ゲーマー日日新聞

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#ゲーム批評祭 『killer7』 著者:slaughtercult

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著者:slaughtercult(@p6inki11er

 

【1.Hand In "killer7"】

結論から言えば、平成ゲーム史上で十指に入る怪作と評して差し支えない。

 

今は昔、PS2が隆盛を誇っていた当時、『killer7』というゲームがあった。
陰影を強調したグラフィックと、残虐なゲーム性が特徴の問題作だ。
NGC用ソフトで唯一『CERO: 18歳以上のみ対象』に指定されたほどである。

 

私がこのゲームを購入したのは、今は無き地元の古本チェーン店。
箱の擦り切れたNGC用の中古ソフトが、4,000円を超える強気の高値。
オリジナル版は現状プレミア価格で、新規購入に二の足を踏ませている。

 

発売から10年以上経つ年月は、かかる怪作をも忘却の彼方に押し遣った。
一部の熱狂的なファンたちは、旧世代機で細々とこの作品を愛で続けた。
時は流れ、2018年5月。PC/Steamという新境地で、怪作は息を吹き返す。

 

【2.タイトル画面に充満する、危険な美学】

黒背景、原色のタイトル、生き物めいて蠢く文字……構成部品は以上。

 

正直言って、今更オリジナル版を引っ張り出すのも、些か億劫ではある。
その点、PC用Steam版は手軽でいい。価格も2,480円とお手頃だ。
PCリマスター版は、無修正版であるNGC版準拠*で、新規にも勧め易い。

 

(*オリジナル版はNGCとPS2で発売されたが、PS2には表現規制がある)

 

ゲームを起動するや否や、その異様な雰囲気に圧倒される。
黒背景の警告表示。意図的に水平を崩した、尻上がりに伸びるフォント。
白背景に会社のロゴ。笑い声、そして銃声! 背景が真っ赤に染まる!

 

黒背景にズーム音……尾を引いて四方向に伸びる光……『killer7』。
それだけだ。余計なOPムービーなどない。ミニマルさを突き詰めている。
クールだ。緊張感が高まる。自分は今、ヤバいものと対面しているのだ。

 

『NEW GAME』を選択。文字が四方八方に暴れ回り、耳をつんざく笑い声!
この瞬間、我々は『killer7』の奇特な世界に、引きずりこまれた。
荒ぶる文字笑い声は、このゲームを怪作たらしめる要素の代表格だ。

 

【3.唯一無二、としか言いようがない】

『多層人格アクションベンチャー』とは一体何か?

 

FPS×三人称視点ベルトスクロール×ADVの『ハイブリッド』。
このゲームを表現する上で、これより他に適切な表現は無い。
ゲーム性として最も近いのは、『GUNSURVIVOR4 BIOHAZARD』辺りか。

 

移動は自分の意思で行えるが、『進む』か『戻る』に限られる。
道が突き当たれば、道路標識めいてPOPする進路分岐(ジャンクション)。
これはADVの要素……やはりこのゲームは、STGだけではないのだ。

 

自由な点は少ない。移動し、敵を倒し、会話を『収集』し、謎を解く。
定められたストーリーに沿って行動し、結末を目指して生き延びる。
ゲームの肝は、プレイヤーが『それ』を目撃(追体験)する点にある。

 

多層人格と呼ばれるキャラ交替システムは、様々な意味でゲームの要だ。
STGで例えれば、性能の異なる複数の機体を持ち歩くようなものだ。
編隊ではなく、複数人で1人。同時に使えるキャラは1体だけである。

 

戦闘面だけ見れば、アーケード版のSTGとさほど相違は無い。
だが、単純なベルトスクロールSTGと括るには、違和感が残る。
このゲームは、既存の規範による分類を拒む、全く異質の存在なのだ。

 

【4.大手メーカーでは躊躇う、危険過ぎるネタだ】

笑う顔("HS"ヘブンスマイル)は、世界秩序に挑戦する聖戦士たちだ。

 

話の舞台は、並行世界のアメリカ合衆国。主人公は殺し屋『killer7』。
神話的な2つの存在が、政治と国家紛争の裏に黒幕として君臨している。
差し迫った世界的脅威・HSと、ある国の滅亡がストーリーの中核だ。

 

