ゲーマー日日新聞

ゲームを「ゲーマー目線」で語る独立系ゲーム紙 | 依頼等はメールに | note https://note.mu/j1n1 | 連絡先ak47ava(at)gmail.com

【評価】『デビルメイクライ5(DMC5)』ゲームレビュー 世界最高峰の三次元近接戦闘、此処に在り。

スポンサーリンク

 

f:id:arcadia11:20190312223749p:plain

 『DOOM』、『Painkiller』、『Darksiders』、『ベヨネッタ』、『Brutal Legend』、そしてこの『デビルメイクライ』(以下『DMC』)。

 

 バイオレンスなビデオゲームは大抵悪魔が大好きだ。それは悪魔が無条件に暴力を振るうサンドバックとして適任だからという事情も考えられるが、だがソレ以上に悪魔を蹂躙する荒唐無稽な映像それ自体が、一種のアイコニックな信仰なのかもしれない。ヘヴィ・メタルという形を持たない音楽を客観的に視認すべく、その外見に悪魔崇拝を借り受けるように。

 

 故に、『DMC』をプレイしたことがないゲーマーにとって、それは荒唐無稽で乱雑な作品と考える者も少なくないだろう。

 

 しかしながら、ヘヴィ・メタルがその象徴的な印象と裏腹に、奏者には極めてハイレベルな技能と集中力を求めるのと同じく、『DMC』は驚くほど繊細で職人気質なゲームだった。

 

 カプコンが2001年に発売した本作は当時まだ未発達だった、三次元における近接戦闘(Melee-Combat)の可能性をグッと引き出し、それからもいくつか批判を受けつつ順当に進化し、そしてこの『DMC5』で彼らは18年間の旅路に一つのピリオドを打った。

 

 要するに、『DMC5』のバタ臭い、18年間変わらない中二病丸出しの外見に騙されてはならない。むしろそれは、長年培った熟練の三次元・近接戦闘を誤魔化すためのカモフラージュだ。万人に認められるが故に万人向けではない、あまりに鋭利な硝子細工のハードルを下げるための偽装なのだ。

f:id:arcadia11:20190313105312j:plain

いつものノリは健在。声優さんが良い仕事してくれた。

世界最高峰の三次元戦闘を味わえ

 物語は『DMC4』の直後から続く。世界に「魔王」と呼ばれる悪魔ユリゼンが姿を表し、その攻撃からダンテはネロを庇ったことで、ネロはユリゼンへの復習とダンテの救出のために悪魔を再び狩り始める。

 

 ストーリーは徹頭徹尾、ビデオゲームの小休止として挿入されている。つまりそこまで複雑な脚本でなく、しかしクールなセリフと派手な映像で眠くならず、要はいつもの『DMC』だ。

 

 問題は何を置いてもアクションだが、いやすごい。去年も『God of War』や『Marvel Spider-Man』等、海外にもそれなりに遊べるMelee-Combatは存在したが、ソレを遥かに上回る勢いでこちらも仕上げてきている。

 

 最初の主人公のネロであれば、主にリボルバー「ブルーローズ」、エンジン付きの剣「レッドクイーン」、そして新たな武器「デビルガントレット」を最序盤から装備しており、これらを組み合わせて悪魔を蹂躙していくことになる。

 

 まずこれらの武器の使い勝手は、これまでの『DMC』を遥かに上回る水準で改善されている。要するに、ラグがまったくない。今まさに剣を振りたいと思った瞬間にネロは敵を切り裂き、敵の攻撃が来るなと思った時にはネロが動いている。

 

 そこに三種類の武器に加え、そこから無数に派生するスキル、そしてそれらを組み合わせたコンボ、これらが合わさることで『DMC5』の戦闘はまさに極上の域に到達している。

 

 剣を振り、ローリングで回避するゲームなどこの世に無数に存在するが、『DMC5』は紛れもなくその頂点と言える水準の、操作性、戦略性、爽快感を併せ持っているのだ。

 

 無論これは、長年に渡るシリーズのノウハウ、そしてカプコンという世界最高峰の三次元アクションゲームメーカー故の芸術なのだが、決して『DMC5』は慢心せず、これまでの欠点や課題を全て洗い出し、それはもうピカピカに磨き上げたに違いない。このゲームで敵を斬った感触、思い通りに動いた時の快感などは、一朝一夕で決して培えるものでないと瞬時に把握できる。

f:id:arcadia11:20190313104850j:plain




 とはいえ、予めご了承いただきたいが、シリーズ初の初心者やACTが苦手なゲーマーにはこの喜びは共有し難いだろう。『DMC5』は技術こそ現代だが、思想は20世紀のそれに近い。何度も練習を重ねて上達を感じ、そこに喜びを見いだすゲームだ。実際これまでの『DMC』はシリーズの中で大小あれど、パッケージで喧伝する「スタイリッシュな戦い」を味わえるのは一握りだったと思う。

