ゲーマー日日新聞

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8年アプデし続ける狂気の物量作戦 伝説のインディーゲーム、『Terraria』レビュー

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J1N1(@J1N1_R)です。

 

先日Twitterで『Terraria』の話をしたら、なんかとんでもない量でバズったので、せっかく批評家を名乗っているのだし『Terraria』の批評でも書こうと思う。

 

 

『Terraria』の時代

一つ、ゲーミング昔話をしよう。

 

むかーし、むかしある所に……

 

具体的には今から8年前と1ヶ月前……

 

更に具体的に言うと本批評を書いている2019年6月14日から2950日前……

 

SNSでも2chでもRedditでもYoutubeでも、PCゲーマーがたった一本のタイトルに夢中になっていた。

 

 

 

その一本のタイトルというのが他でもない、スウェーデン稀代の天才が作り出した傑作Sandbox『Minecraft』である。

 

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ブロックにより構築された世界で、好きなだけ冒険したり、炭鉱夫としてレアな宝石を集めたり、マルチプレーで友達と遊ぶといった幅広いゲームプレイがウリの『Minecraft』。

 

インディーゲームとしてほとんどロクなパブリッシングも行わず、作りかけの状態でリリースされたにも関わらず、『Minecraft』はウェブ上の口コミでまたたく間にヒット。さすがに当時の日本では、今のように子供が毎日Youtubeで『Minecraft』の動画に釘付けになるなんてことはなかったが、ハードコアなPCゲーマーの間ではすぐに話題となり、皆こぞってサーバーを立ててマルチプレーに興じていた。

 

 

 

そんな中、とあるゲームが1000円ぽっちでSteam上に投げ売られる。

 

その作品こそ本稿で批評するゲーム『Terraria』だった。Steam上で公開されたスクリーンショットには、古き良き時代を思わせるドット調のグラフィック、洞窟を掘って鉱石を収集、そして家を建築してシェルターとする等といった特徴が説明されているが……

 

www.youtube.com

どう見ても『Minecraft』です、本当にありがとうございました。

 

案の定、掲示板は結構荒れた。なんせ、猫も杓子も『Minecraft』という時代にこの作品が出てきたのである。無論『Minecraft』の影響は非常に大きいだろうし、第三者による二匹目のドジョウと考えられても仕方なかった。しかも対抗馬はあの麻薬的な面白さを誇る『Minecraft』であり、「パクる相手が悪すぎる」と言わざるを得なかった。




『Minecraft』になくて、『Terraria』にあったもの

そんなゲスな評価が飛び交う中、それでも少しずつ『Terraria』の評価は上向き、やがて実際に遊んだプレイヤーからは、『Minecraft』とは別の、唯一無二の作品としての評価を確たるものとするようになる。

 

 

 

そもそも、『Minecraft』がこれほど評価されたのは、Java Edition Classicの0.2.4バージョンで、「サバイバルモード」が実装されてからのこと。これにより、プレイヤーは日々モンスターに襲われ、アイテムをドロップする恐怖と戦いながら創作に励む必要が生まれた。

 

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当時のパッチノート。実はcreativeモードの前は、石と土しかないゲームだった。

 

それまでの『Minecraft』はただブロックを積み続ける、ゲーム版『LEGO』のようなゲームだった。これはこれで既に面白い作品だったのは事実だが、少なくともこの時点ではありふれたSandbox(砂場ゲーム)であったのは間違いない。

 

(よく勘違いされがちだが、『Minecraft』における「本家」というのは、クリエイティブモードである。)

 

そこに「サバイバルモード」が革命を起こした。「サバイバルモード」が実装された事により、プレイヤーはただ創ることが目的にはならず、生き残るという極めて普遍的かつレベルの低い目標でこのゲームを遊ぶことができたからだ。

 

何かを一から創るというのは相応の努力とセンスが必要だが、ただ生き残るだけで良いのであれば、それは日々バーチャルな戦場や宇宙、果ては資本主義社会に身を投じている、我々ゲーマーの正しく得意分野だった。

 

だが「サバイバルモード」は更に予想もしなかった化学反応を『Minecraft』にもたらした。それはプレイヤーが冒険するようになったことだ。

 

これまで、クリエイティブモードにおいてプレイヤーは動く必要がなかった。基本的に真っ平らの決まった世界の中で、好きなものを作り続ければよかったから、せっかく用意された広大な世界もほとんど意味をなさなかった。

 

だが、「サバイバルモード」によって創作に必要な道具も素材も全て自分で集める必要が生まれた結果、さながらサルがヒトに進化したように、Steveたちは二足歩行をはじめ、やがて世界のホライゾンへ歩き始めたのである。

 

この引きこもることなく、常に見果てぬ世界へ冒険する楽しさが『Minecraft』を誰もが楽しめる傑作へと引き上げたのである。無論、『Minecraft』という傑作はこの進化だけで語りきれるものではないのだが、余白がないのでこの辺にしておこう。

 

 

 

さて、『Terraria』に話を戻そう。『Terraria』の本当に優れている点は、『Minecraft』という作品の構造を2011年5月=流行が始まって1年足らずでおよそ分解し、その中でも「サバイバルモード」の醍醐味、即ち見果てぬ世界への冒険と、リソースの収奪といった部分にフォーカスして作品を作ったことである。

 

