ゲーマー日日新聞

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#ゲーム批評祭 『Capitalism 2』批評 著者:ponta

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著者:ponta(@claclaponta

 

J1N1さんから『ゲーム批評祭』のお題が出されて一週間、締め切りまで2時間を切った。

そもそもどのゲームを題材にすべきか。迷いに迷った。私を有名にしてくれた『クラッシュオブクラン』か。はたまた今をときめく『クラッシュロワイヤル』について書くべきか。

PVを考えたら『クラッシュロワイヤル』のレビューを書くのが妥当だと思いつつ、今回、求められているのはそういうことじゃねえだろうと。

もっとこう、だーれも知らないような名作を、ちょ、おま、なんでやってねえんだよ!と読者の襟元を掴むような勢いで書くことが必要なんだよと思いなおし、選んだのがなぜか『Capitalism 2(キャピタリズム2)』。

知らねえ。これ、だーれも知らねえよ。日本でやってる人、1,000人いるかいないかの無名ゲームだよ。だが、それがいい。

SUPERCELLの有名モバイルゲームにひよってる場合じゃねえ!ってわけで『Capitalism 2』のレビューです。ごめんなさい。


私事ながら筆者は昨年ベンチャーに転職しまして、社長であるYouTuberのドズル氏から「何をやってもいいよ」とフリーハンドで業務を委託されています。

とはいわれても、これまで十何年も、ルート営業やら、サブスクライブ(継続物)のプロマネやら、いわば決められた道の上を歩いてきた一介のリーマンですよ私は。

道なき道を切り開くビジネスの経験はないに等しい。そんな私の心の灯台、知識の源泉、それが『Capitalism 2』なのであります。

ひとことで言って、経営シミュレーションゲーム。大企業の経営者となって、製品を生産、加工、販売し、利益を出し、ライバルを蹴落とし、地域経済の覇者となる。そんなゲームです。

アメリカのMBAの授業でも使われているほど優れた経営シミュレーターといわれています。

PCゲームで、2002年の発売。古い。日本のパッケージ商品が品切れてからは一時期プレミア価格がついていましたが、いまはSTEAMのセールにてワンコイン以下で買うことができます。ちょっとググれば日本語化もできちゃうんですよ。便利な世の中ですね。

とはいえ経営ってなんだか難しそう…。と思ったそこのあなた。だいじょうぶ。私だって経営の経験はありません。家計簿さえ、2日くらいで飽きる男です。苦手なものは経費精算です。

そんな雑な人でもハマれるんです。大丈夫大丈夫。


ゲームを始めると、チュートリアル代わりの「起業家モード」か、慣れた人向けの「実業家モード」が選べますのでまずは「起業家モード」を選びましょう。

プレイヤーはMBAを卒業したばかりの若者。まだ何もない徒手空拳からのスタートとのこと。

徒手空拳といっても30億円の資産と百貨店をひとつ持っていて、なにが起業家だ、なにが持たざるものだという憤りが筆者に湧き上がるわけですがそれはともかく。

まずはチュートリアル通り、百貨店にものを仕入れていくわけですよ。「チョコ」 とか「靴下」 とか「風邪薬」とかまあ何でもいいんですが。

そうすると利益が出る。30億円の資産がさらに増えていく。順調順調。でも利益が出ると、欲も湧く。

単価が1ドルと低い「チョコ」 なんか売ってられるかってわけで、100ドルの「カメラ」に変更する。そうすると利益もハネ上がる。

飛ぶように売れる「カメラ」 に味をしめて、百貨店の品ぞろえをすべて「カメラ」にしちゃったりする。もはや一貨店。ビックカメラもびっくりだ。

調子にのって「カメラ」の値段を釣りあげて、さらに利益を拡大しようとすると、急に売れなくなる。赤字を垂れ流す状態。

焦って店舗を点検してみると、あまりに大量に売ったがためにメーカーの在庫が切れて商品の供給がストップした模様。我が店の棚もスッカスカ。

泣く泣く「カメラ」の仕入れ量を減らし、販売品を「チョコ」や「靴下」に戻したはいいが、ぜんぜん売れない。

町(MAP)を見渡せば、ライバルの百貨店が近場に新設されている。しかも弊社よりも住宅街に近い好立地。売っている品も弊社にまるかぶり。そして価格は安い。

顧客を奪われまくり。あわてて弊社販売製品の価格を落とすも、相手も負けじと落とす。かくしてここサンフランシスコの地に、サンマの美味しい季節のいなげやとライフの殴り合いもかくやくの仁義なき価格競争が繰り広げられたのであった。

その後、赤字ギリギリの販売価格で価格はともに下げ止まり、薄い利益を取り合うような形で痛み分けとなったが、30億の資産を運用して月の売り上げが100万円ってどうよ。どうなのよ。

店舗を街中に大量出店して、薄利多売で勝負という手もある。それで生きてはいける。しかしやはり、小売業は大勝ちするには厳しいことが分かった。

やはり商売は上流を抑えねば。ってなわけで小売業をやりながら、製造業にも手を出すことにする。

ほらあれよ。プライベートブランドってやつよ。

しかしいきなりものづくりに取り組むにしても、電子製品は厳しい。だってあなたも「カメラ作れ」って上司から言われたって困るでしょう。

このゲームは、たしかにどんな製品でも作れる。しかし、簡単に作れるものと、複数の材料が必要な、製造の難しいものがある。

「カメラ」は難しいものの代表的だ。

簡単なもの、しかも百貨店で売れるもの、ということで私の目をつけたのが「ベッド」だった。

「ベッド」はいい。なんてったって、「木材」さえあれば作れる。「カメラ」なんて「電子部品」と「プラスチック」と「ガラス」が必要だし、「電子部品」を作るためには「シリコン」とかいろいろ必要なのだ。考えるだけでダルい。

