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【評価】『CoD:MW』ベータ版最速レビュー・感想 10年前のCoDキッズよ、お前ら全員あの時代に帰れ。

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批評/J1N1(@J1N1_R1

 

 

スポーツ系から一転、リアル系へ

明らかに「遅くなった」

 

これまでの『Call of Duty』シリーズ(以下CoD)が走りっぱなし、飛びっぱなし、撃ちっぱなし、ついでにアビリティやグレも使いっぱなしのラン&ガンスタイルの遊び方を追求していったのに対して、最新作『Call of Duty: Modern Warfare』(以下CoDMW)は反対に、とても遅くなってるとテスト版をプレイしていて私は感じた。

 

その遅さは、未来戦に移行して当たり前のように空を飛んだり跳ねたりという以前、つまり『CoD4』や『CoD:BO』といった「黄金期時代の『CoD』」よりもなお遅い。

 

具体的には、『CoD:MW』は全体的に「リアル」になっている。主人公の走る速度は遅くて撃たれても逃げ切ることが難しいし、何より銃の反動が大きい。反動が大きいというか、『Counter Strike』のように暴れるので、マウスでもリコイルコントロールしきれなさそう。あとダッシュ→構えの等諸々のモーションも全体的に遅い。

 

何と言っても大きいのがミニマップの廃止。赤点どころかミニマップ自体が廃止されたことで、常にマップのどこに敵がいるのか目視で捉える必要が生まれた。ただ左上の情報だけを見て索敵できる時代ではなくなったことで、どこに敵がいるのか常に「考える」必要があるのも、「遅くなった」と感じる理由だろう。*1

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ずいぶんUIはスッキリした

 

これは私の感想だけでなく、開発陣もインタビューで「銃は可能な限り実銃を再現している」と強調している。

 

新しいカスタマイズ要素・ガンスミスには、海外のミリオタガチ勢でさえ唸らせる驚異的な作り込みで、未来戦というフィクショナルを追求してきた従来シリーズに対して、完全に「リアル系」という方向で差別化を取るという意志を感じる。

 

 

この結果、『CoD:MW』では基本的に一つのことしかできない。走るか、撃つか。グレを投げるか、投げないか。その判断が重要だ。撃つべき時に走ったり、走るべき時に撃つ人間は勝てない。

 

その際たる象徴が、本作からの新アクション「gun-mounting」「tactical-sprint」だ。

 

「gun-mounting」は要するに依託射撃。『CoD:MW』はシリーズの中でも特に銃の挙動がリアルで、フルオートで撃つとかなり暴れるのだが、壁や障害物に近づいて銃を固定する「gun-mounting」をすることで格段に反動が消える。

 

このアクションのおかげで、「待ち」が強い。ただ、単に芋プレイを推奨しているわけでなく、あくまで銃を固定する障害物が必要なので、「思いも寄らないところに隠れて敵を撃つ」という戦略はあまり向かないし、固定すると死角から撃たれるリスクがある。だからちゃんと相手が来るであろうルートを見張る時に使えるアクションだ。

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特にARやLMGでは重要アクション

 

一方、移動には「tactical-sprint」が使える。これは通常のスプリント(走り)よりも早く走れるが、銃を構える速度が遅くなるというスプリント。早く移動できるだけ撃たれた時に生き残れる可能性は高まるが、その分即座に反応して撃ち返すといったプレイはできない。

 

これがまさに、「撃つか」「走るか」という本作のゲーム性を象徴している。「走りながら撃つ(ラン&ガン)」ではない。いつ走り、どこを撃つか判断する長期的な思考が本作では鍵になるだろう。

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『Apex Legends』のオクタンみたいな

 

また本モードでは活用されなかったが、マップによってはドアが配置され、そのドアは爆発物などで突破できるようになるという。それらも明確にこの「長期的な思考」を問うための仕様と考えられる。




さて、ここまで聞くとかなり評判が割れると思う。「ラン&ガン時代」の『CoD』こそ至高と考える人にとっては少なくとも好意的なものではない。

 

だが実際に遊ぶと、この作品は新しい方向性を模索する上で非常に完成されていると感じた。そして何より、もう「ラン&ガン」では作れないという開発側の考えもある。

 

