽しめる一方、スクワッドは友達と気軽に参加できたり、逆にプロチーム同士が白熱した集団戦を行うなど、同じバトロワといえど全く異なる魅力と戦略があった。

 

 その点、『Apex Legends』は潔いことに3人分隊限定である。仮に1人で参加しても、他の2人と合流して結局3人になる。その上、降下場所さえ3人同じである。一応単独行動もできるが、そうすれば他の3人分隊に蜂の巣にされることは免れないだろう。

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3人一緒に降りるのはテンション上がる。これでうっかり友達とはぐれることもないぞ!

 

 ともかく『Apex Legends』は3人分隊が前提だ。そのために、先に述べたような、スクワッドモードならではの友達と遊ぶ気軽さや、同時に細かな連携を取る戦略性も楽しめる。

 

 だが興味深いのは、『Apex Legends』では明らかにプレイヤー1人あたりの火力・行動範囲が他のバトロワタイトルと比べても少ないことである。

 

 例えば、『PUBG』というタイトルは比較的「リアル系」に分類され、アサルトライフルなら数発命中するだけで敵を倒せる。交戦時間も短ければ数秒でどちらかが倒れるだろう。

 

 また『Fortnite』では建築システムによって超人じみた機動力を得られる上、ロケットランチャー等の爆発物も豊富であり、やはり個人の技術がハッキリと出る。『CoD』のBlackoutは比較的大人しいバトロワだが、それでも銃の平均的な性能はかなり高い。

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 ところが『Apex Legends』にはそうした個人の実力が発揮される機会は少ない。アーマーを着込んだ相手はめちゃくちゃ硬く、1対1で撃ち合っていても中々お互い倒れず、お世辞にも爽快感があるとは言えない。少なくとも、もしソロモード限定でこの調整なら、ひたすら面倒なだけで地味なバトロワと評されただろう。

 

 だが先述したとおり、この作品は3人分隊が大前提の作品。1対1で倒せる機会がないなら、必然的に2対2、3対3の撃ち合いも増えていく。簡単にエイムや建築といった技術で敵をねじ伏せられない分、分隊がいかに効率よく相手を追い詰め、着実に仕留めるかの「連携面」が重要になっていく。

 

 すなわち、タイタンの没収もスライドホップの削除も、根本的にプレイヤー一人当たりのポテンシャルを削って分隊行動で競い合う上で、やむを得ないものだったと言えるだろう。スライドホップで相手の懐に飛び込んで全員瞬殺するとか、タイタンのレーザーコアで相手分隊全員を「薙ぎ払え!」とやってしまっては、3人分隊に束縛した意味がなくなってしまう。

(タイタンフォール3を待ち望む気持ちは多いにわかるが)

 

 また開発者も自身で認めていたが、分隊の規模を4人でなく3人にしたのはかなり巧妙で、4人だと確実に1人ぐらいサボりそうなものだが、3人だとピリリとした緊張感があり、野良プレイヤー同士でも思いの外ちゃんとまとまって行動することが多かった。

 

分隊バトロワ独自のアツさ

 では、そこまでして作った分隊バトロワが面白いのかという疑問が浮かぶが、個人的には中々面白かった。

 

 歩兵が分隊で行動し、互いの死線を補うようにクリアリングしつつ、場合に応じて敵側面に回り込んだり、或いは建築物に立て籠もったりする体験は、何だか初期のBFシリーズや、特に『BF2』のMODである『Project Reality』、その類似作品の『SQUAD』を思い出す。

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『SQUAD』。まんま「分隊」という意味。楽しさは似てるが、ゲーム性はまるきり別物。中々面白いので遊んでみてね。

 

 より具体的にこの分隊バトロワの魅力を説明すると以下の2点が挙げられる。

 1つはマップを把握して動くポジショニングの重要性。ただでさえ敵が硬い上に、建築も爆発物もビークルさえない本作では、エイム以上にポジショニング、位置取りが重要になる。例えば、遮蔽物、高所、それらが組み合わさった背の高い建物等では、撃ち合いにおいて大きな有利に立つことができるだろう。

 

 『Apex Legends』の初期マップ「キングスキャニオン」はパッと見ても中々よく作られており、こうした遮蔽物、高所、建築物の塩梅が良い。というか、マップ全体がかなり立体的に作られており、必然的に有利なポジショニング(高所)の奪い合いとなる。そこで、それぞれマップをにらみつつ、ここに陣取ろうとか、ここは避けようとか、あれこれ考えて動くのはいかにも分隊行動という感じで楽しい。

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「渓谷」なだけあって高低差が激しい。

 

 またこれはバトロワの定番だが、徐々に狭まるエリアに対して、エリアのギリギリ外から敵チームの背後を狙いに行くのか、逆にエリアの中心に予め陣取って外から走ってくる敵を待ち構えるのか、という判断がある。こうした常に発生する選択を、メンバーで相談して決断するのは、実際の兵士になったような気分になる。

 

 これらの移動や判断においては、本作においてかなり充実している「Ping」という、移動する場所や敵の位置を共有できる、一種のラジオチャットが大変便利だ。全員が全員ボイスチャットに繋げて、しかも英語と中国語とタガログ語を全部話せるとは限らないしな。