 

 だが『DMC5』はそんな「伝統的な思想」「老害的な思い込み」を履き違えてはいない。これまでの練習を重ねて色々なコンボや戦い方を身につける「縦のゲームデザイン」に対して、ちゃんと初心者が遊びたいように遊んでも楽しめる「横のゲームデザイン」も充実している。

 

 操作に関しては変な癖がほとんどなく、被弾のダメージが減少するなど難易度自体もかなり下げられ、高度なテクニックはハイスコアや高難易度でのみ問われるよう調整されている。そして何より、三種類の武器を三つのボタンに配置するキーコンフィグも絶妙で、誰でも自然と色々な武器を試せるようになっている。

 

 思想はクラシックだが、それは単なる懐古主義ではない。自分たちのゲームは絶対に面白いのだという不動の自信があるからこそ、色々な遊び方を許容する懐深さもあるのだ。

f:id:arcadia11:20190313104912j:plain

これまでのシリーズのストーリーをおさらいできる映像も最初から視聴可能。これを『KH3』でやってほしかった・・・。

不要な要素を削って、必要な要素だけを加えた潔さ

 『DMC5』の「進化」は非常にシンプルかつ有益なものだった。要は、「必要な要素」を増やして、「不要な要素」を削ったのである。

 

 では「必要な要素」とは何か?操作キャラクターだ。近接アクションゲームの『DMC』らしい明快な考えである。操作キャラクタ―が増えれば、派手で、奥深いアクションをもっと楽しめる。間違いなく「必要な要素」だな。

 

 それぞれ紹介しよう。新たにチューンナップされた「ネロ」は、最初に使えるキャラらしく初心者向けのオーソドックスな性能だが、そこに新しい武器「デビルブレイカー」が加わりリスクヘッジの緊張感と、自由に移動する機動力を手に入れた。

 

 次にお馴染み「ダンテ」だ。熟練プレイヤーにとってはいつものダンテだが、ネロ以上に派手で爽快感が高く、更にスタイルチェンジ+魔人化で刻々と戦い方が変化していくなど、シリーズ未経験者にはやや上級者向けのキャラクターだろう。

 

 そして最後が、新キャラクターの「V」。自ら接近して敵を切り刻むDMCでは異例の、魔獣による遠距離に特化したキャラクターだ。とはいえ、『DMC2』よろしくチクチクと逃げながら遠距離で戦えばいいわけでなく、敵にトドメを刺す時は自分の手で行う(=リスクがある)点がこのキャラの遊び方に一癖加えている。

 

 こうしたプレイアブルキャラクターが加わっていくことで、本作はただでさえ上質なサーロインステーキを味わっていたと思ったら、フィレとリブロースが追加されたような気になる。それも『DMC2』のルシアのようなコンパチ性能でなく、むしろ全く異なる性能のキャラクターが3キャラだ。もう3週遊ぶことは確定だな。

f:id:arcadia11:20190313105025j:plain

新キャラクターのVは複数の魔獣を的確に配置・指令することが重要。単純に魔獣さんたち大集合だわいわいって感じで画面が楽しい。それでいてちゃーんとスタイリッシュ。

 では、「不要な要素」とは何か。これはファンによって意見も異なるだろうが、少なくとも『DMC5』で切り捨てた(縮小化した)、ぶつ切りのマップ構造、固定カメラ、パズル、アイテムの使用等は英断と言わざるを得ない。

 

 特にパズル要素のほぼ廃止は筆者が長年待ち望んでいたもので、正直『バイオハザード』時代の名残を引きずりすぎたと思う。パズルがアクションの休憩パートになっていたのは事実だったが、決して出来が良いものでもなく、質の高いアクションパートとの落差が激しかった。

 

 興味深いのは、一連のパージは海外製『DmC』を引き継いだ点だ。決して過去にすがることなく、海外製のノウハウさえ回収する柔軟さは10年前のカプコンからは想像もできなかったし、同時にちゃっかり『DmC』で不評だった属性システムは切られている合理性も評価したい。

f:id:arcadia11:20190313105223j:plain

 総評として、『DMC5』は文句なしの傑作である。18年間のノウハウを組み上げつつ、海外版にも目を向け、必要なものと不要なものを厳選して、究極のMelee-Combatアクションゲームを完成させた。

 