しかも「ベッド」は生活必需品なので、多少の景気の変動に左右されないのもいい。経営基盤の脆弱な弊社は不景気に耐えうる体力がないので、高価な製品の製造をする余裕はないのだ。

そして弊社は「ベッド」工場を建築。「木材」を仕入れ、製造も即座に開始する。販売量も好調だ。いいぞ、いいぞ。早速増産のかまえだ。

しかし「木材」の仕入れ先の生産量が少なく、増産もままならぬ。ええい、こうなったら山林を買うぞ。マジすかオーナー。

『Capitalism 2』はなんと、「小売」、「製造」だけではなく、「生産」までも行えるのだ。

当然、この一連の流れをすべて抑えられたら強い。自社工場にだけ高品質の原材料を格安で卸し、他社には低品質のものを高値で卸すなんてこともできる。

もちろん、そんなものを仕入れた他社工場は、価格でも品質でも自社の後塵を拝さざるを得ず、苦しい。ざまーみろ。

価格と品質、それによる差別化で利益を拡大する。ビックカメラ転じてニトリになっていたのは我ながら驚きだが、ここまでできれば第一段階、クリアだ。

とはいえ、サンフランシスコ市民の枕の数は一定だ。いくら弊社の「ベッド」が安くてモノがいいとはいえ、売れる数にはキャップがある。

かくなるうえは、品目を増やす必要がある。幸い、弊社の材木生産量には余裕がある。ここはひとつ、「椅子」を作ろう。

ひっそりと建てられる「椅子」工場。始まる生産。高まる期待。

しかし残念ながら、「椅子」の販売量は芳しくない。どうやら他社の「椅子」のほうが、品質がいいらしい。

椅子の品質研究ってなんだよ。野暮ったいのかうちのデザインは。

『Capitalism 2』の製品品質は技術力と、材料の品質で決まる。

つまり弊社製品は「いい木材を使っているが、技術力が低いため総合的な品質が低い」と市場に評価されてしまったようだ。

あわてて研究所を作る。サンフランシスコの近郊。町の中心地から離れてはいるが、研究に輸送費はかからないので大丈夫。
地代の安さが大事。みればほかの企業も似たような場所に研究所を建てているもよう。研究学園都市。つくばみたいなもんか。

「椅子」の研究を開始。

売れないクソダサい「椅子」の在庫と膝を抱えて約1年、ようやっと、他社には及ばないまでも、そこそこ見れるレベルの「椅子」を作れるようにはなったようだ。

さっそく私は古い在庫を処分して、新しい、イケてる新作を売り出す。

正直、品質はまだ他社に負けている。しかしここで私は広告を打つ。テレビCM。するとブランド力が高まり、たいしてかっこよくもない椅子がなんかいい感じに見えてきたのか、他社をしのぐ売れ行きをみせるようになってきた。

バーカバーカ。消費者バーカ。

ビジネスは品質と広告と価格の総合戦略。品質で負けても広告で勝てばいいじゃない。そんなことまで学べるのが『Capitalism 2』なのである。

結果、弊社の「ベッド」と「椅子」はバカ売れ。他社はジリ貧。貯まった資金で他社の「椅子」製造技術を購入。「困ったときこそ助け合い」とかなんとか甘言をろうしたんじゃないすかね。知らないけど。

買い取った「椅子」の技術で弊社の椅子の品質はさらに上がり、稼いだ利益はうなぎのぼり。ふと気づけばサンフランシスコの人件費が高騰しており、人の安い上海に工場を移すことも検討していいころだ。

愛国心?何かねそれは。私は私の金を愛しているだけなのだ…。

かくして私のビジネスウォーズは本格化していくのであった。

ここまで紹介した「生産」「製造」「小売り」以外にも、プレイヤーはマンションやビルを建てて家賃収入で不動産王になることもできる。テレビ局や新聞社を買い取って、広告収入で稼ぐメディア王にもなれる。株式購入でライバル会社を支援しつつ、その配当で金を得ることもできる。

つまり、ありとあらゆる方法で、金を稼ぐことができるのだ。金が金を生むってこういうことなのか…とため息をつきながら、経営を楽しく学び、いつしか冷徹な経営者の顔にプレイヤーをさせる恐るべきゲーム。

それが『Capitalism 2(キャピタリズム2)』なのであります。

おすすめです。

 

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J1N1の「ゲーム批評」批評

 

これがプロの文章である。

コンセプト、斬新。着眼点、新鮮。何よりもテキスト全てが読みやすく、わかりやすく、心地よい。読んでいて一切のコスト=負担がかからない。

このゲーム批評祭には皆さんのご厚意と挑戦心から多数の優れたゲーム批評が寄せられた。いずれもゲームへの愛を訴え、その価値を証明せんとする意気込みに満ちたものであり、その間に貴賤はない。

だが誰もがブログで、3000万PVに達成できるわけではない。誰よりゲームに詳しい必要も、誰より豊富な語彙を持つ必要も、誰より面白い話ができる必要もない。ただ、ただ、わかりやすいだけでいい。