『CoD』は今かなりのどん詰まりで、売上も明確に落ちている。最盛期の『CoD:MW3』(2011年)では3000万本売れたが、2018年の『CoD:BO4』では1400万本とその半分以下に落ち込んだ。黄金期を体現する『CoD:MWR』もプレイヤーは一瞬で消えた。

 

何故そこまで作品の評価が落ちたのかといえば、それは『Call of Duty』というシリーズが毎年何本と売りに出す上で、二度も「マンネリ」という病に冒されたからだと考えている。


本作は端的に言って「最後の賭け」だ。つまり、もう後がないのだ。

 

 

CoDを襲った二度のマンネリ

「マンネリ」

 

エンタメにおいてこれほど恐ろしい病はない。何百話と続いたテレビドラマ、少しずつ主演が老けていく中でも続編を出す映画、終わらせる気があるのかという漫画、そして毎年のように出すシリーズ系ゲーム。全てマンネリに罹患した末路だ。

 

『Call of Duty』シリーズ(以下CoD)はまさにこの問題に直面していた。

 

2003年にPCで『Call of Duty』をリリースしてから現在までほぼ毎年、「軍の戦争を舞台にしたそこそこリアル系のFPS」を発売し続け、今やメインシリーズだけで18作3社の開発会社が同時並行で作っているゲームなんて『CoD』くらいで、そりゃマンネリもするわというもの。

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特に『CoD』でマンネリが悪化したのが『CoD:BO2』~『CoD:Ghost』あたりだろうか。いい加減、いかにフラグムービーに興奮するキッズ層でも「これやってる事一緒じゃね?」と気付き、YouTubeの新作トレーラーで低評価が目立ち始めたあたりに、それならとActivisionが出した新作『CoD』が『CoD:AW』

 

主人公がサイボーグになり、空を飛んでいた。

 

「いくらマンネリでもそれはねーだろ」という意見と、「いや、こうなるしかなかったんだよ」という諦観が混ざる中、それでも『CoD』は舞台を未来に、人間を超人に、リアル系をスポーツ系に変えることでマンネリ打破を狙った。これまでより早く、より高く、より激しく、スポーツ系と呼ばれるような動きの激しいゲーム性を追求していったのである。

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もはや炎上と言っても良い低評価の数



しかし、この路線には課題が3つあった。

 

1つは、世界観の違い。まず『AW』でゲーム性より真っ先に批判されたのは、実銃ではなく架空銃を登場させる方向性だった。デザインの好き嫌いは人それぞれだが、これまでの『CoD』は実際の軍隊や銃器を登場させる「リアル路線」であり、未来戦はその真逆だった。これまでファンだったミリタリー趣味のプレイヤーを切り捨てることになる。

 

2つは、パッド操作との相性の悪さ。これもパッドを使いこなしたプレイヤーによっては問題にならないが、『CoD』はそもそも『CoD4』で、これまでのFPSにない快適で簡単な操作故に、コンシューマ版(パッド)に適応できたことで爆発的にプレイヤーを増やしている。だが、ジャンプしたりスライドするといった複雑な動きは、パッド操作で追いつき辛い。その結果、非公式のマウスを無理やり導入するなどの半ば不正行為に走るプレイヤーと勝負にならなかった。

 

最後の最大の懸念は、2つ目の課題に近いのだが、ユーザーのベテラン化、つまり動きが激しいほどプレイヤー間の技術格差が広がり、初心者が一方的に狩られる点だ。元々『CoD』は数あるFPSの中で特にカジュアル故に広いユーザーに親しまれていたが、ルールが複雑化し、操作も難しくなると、そういったカジュアル層がついていけず、かつ長年プレイしてきたベテラン層が増える中で余計にその格差が広がったのだ。

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無論こういった未来戦の『CoD』の方が好きだというプレイヤーは多かったが、売上がシリーズの全盛期から半分にまで減った時点で、開発側も未来戦の先細りは無視できないと考えたのか、『CoD』は少しずつもとの形に「戻って」きた。

 

前前作『CoD:WW2』ではシンプルに「原点回帰」と銘打って、第二次世界大戦で地道な撃ち合いを楽しめるようになった。

 

前作『CoD:BO4』はこれまで通り未来戦で、超人的な動きをできるゲームだが、前作『BO3』と比べて動きが控え目で、自動回復もなくなり、所謂「リアル系」の道を模索し始めたと言えるだろう。

 