主要な敵は自爆テロリストの改造人間。奇矯な発想と言わざるを得ない。
彼らは人間で、兵器だ。透明で、笑い声を上げ、そして自爆する。
千里眼を持つ『killer7』は、彼らを『実体化』し『殺る』ことができる。

 

その戦闘は陰惨極まり、血の池地獄(ブラッドバス)といった様相だ。
ゾンビなら頭を潰せば死ぬが、今作の敵『HS』は死なない。
頭や手足を失っても、体力が残る限りしぶとくどこまでも追ってくる。

 

HSに操作キャラが殺されると、キャラの生首どアップで『死亡』ドーン!
道端に遺された、生首入りの紙袋を『回収』するのが蘇生方法だ。
ボタン連打で生命力を『注入』する儀式が、ゲーム世界を強調している。

 

皮肉なことに、このゲームの残虐さは戦闘面だけには留まらない。
殺人と死体が絡むストーリーなので、時々どこかしらで誰かしらが死ぬ。
成る程、確かにこのゲームは『18歳以上のみ対象』に相応しい。

 

【5.奇異な描写の割に、ゲームとしては単純だ】

プレイヤーは血を収集する。あたかも他ゲームの経験値や貨幣のように。

 

『血液』は残虐描写のみならず、ゲームの中核となる要素でもある。
ゲーム中の主要な消費アイテムは、2種類の血液……ただそれだけだ。
プレイヤーはHSを『上手く』殺ることで、彼らの血液を回収できる。

 

血液は回復剤であり、特殊攻撃の消費アイテムであり、経験値でもある。
ゲームを上手く進めるには血液が重要で、他に裏技や秘訣など無い。
肝心のSTGが下手では、血の回収すらままならない。中々よく出来ている。

 

HSは簡単に死なない。弱点はある。ピンポイントで狙い撃てば、一撃必殺。
今作でいうSTG要素とは、素早く狙い撃つ『精密射撃』の反復なのだ。
強化次第で多少ゴリ押しも効くが、ゲーム性の根幹は『精密射撃』にある。

 

UIはミニマルだ。銃を構えても、親切な装弾数表示などありはしない。
画面右上の開いた目は、知らなければ体力ゲージとは気付かない。

サブメニューは直感的で、最小限の情報を、しかし明確に示してくれる。

 

シンプルイズベストが徹底している。重要なのは、会話と血液だけだ。
装弾数は有限だが、所持弾数は無限……残弾に気を配る必要もない。
敵を倒すのはストーリーを進めるため。その基本が実に徹底している。

 

【6.ゲームであることを忘れ“させない”】

ベルトスクロール移動は、虚構の限界を覆い隠すテーブルクロスだ。

 

ゴア全開の頓痴気を装いながら、緻密な美意識で作られたゲームだ。
ダイアログの蠢く文字と、エグい翻訳文はセンスフルで、特筆に値する。
HSを即死させた時の、血の花が散るようなエフェクトは素晴らしい。

 

音楽や効果音も、いい感じにゲーム的であり、映像に劣らず素晴らしい。
HSの即死時と、人格交替時の効果音は同一だが、これがまた耳に残る。
BGMは場面転換で曲が変化し、プレイヤーのテンションをダレさせない。

 

本編に頻出する『残留思念(=幽霊)』は、このゲームの大きな特徴だ。
正直言って、本編で出会う人間は、生者より死者の方が圧倒的に多い。
残留思念は身体が半透明で、声もエコーがかかっていて芸が細かい。

 

戦闘面で言えば、いきなり目の前に敵がドーン!という状況は少ない。
視界の外で笑い声が聞こえ、少し移動し、『索敵』すると敵が現れる。
索敵(スキャン)』という行為は、このゲームに欠かせない『儀式』だ。

 

ゲーム進行の節々に、いかにもゲーム的な『儀式』が仕込まれている。
通常キャラで死亡⇒蘇生キャラで回収という行為は、その最たるものだ。
ボタン連打で蘇生させるペナルティは、プレイに一定の緊張感をもたらす。

 

『ハーマン部屋』と呼ばれるセーブポイントは、非常に象徴的な空間だ。
TVを用いた人格交替、血液の精製と人格の意識改革(レベルアップ)。
しかし謎の空間である。論理を飛び越えた超現実性の一端が表れている。

 

【7.いい点ばかりでないことも確かだ】

全貌を開示する気の無いストーリーは、それだけで批判の的になり得る。

 