 もう1つの魅力は、それぞれ能力や得意分野が異なる「レジェンド」たちの役割分担だ。

 

 この『Apex Legends』は、ゲーム開始時に8種類存在するレジェンドを選ぶことになる。レジェンドたちは、それぞれタンク、ヒーラー、陽動、偵察、ステルスと諸々存在するのだが、彼らのアビリティを活用することが重要となる。

 

 タンクの「ジブラルタル」が盾を貼ったり、ヒーラーの「ライフライン」が味方を回復する、というのは概ね予想の範疇だが、ジップラインを設置して味方と一緒に高所へ移動できる「パスファインダー」などは、『Apex Legends』ならではの面白いレジェンドだと思う。みんなでジップラインでスス―っと降りたり登ったりするのは、なんだか特殊部隊みたいでかっこいい。

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 だが何より『Apex Legends』の優れている点は、レジェンドたちに現在共通して、「直接的に敵を倒せるアビリティ」が存在していないこと。

 

 例えば、タンク系の「ジブラルタル」は地点を指定して砲撃することが可能だが、この砲撃は着弾までかなり時間がかかり、しかも丁寧にも敵側には警告用のエフェクトまで出る。避けようとすれば、砲撃が始まってから避けること自体難しくない。

 

 では役に立たないのかといえばそんなことはない。遮蔽物に籠もっている敵に砲撃を要請すれば、敵はそこから蜘蛛の子を散らしたように逃げ出すから、その瞬間を狙い撃つのだ。また単に敵分隊が固まっている所へ砲撃を降らせるだけでも、敵のポジショニングは一時的に瓦解し、戦闘で有利になる。

 

 あるいは、衛生兵の「ライフライン」はケアパッケージという防具と薬品を詰め込んだコンテナを投下する、強力なアビリティを持っている。だが、『CoD』で似た名前のキルストリークを使ったことがある人ならご存知の通り、パッケージが落下する場所は他人からも丸見えであり、回収時にかなりの危険を伴ってしまう。こちらは味方のポジショニングを調整する必要があるのだ。

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これがケアパッケージ

 

 何度も言うように、『Apex Legends』は分隊バトロワを作る上で、意図的にプレイヤー1人あたりの機動力・火力を落とす調整をしている。タイタンもウォールランも削除するほどだ。いくらレジェンドのアビリティといえど、簡単に敵を倒せるアビリティがあれば本末転倒である。

 

 だからこそ、レジェンドたちのアビリティは強力であるものの、即時的な効果は得られない。むしろ、ポジショニングを変えさせたり、変えざるを得なくなるなど、地政学的な優位を追求している点が、Respawnならではのこだわりを感じる。

 

ソロとパーティをどう分ける?

 とはいえ実験的なタイトルなだけあって、『Apex Legends』にも人を選ぶ部分があるのは事実だろう。

 

 まず、何度も強調するようにこのゲームは『タイタンフォール』と比べて、火力も装甲も機動力もない。正直地味なバトロワである。だからこそ分隊行動に意義が生じるのだが、んなもん興味ねえ、俺は走って飛んで撃ちまくりたいんじゃーい!という人は楽しめないと思う。

 

 それと、『Apex Legends』はかなりの連携を要求するゲームだが、マッチメイキング時にソロとパーティが分けられていない疑念がある。ここはまだ明確に判明してないため、間違っていたら申し訳ないが、読者から話をうかがった限り可能性はかなり高い。

 

 つまり、自分1人で飛び込んだら他2人はカップルでしたとか、対戦相手は3人ともちゃんとVCで連携したプレイヤーでした等、今の仕様はいろいろとぼっちプレイヤーには世知辛いかもしれない。

 

 また単純に野良チームとフルPTチームがぶつかって勝つのは、よほどの実力差がないと厳しい。また連携が楽しいというのは、それだけパーティに対して配慮が必要なわけで、バトロワならではの気軽さ、自由さは当然犠牲になっている。もし真面目にプレイするなら、3人フルメンバーを揃えられる環境がないと厳しそうな感じはする。

 

 ただそうした『Apex Legends』ならではの、プレイヤー同士のコミュニケーションを重視するゲーム性は、新たなバトロワを作り出す上で重要なコンセプトではあったのだろう。

 

 むしろ個人的に期待したいのが、『Apex Legends』のプロリーグ発足、それに伴う観戦文化の発達、要するに皆大好きesports展開である。

 

 これまで『PUBG』の国内リーグ「PJS」等複数のバトロワタイトルのプロシーンを観戦したが、4人チームのスクワッドモードならではのポジショニングの奪い合い等見どころが多いものの、どうしても純粋に銃撃戦でキルが奪えるか否かという、個人技に偏っていると感じることもあった。

 

 『Apex Legends』はこれをより『Overwatch』とか『Rainbow Six: Siege』に近づけたバランスで、プロチームだからこそ実現できる高度な連携からなる試合と、その観戦がかなり楽しめそうである。EAの持つ大きな資金もあるしな。もちろんまだサービス開始したばかりで、今後どうなるかは想像もつかないが。(少なくともesports展開に関しては筆者の完全な妄想)