だが所詮、昔の『CoD』を作っても元の木阿弥だ。本作の大幅な方向性転換に伴って「MW2やBO時代のCoDが良かった~」という批判も少なからずあるが、アレは単にノスタルジーに浸ってるだけで本質的な意見ではない。

 

彼らには『CoD:MWR』が神速で過疎った理由を是非説明してもらいたいと思う。仮に「古き良きCOD」を作ったところで、もうその頃のファンは飽きてるし、単純に歳をとって当時のスポーツ系にはもうついていけなくなってるということ。

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『CoD:WW2』は結局ただ「戻った」だけで、進んではいないのだ。

 

前置きが長くなったが、本作『CoD:MW』が出た経緯はおわかりいただけただろう。

 

『CoD』が戦い続けたマンネリという病と、その病を治す未来戦という治療もマンネリ化するという泥沼の中、実質的に最後の賭けとでも言うべき形で『CoD』がリリースされた。私は少なくともそう認識している。




ただ競技的なだけではない、「ごっこ遊び」のCoDへ

元々カジュアルなFPSだった『CoD』が、毎年シリーズ新作を出すというビジネスのために未来戦へ移行し、よりハイスピードな上級者向けのゲームになっていった中、それでもまだマンネリ化した『CoD』。

 

最新作『CoD:MW』は最後の賭けだった。テンポを早める「スポーツ系」ではなく、逆にテンポを遅くした「リアル系」に振り切ったのだ。

 

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キャプテン・プライス、あなたが最後の頼みです

 

最初に述べたように、本作は「走りながら撃つ」ことが難しい。走るか、撃つか、どちらか一つを選ぶ、選択のゲームだ。長期的な判断を持つ人間が勝てる。

 

これが存外面白い。感覚としては『レインボーシックス シージ』が近い。あの作品ほどシビアなわけではないが、あらゆるゲーム性がリアル系に振り切っているのに、ゲームとしてそこまで不快なわけではないところが『シージ』のように優れている。非常に細かくアニメーションを作り、モーションも徹底して微調整した結果だろう。

 

これまでの反射神経とエイムでゴリゴリ敵を倒すより、いつどの場所に陣取るか考えて戦えば勝ちやすくなっている点も評価したい。

 

これはちょうど、『CoD4』~『CoD:BO2』頃の黄金期に学生時代だったCoDファンが、歳をとって今のスピードについていけないと感じている層にぶっ刺さる。時代が戻っただけでなく、落ち着いて戦略的な撃ち合いを楽しめるので、目まぐるしさを感じないのだ。

 

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銃はいちいちかっこいい。全部実銃の名前ってわけにいかなかったけどね。

 

言うまでもなく、このリアル路線は現代戦を舞台とする世界観と非常によく合っている。改めて実際に自分が兵士になったような気分で、戦場で戦っているような『CoD』本来の醍醐味である緊張感をしっかりと味わえるのだ。

 

未来戦へ移行した理由の一つに、「実銃のライセンスが高くつく」と聞いたことがあるが、やはり実銃でなければこの没入感は味わえないと思う。SFファンなら未来戦でも良いと感じるだろうが、実銃ならではの「兵士ごっこ」はこれぞ『CoD』だと思う。

 

例えるなら、サバゲーに近い。実銃で撃ち合うというミリオタ的な趣向もそうだけど、何より本物に限りなく近い小道具を使うからこその、得も言われぬ一体感、没入感。『CoD』は競技性が優れているだけでなく、男の子が思わず童心に返ってしまう「ごっこ遊び」として何より優れていたのだ。

 

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10年前とは比較にならないほど進歩したビジュアルもこの「ごっこ遊び」と抜群に相性がいい。こだわり抜いたと言われる銃の挙動もそうだ。

 

だから新作『CoD』は是非とも「男の子同士で」遊んでみてほしい。女性同士でディズニーランドに行けばいつでも「女の子」に戻れるように、野郎同士で『CoD』を遊べば「男の子」に戻れる。兵士ごっこができる。頭の悪い中二病設定も思いつく。なんか無駄にコールサインとか言っちゃう。

 

総じてテスト版だが期待できる出来だった。製品版が非常に楽しみだ。

 

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*1:因みに、モードによってはキルストリークでUAVを発動できる。しかし、これも4キル(or12キル)でのみ、つまりスコアで発動しないだけ、シリーズで最も発動しづらいUAVとなる