ゲーム『World War Z』は、『Left 4 Dead』のパクリである。
いや、ゲームとは大なり小なり偉大なる先輩作品に影響を受けるものだ。『World War Z』(以下『WWZ』)をパブリッシングしたEpic Gamesの『Fortnite』は『PUBG』の影響を受けて、そのまんまのバトロワモードを作ったところ大ヒット、同社の稼ぎ頭となった。
それにしても『WWZ』の『Left 4 Dead』(以下『L4D』)へのパクリ具合は凄まじい。普通に訴えられるんじゃないかと思うほどだ。とはいえ、「いや、『L4D』って何やねん」と固まってる方に向けて、伝説的なCOOP-FPS『L4D』の解説から始めよう。
※日本語版未リリースにつき、プレイするためには海外版を購入する必要あり。PC版ならEpic Storeから直接購入できるので手っ取り早い。PS4版では北米版のパッケージを購入する形になるが、かなり高額。箱版は未調査。当然だがどれも英語版。
※「ゾンビ」と「感染者」が混ざってるけど、そこは目を瞑ってくれよな!
巨匠Valveが手がけた傑作COOP『Left 4 Dead』
『Left 4 Dead』は業界最大手のゲーム販売プラットフォーム「Steam」の運営企業として有名なvalve社が2008年に発売した、4人で協力してゾンビが蔓延る一本道のマップを踏破するCoop-FPS。
マップは4種類存在し、それを4~5つのチャプターで分割している。その間、プレイヤー4人は立ちふさがるゾンビを、近接武器や銃を駆使して倒して突破する。
特徴的なのは、半ば強制的に「協力」をはたらきかけるゲームシステムだ。通常のゾンビは銃を打つだけで倒せるが、中には体力が多く、またプレイヤー一人を行動不能にできる「特殊感染者」が存在し、これを処理するには仲間との協力が不可欠。更に、マップ毎にもシチュエーションが色々あり、車を動かすためのガソリンを探して運んだり、特定の地点を一定時間防衛するなど、やはり協力なしでは突破できない難所が随所に存在する。
『Left 4 Dead』はローンチ後に凄まじい反響を生み、各メディアで絶賛された。大量のゾンビを処理落ちせず描く描写、プレイヤーにうまく協力させるシステム、秀逸なレベルデザインに加えてAIがこちらの状況に応じて難易度を調整する「AI Director」など、現在でも革新的といえる要素がてんこ盛りで、「さすがValveだ」という絶賛の声が溢れた。(今のゲーマーはご存知ないだろうが……、実は昔のValveはゲームを作っていたのだ!!ドン)
そうした評価に加え、『L4D』はValveのプラットフォームSteamを全力でプッシュするために、幾度もセール対象になり2~3ドルで投げ売りされていたため、当時のsteamerなら誰でも遊んでいてサーバーの過疎化もなかったとか、ともかく10年前では大変に有名だったFPSである。
明らかに都市人口より多く発生したゾンビを、50口径重機関銃でなぎ倒せ
話を『WWZ』に戻そう。『WWZ』はこうした特徴を、モロにそのまんまパクっている。4人の生存者、特殊感染者やギミックによる協力、大量のゾンビを倒すバイオレンスな快感、こうしたゲームとしてのエッセンスは、『L4D』から受け継がれたものだ。
すなわち、『WWZ』は面白い。オリジナリティもへったくれもないが、しかしあの往年の名作を、現代の技術と少しの追加要素を加えて丁寧に復元したのだ。つまらぬはずはない。
このゲームは劣悪なパクリではない。単に流行のゲームを見て、それに便乗しようとパクった作品は無数にあるが、『WWZ』には原作に対するリスペクトがある。金銭なり権利なりのリスペクトはどうか知らないが、ゲームだけを見れば「何故『L4D』は面白かったのか」という疑問にちゃんと答えて作った作品だと感じる。
そうは言っても、ただ10年前のゲームを復活させただけでは味気がない。『WWZ』は骨組みこそ10年前だが、ちゃんと現代的なトレンドを付け足しており、この化学調味料めいた要素が本作に「中毒性」をプラスしている。
まず何と言っても、わざわざ『World War Z』という既存コンテンツの版権を借り受けたからこそ実現できる、原作(小説版でなくブラピの方ね)の有名なロケーションで、あの「ゾンビタワー」を目の当たりにできるのは嬉しい。映画版ではAIを駆使して1シーン8500体ものゾンビを動かしたというが、こちらもそれに負けてはいない。画面を覆い尽くすゾンビの大群は壮観で、それを50口径機関銃でなぎ倒す幸福といったら、もう筆舌に尽くしがたい。
また、「武器のカスタマイズ」や「パークの成長」は中毒性を高める典型的な化学調味料だ。この作品では遊ぶほどにアカウントのレベルが上がり、より強力なパークや武器を開放できる。これもどこかで見たシステムだが、「あと1ゲームすれば、このパークを開放できるな」という餌をプレイヤーの眼の前にぶら下げておくことで、プレイヤーを長い時間このラットレースに拘束し、彼らはサーバーの過疎化を防いでくれるだろう。
加えてFPS(『L4D』)→TPS(『WWZ』)の変化は良くも悪くもかなりプレイフィールに影響する。TPSになったことで視野が広まり、視界外からの攻撃を受けにくくなったのは「遊びやすい」と解釈できるが、一方『L4D』のようにプレイヤー同士で死角を潰し合う連携プレーは意味をなさなくなった。それにFPSと比べると、やはりTPSは「撃っている感覚」が希薄に感じる。
全体的に『WWZ』はカジュアルな味付けで、『L4D』のような「バカゲーに思えて、やり込むほどにハマる」みたいな調整ではない。ただゾンビはノーマルでもかなり硬いので、HSを簡単に狙えないCS版だと割と辛い難易度になると思う。
マルチプレー
更にこのゲームには、マルチプレーもある。
中身は案の定、ジュラ紀から来たのかというペラペラシューター。普通に敵のケツからリスポーンするし、やっつけで作った感がすごい。
『L4D』の対戦はめっちゃ面白かったのに……。
どう見ても『L4D』のパクリだが、結構面白いのでセーフ
総じて、期待以上の作品ではあった。
何をどう見ても『L4D』のパクリだし、Epicというかテンセントは本当に節操ねえなと思っていたが、中々どうしてこれはちゃんとしたパクリである。それでいて、ちゃんと原作の要素も反映されていて、程よく化調も効いている。一緒に4000円を払ってこの危険極まりない沼に引きずり込める友達がいれば、十分元は取れるという作品だ。
ただ、やはり『L4D』を超えるような感動はなかった。『L4D』は何周でも遊ばせ、高難易度も徹底的に研究させようというValveらしい作り込み具合で、その上革新性もあった。『WWZ』は『L4D』を遊んだ人間からすると新鮮さはほとんどないし、派手にゾンビをザクザクと処理して気軽に消費すれば良いという作り。面白いことは否定しないが、なまじ引用元がビッグすぎたのも事実である。
存在意義すら怪しいマルチプレーとか、妙にマッチングがし辛いとか、所々粗が目立つものの、作品自体はかなり良作の部類。友達と一緒に遊ぶゲームに飢えていたり、そもそも『L4D』を知らない、知っているけど今遊ぶには古すぎてちょっとキツい、あとM2重機関銃を撃ちまくりたい、そういう層には刺さる作品だと思う。
(早くTank来ないかなぁ、L4Dといったら手のつけられないTankだろうが モグモグ)
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