 走り、斬り、避け、撃つ。アクションゲームに求められる肉体的運動を極めつつ、そこにネロの機動力、ダンテの多様性、Vの戦略性が加わる。同社の『モンスターハンターワールド』も筆者はMelee-Combatとして高く評価しているが、さりとて『DMC5』はその更に上を行ったと言って良いと思う。

 

 『DMC5』は、そのゴシックアート故に見くびりそうになるが、その巧妙なカプコンの処世術に騙されてはいけない。その内側では一心不乱に磨き続けた、職人気質な繊細さがプレイヤーを虜にしてしまう。

 

 とはいえ、やはりこの中二病感はたまらない。我々の心は永遠の中二なのだ……。

 

---

 

 以下はゲーム的な構文を一切使わず『DMC5』を無理やり説明しようとした駄文である。気が向いたら読んでもらえれば幸い。

 

---

 

 あなたは東京のサラリーマンだ。実際は違うかもしれないが、とにかく東京のサラリーマンだと考えてくれ。

 

 今、あなたは出張で大阪に訪れていて、東京へ新幹線で帰る途中だ。ところが商談が長引いて現在の時刻は13時25分。腹が悲しげに空腹を主張しているが、予約した14時10分の新幹線に乗るには、ランチタイムは遅すぎた。

 

 だが、あなたは大阪に住む友人のアドバイスを思い出した。「新大阪駅の地下にね、”カプコン”って精肉店があるんだけど。あそこの特上ステーキ弁当が……」脳裏に浮かんだステーキの映像が離れず、あなたはたまらず「カプコン精肉店」へ駆け込んだ。すると確かにデビルメイクラ……いや「特上ステーキ弁当」があった。値段は7500円……。値は張るが友人の言葉を信じて、あなたは財布から1万円札を一枚出した。

 

 あなたが乗った新幹線「のぞみ」が名古屋駅を出発した頃、あなたは例のデビ……いや特上ステーキ弁当の包を開けてみる。すると中には、200グラムはあるだろうか、巨大なサーロインステーキが弁当箱の上半分に鎮座しており、下半分には炊きたてなのだろう、鈍く光る白米が密集している。

 

 その米と肉を除いて、あとはもう柴漬けしかないが、しかし、この肉を前にして化学調味料の味しかしないきんぴらゴボウで腹を1立方ミリメートルでも満たしたいと、あなたは考えるだろうか?

 

 サーロインステーキは1センチ単位ですでに切り分けられており、割り箸でそれをヒョイとつまみ上げると、レアに焼き上げられた赤みが残る肉に、ひと目で上等だとわかる透明な肉汁が迸っている様子が見えた。

 

 あなたは思わず肉を口に入れる。するとどうだ。甘い肉汁が舌を滂沱として流れ、肉の旨味が口内で炸裂する。焼き立ての熱さはないが、だからこそ肉の味わいは一層強調され、舌を通して脳に殺到する洪水のごとき情報量に驚愕したあなたは、たまらず白米に箸を伸ばす。

 

 美味。あなたは恍惚とした表情で、自分の人生がこの瞬間のためにあったのだと確信するだろう。そして肉食によって一部野生化したあなたの精神は、本能的にタンパク質と炭水化物を求め、箸を走らせ続ける。

 

 ある程度腹も膨れ、肉の残量も少なくなった頃、あなたはある事実に気づく。実はこの弁当箱、二段になっていたのだ。今ある弁当箱の下に隠れた弁当を発見し、開封したあなたは更に驚くことになる。

 

 その中には、フィレ肉とリブロース肉が100グラムずつ入っているではないか!その上、付属のステーキソースとは別に、ワサビ醤油ソースとおろしポン酢ソースまで付いている!

 

 もうあなたを止める者は誰もいない。エクスタシーの中に溺れ、火星へ突撃する、200度に燃えるMr.ファーレンハイトだ。

 

 全てを召し上げ、全身が爆発せんばかりに膨らんだあなただが、それでも悔いがないと言えば嘘になる。勢いで7500円も昼食に使ってしまったのだ。今夜の夕餉はせいぜいカップ麺で我慢しよう。そう考えた時、弁当箱から一枚の紙切れが。

 

 「新たな難易度SAN OF SPARDAが追加されました。」

---

告知:

note.muゲーマー日日新聞のJ1N1が、本気でゲームが好きな人に向けて配信する定期購読「ゲームゼミ」を開講しました。

「ゲームを熟読する」をコンセプトに、多様なゲームの批評、分析、エッセイ等を配信中。ぜひご購読ください!

 

デビル メイ クライ 5 - PS4
カプコン (2019-03-08)
売り上げランキング: 5