所々にやっつけ感は見られ、やはり手放しで称えられるゲームでもない。
キーアイテムである『微妙な造形物』は、名前通りに微妙過ぎる存在だ。
美術的・造形的センスはどうあれ、普通の鍵にしなかった理由は不明だ。

 

キャラクターの性能で言えば、特に盗人(コヨーテ)には疑問符が残る。
リボルバーは暴君(ダン)と被っているし、特殊攻撃の効果が分かり辛い。
私のプレイだと、プレイ後半では、特殊技能の鍵開け専門になってしまう。

 

その鍵開けも含め、道中の『取ってつけたような』障害物もまた問題だ。
『指輪』の魔力による超現実的な問題解決は、論理性を破綻させている。
ただ指輪にまつわる登場人物・スージーは、私の好きなキャラの一つだ。

 

ストーリーは、幻と現実の境目が曖昧で、容易な理解を拒んでいる。
歯に衣着せぬ言い方をすれば、支離滅裂だ。要するに電波なのである。
ストーリーは監督も公言する通り、自分なりに解釈することが要求される。

 

最後に難易度の話だが、基本的に初回プレイでは『死闘』を選ぶべきだ。
『敢闘』は些か易し過ぎ、『死闘』の練習台になるとは到底思えない。
弱点の自動ロックオンまで譲歩したのが良かったのか、私には判らない。

 

【8.それでも私は、このゲームを愛している】

残忍な殺害描写、個性的過ぎる人物たち、虚無感に満ちたストーリー。

 

さて、今回の批評ではGhM社と、監督・須田51氏については割愛した。
私は須田ゲーの重篤患者ではないし、批評はゲーム単体のみをすべきだ。
しかし、私は服毒本OSTをどちらも持っていることだけは断っておく。

 

正直な話、私はゲーマーと呼ばれるほど沢山のゲームをプレイしていない。
寧ろ、一般的にゲームをする人より少しの作品しかプレイしていない。
私は『自分の波長に合う』と思ったゲームしか手に取らない性質だからだ。

 

まあ、だから、冒頭の煽り文句がどこまで適切なのか私には判らない。
判らないが、このゲームが秘めた猛毒は、私を充分に満足させてくれた。
色々な意味で、毒のあるゲームだ。受け付けない人も相当数いるだろう。

 

それでも私は、このゲームを愛しているし、性懲りなく人に勧めもする。
まあ、面と向かって勧めることは躊躇われるが(一回勧めたことはある)。
残虐描写を割り切れる人なら、プレイする価値はあるかも知れない。

 

良くも悪くも、それは唯一無二のインタラクティブ体験となるに違いない。
最後にNGC版パッケージの煽り文で、この批評を締め括らせて頂こう。

ハードで、ドライで、ナイフエッジ。この不条理社会に酔・い・シ・れ・ろ。

 

 

 

「違う! 僕じゃない! 誤解なんだ!」

 

―――――

J1N1の『ゲーム批評』批評

 

                             ソウ      シ                          

『killer7』のファンっているか?

 

エネルギー        モ    アマ               ワカモノ

精力している若者たちだ

 

マイニチ       カイ      オナニー            レンチュウ

毎日4 自慰してる連中

 

  ザンネン

だが残念なことに

 

カレ          アイ                            グウゾウ

らがする『killer7』は偶像

 

       ジダイ       ヌ

だが時代いてしまったんだ

 

先程の批評も「ゲームへの愛を感じる」と言ったけど、あちらとは全く別の方向性でこのslaughtercultさんの批評からは「愛」を感じずにいられない。

具体的な作品への指摘はもとより、何と言ってもこの文体。言うまでもなく『killer7』の作者の一人でもあるSUDA51先生へのリスペクトだろう。文体のアートを通してゲームそれ自体を表現する、論理でなく言語それ自体を通して作品を説明するというのは……見事と言う他ない。

音楽や映画の批評では稀にこういった表現を見ることもある。特に往年の雑誌媒体ではよくある手法だ。

だがゲームへの批評でかくも見事なボキャブラリーを見たのは始めてだ。似たようなことに挑戦した人はいるにしても、ここまで見事に『killer7』を伝える言葉遊びはない。

ゲームクリティックであると同時に、ゲームリリック。美しきバイオレンスのゲームへ捧げる唄。

嗚呼、今は遠い赤い故郷よ。