『Terraria』は大本のコンセプトは『Minecraft』に酷似している。つまり、昼夜のサイクルがあり、モンスターから身を護るためにシェルターを作り、安全を確保したら地面を掘ってより良いリソースを得る。

 

しかし、『Terraria』は2Dのゲームだ。だから『Minecraft』が本来持っていたLEGO的な面白さ、建築などのクリエイティブな魅力は欠けている。なんせ『Minecraft』では10「立方」メートルの建築物を作れても、『Terraria』で作れるのは10「平方」メートルである。これはあまりにも悲しい。

 

だが開発陣はそんなこと百も承知だったのだろう。あくまで『Terraria』における建築要素はあくまで外的とのシェルターに留まっており、その本質は先程述べた「アドベンチャー」にある。地下を彫り、ダンジョンを発見し、強敵と戦い、より強力なアイテムを手に入れる。

 

『Minecraft』ではリソース的に実現できなかった要素が、『Terraria』の2Dゲームではよりローコストで実装できた。倒すべきMOBも、倒すための武器も、圧倒的に個性的でかつ豊富。派手で強力。『Minecraft』をアドベンチャーゲームとして楽しむ炭鉱夫や戦闘狂、冒険者のためのゲームと言っても良い傑作がここに誕生した。

 

『Minecraft』の「受動的なアドベンチャー」に対して、『Terraria』は「能動的なアドベンチャー」という形で新しい道筋を示したのである。

 

しかも、建築要素が全くの無駄になったわけでは勿論ない。冒険によって手に入れたリソースを還元する先として建築要素が機能するし、『Minecraft』譲りの昼夜サイクル→敵の襲撃のためのシェルターとしても機能する。

 

このように、『Terraria』はそのコンセプトの源泉として『Minecraft』の存在があったことは事実であろう。しかし、ただコピペするのではなくて、『Minecraft』の要素を分解しつつ、3次元のあちらにはないコンテンツの展開を見せたのが『Terraria』なのである。




天才が作った『Minecraft』、秀才が作った『Terraria』

だが、『Terraria』がその評価を本当に確たるものにしたのは、発売からおよそ半年経ってのことである。

 

一体何が起きたのか?

 

めっっっっっっっっっっっちゃアップデートしたのである。

 

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これが当時のアップデートリスト。さらっと右側に出てる名前あるけど

 

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それ一個辺りのボリュームこんなんだからね。

 

 

 

アーリーアクセスなんて概念がなかった当時。リリース時点から既に200時間以上は余裕で遊べるゲームだったのにこれ。新アイテム、新建築、新モンスター、新ダンジョン、新バイオーム。『Minecraft』以上の勢いでコンテンツをリリースし、その全てをプレイヤーに掘らせた。

 

そことまた相性のよかったのがマルチプレーである。一人で掘ってよし、友達と掘ってよし。『Terraria』プレイヤーは酒飲んで深夜3時4時まで延々とダンジョンを掘ってアイテムを集めた。

 

しかも『Terraria』のアイテムは単に数字が高い低いではない。非常にユニークなものが揃っていて、『Minecraft』譲りの開放的な世界観と、ハクスラよりのボリュームや爽快感と非常にマッチしていた。

 

例えば武器一つにしても、剣やクロスボウは無論のこと、ロケットランチャーにレーザーライフル、どっかのゲームの主人公が使ってたオマージュ武器……もう何でもありである。

 

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その上壁に貼り付けるフックショットや、空も飛べるジェットパックまであり、何と言っても『Terraria』の報酬は太っ腹なのだ。掘ったアイテムがどれもユニークだからこそ、ずっと彫り続けていられる。これがやれ数字が足りないだの、ソケットが1つしかないだので厳選してたら続かなかっただろう。

 

このように、『Terraria』はあくまで既に使い古された構造の中、すなわち2Dプラットフォーム+ハック&スラッシュ+『Minecraft』というシステムの中で、非常に膨大なコンテンツを次々に投入し、徐々にその狂気を含めた評価を得るようになった。

 

言うならば、革命的アイディアを次々に閃めく天才によって作られた『Minecraft』に対して、とにかく地道なアイディア出しによる努力を重ねた、秀才によるゲームそれが『Terraria』なのである。

 

(が、何より恐ろしいのは『Minecraft』も正直同じぐらい狂ったようにアプデを重ねていたことなのだが……。さすがに相手が強すぎる。)

 

 

 

そして現在2019年、ようやく『Terraria』は最後のアップデート『Journey's End』を実装する予定だ。アイテム800個に加え、新しいゲームモードまで持ってくる予定らしい。つくづくこの開発陣は狂ってるなと苦笑いしてしまう。

 

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毎回敵がミョーにグロいのも魅力

 

一方、『Minecraft』は恐らく21世紀最も成功したゲームとして後世まで語り継がれるだろうが、成功の代償もまた大きかった。海賊版対策や違法なサーバーの仕様、買収を巡っての様々な係争。ゲームと無関係な部分でコストが重なり続け、Notchは失望と共に『Minecraft』開発から去っていった。

 

もはや、どちらが優れているかなどと話す人間はいるまいが、いずれにせよ偉大なインディーゲームの二大タイトルである。辛苦を含めて色々あったりはしたが、両者の在り方は今でもインディーゲーム業界における希望となっているのではないだろうか。