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ゲーム会社は配信者に「1時間500万円」で自社のゲームを遊んでもらう

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ソースはウォールストリートジャーナル

 

いやー、ヤバいね。しかも、実際は1時間で500万円なんてのは「中堅配信者」レベルじゃないの?と言われていて、大手にもなれば1時間700万、いや1000万円で動くのかもしれない。憶測の域を出ないけど。

ただ少なくともこれまで、アクティビジョン・ブリザード(『Overwatch』など)、テイクツー(『GTAV』など)、Ubisoft(『アサシンクリード』など)、EA(『Apex Legends』など)は、配信者にペイしてゲームを配信してもらったことが報道されている。

有名なのは「Ninja」と呼ばれる配信者が『Apex Legends』をプレイすることで、EAから1億円受け取っていた話。けどもちろん、広告費を受け取っていたのはNinjaだけではないし、そもそもNinjaだって受け取った広告費は”たった”1億円だったのかどうか。

 

だがビデオゲームのストリーミング文化における、インフルエンサーマーケティングの効果は恐ろしい。

特に『Apex Legends』なんかは顕著だった。『PUBG』や『Fortnite』で飽和したバトロワというレッドオーシャンに単独殴りこんだEAの本作は、瞬く間にTwitchなどで一流と呼ばれるストリーマーにプレイされ、それを見たファンボーイが大挙してOriginを立ち上げていた。だがこれはNinjaをはじめとして、有名配信者に相当な広告費をばら撒いたのが効いたと思われる。

しかも、『Apex Legends』は日本でも同様にバズったのが面白い。まさかEAJapanにユーチューバーへ1時間500万円渡せる資金力があると思えないのだけれど、EAが本国で意図的に発生させたバズが、はるか太平洋を渡ってここまで震撼させ、それが新たなバズをこの島国で動かした可能性は多いにあるだろう。

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だってさ、初期の『Apex Legends』の印象って実は最悪だったんだぜ。まずパブリッシャーが「EA」、そしてこの出遅れ感、おまけに『Titanfall』の世界観だけどタイタンが出てこないって発表。期待しろという方が無理がある。最初、Respawn Entertainmentの電撃発表配信もコメントは国内外共にネガティブなものだった。

そこから大逆転したのは、もちろんゲームの魅力もあるだろう。僕は発表した当日のうちにプレイし、その出来栄えに感動してその翌日には批評を書いたのだけれど、確かに『Apex Legends』は他のバトロワを吹っ飛ばすポテンシャルを持った作品だった。

けれど、一度根付いた印象を覆すのは非常に難しい。それを実現するのは、それこそカリスマストリーマーたちが楽しそうに笑顔を何十万人の視聴者に見せつけつつ、適度に「このゲームは面白いね!」とコメントを入れるぐらいだ。

 

とはいえ、1時間500万て……、どこまで効果あんの?と思うかもしれない。

だがよく考えてみると、ゲームメディアに広告を掲載するとファミ通.comの背景ジャックで250万円/1週間だ。これが高いといわないが、果たしてどこまで効果があるか、つまりコンバージョンに直結してるか微妙だ。

ゲームメディアの背景をジャックするぐらいなら、その何倍か支払って、stylishnoob氏に1日「ハハッw」と笑ってもらいながら遊んでもらった方が効果的であることは間違いない。(別にスタヌー氏がステマしてると言いたいわけでない。念のため。)

これは別にゲームメディアの批判ではなく、むしろゲームの広告作りがいかに難しいかという話である。

自分が好きな配信者が遊んでいるゲームを自分も遊びたいという願望は、背景でデカデカと張り出された品のない広告のゲームを遊びたいという願望にどう考えても勝る。「発売された」というニュースよりは、実際に配信者が遊んでいる様子を見る方が、遥かにゲームを買おうと思える。

文字媒体では、健康食品を売るよりもゲームを売る方が難しい。

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ファミ通.com | KADOKAWA アド メディアガイド

 

だが往々にして、こういったインフルエンサー・マーケティングやセレブリティ・マーケティングと呼ばれる点の問題は、以前日本でも問題となった「ステマ」問題である。

事実、先述した大手企業による配信者を通じた広報活動はほとんど後から「バレた」ものだった。中には表立って「ゲームを提供した」と告知して広報活動を行う企業、及び配信者も存在してはいるのだが、どちら側にとってもなるべく「広告臭」を消したいと考えるのは自明の理なので、なかなかPR活動である旨を宣言してくれない。

とはいえ、こうなると配信者の信頼は揺らぐし、作品の批評という観点でもアンフェアになる。もちろん、予算のない中小パブリッシャーやインディーパブリッシャーにとっても死活問題だろう。

ウェブの発達によってパブリッシャーの必要性が薄まり、広報活動に費用を割かないで済む分独創的な作品が増えるようになった現代ゲームシーン。

だが同時に配信者による影響力は増し続け、気づけば配信者に遊ばれないままにゲームを売ることが難しくなるという、逆転現象が発生している。

 

これはゲームのストリーミング文化にとっても問題だ。本来、ゲーム配信とは個人的なものであり、だからこそ、配信者は自分だけのコンテンツを作れたし、つまらないゲームにはつまらないと指摘することができた。

だけどそこに企業との繋がりが発生すると、配信者は当然視聴者にも企業にも配慮しなければならない。発言やパフォーマンスも当然空気を読んだものになり、配信それ自体の面白さを維持することは難しい。

これでは、企業との癒着で読者の信頼を失った、一部ゲームメディアの二の舞になってしまう。

補足:日本だとあまりいないけど、海外だとユーチューバーやストリーマーがジャーナリズムを結構担ってる。弊誌でも度々紹介するvideogamedunkeyはMicrosoftの姿勢を批判してたし、プロゲーマーがゲームバランスやバグに言及することも少なくない。)

 

ただし、個人的にストリーミング文化が発達し、そこにパブリッシャーが資金を投入することで、ゲームがより多くの人に知られるようになり、ゲーム市場が拡大するという流れ自体は歓迎している。

どうあれマーケティングなしにゲームを売ることはできず、ゲームが売れねばゲームを作れない。広告費をインセンティブに配信者が創意工夫して、より面白い配信を作れるようになれば理想だ。

そのためには、配信者は自分の視聴者を大切にして、企業もまた下手に圧力をかけず、何よりも「ステマ」は辞めるべき。

『FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー』のゲーム版みたいなのだけは勘弁してほしい。