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メディアに中々取り上げられない、隠れた宝石ゲームを5本紹介!「東京ゲームショー2019」レポート

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今年9月12日から開催されている東京ゲームショー(以下TGS)。ゲーマーの諸賢は実際に現地に行ったり、配信を見たり、ニュースを流し読みされていたりするかもしれない。

 

皆さんはどのタイトルに注目されているだろうか。『Cyberpunk 2077』?『DEATH STRANDING』?もちろんそれらも楽しみだ。しかし、最早ここを読んでいる程のゲーマーであれば、わざわざ長時間並んで試遊したりするよりも先に、予約しているのではなかったか?

 

そんなわけで、今回は既に大作・期待作の情報は抑えているコアなゲーマーに向けて、大手メディアが大々的に取り上げないような小粒ながら、しかし十分に期待できるゲームを紹介しようと思う。

 

ION LANDS『CLOUDPUNK』

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まず紹介したいのが、ドイツのベルリンからやってきたION LANDSの新作、『CLOUDPUNK』だ。『ブレードランナー』等のサイバーパンクに強く影響を受けているであろうギラギラとネオンが輝く街を舞台に、違法な「運送屋」としてただ荷物を輸送するのが本作の目的である。

 

なんせ運送屋のゲームなので、このゲームには戦闘も、カーチェイスもない。ただ美しく広いオープンワールドの中で、A地点からB地点まで物を運べばいい。それは一見してごく単調で、退屈な内容にも思えてくる。

 

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だが、小規模のインディースタジオが作ったと思えないほど広大かつ美しいサイバーパンクの世界を、思う存分楽しむ上でこの職業は実に適しているし、この暗黒の街を舞台にした、フィルム・ノワール的な濃厚な物語と、それに伴う物語の分岐を見事に駆り立てている。

 

現地ではパブリッシャーの陳さんが質問に答えてくれた。ズバリ、この作品の醍醐味は物語と世界観にあると言う。「主人公は運送屋として、ときに危険な仕事に手を染めることもあります。犯罪組織や、場合によってはテロ集団などにね。逆に彼らに荷物を届けないことで怒りを買うかもしれない。そういった選択の連続によって、このマップも少しずつ変化していくんですよ。」

 

サイバーパンクといえば、メインホールで『Cyberpunk 2077』の巨大ブースが展開されていたが、一方でこの『CLOUDPUNK』も見逃せない。

 

Sukeban Games『N1RV Ann-A』

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次にSukeban Gamesが開発し、PLAYISMが国内のパブリッシングを行う『N1RV Ann-A』だ。本作は退廃的な未来でバーを経営しながら、お客との会話を通じて主人公の過去を省みる『VA11 Hall-A』の続編となっている。

 

「アデルハイド」など合成飲料を駆使し、偽物のカクテルを作る物悲しい経営状況のバーが舞台だったが、今作はリゾート人工島を舞台としているためか、ちゃんと本物のお酒を使ったカクテルを作れる。その量、種類もかなり増えた印象だ。

 

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しかし何と言っても、注目すべきはこのおっぱい魔神の主人公。前作では「控えめ」と作中でも称されたバーテンダー、「ジル」の悲しい過去と逞しい人間性を掘り下げる濃厚なアドベンチャーだったわけだが、本作の主人公「サム」は前作のドロシーを思わせる甘い風貌に、誰がどう見ても「豊か」な胸部とすっかり真逆の印象だ。

 

おいおい、Sukeban Gamesもついに「媚び」だしたか~?などと余計な心配を抱いていたが、実機をプレイして一瞬でその邪推は吹っ飛んだ。ネタバレは避けるが、サムにもまた一瞬の試遊では到底伺いしれない深く暗いパーソナリティがあり、またやってくるお客も金持ちばかりといえ、この社会で押しつぶされないよう懸命に戦う暗黒の住民だったのだ。

 

因みに、本作では新たにカクテルをシェイクするインタラクションが追加されたのだが、何がとはあえて言わないが、「揺れる」。それもかなり。

 

カラメルカラム『ALTER EGO S』

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『ALTER EGO S』は日本のディベロッパー・カラメルカラムが開発する、心理学と文学をテーマにしたゲームだ。元々はスマートフォン向けに自分探しタップゲームとしてクリッカー系のゲームとして作られていたが、今回Switch版を開発するにあたってかなり作り直されている。

 

オープニングから引きの強い本作だが、今回は「エス」との対話に重きを置かれている。主人公は思索したり、本を読むことで、「エス」と会話するための引き出しを増やす。その後でエスと対話する中で、更に含蓄が増えていくという具合だ。

 

さらに会話パートにおいても、単に正解となる選択肢を選んでいくだけではなくて、時間経過によって選択肢が増えたり、逆に減ってしまうのが面白い。ちゃんとエスの言葉に耳を傾けて、その時々に最適な解答をしてはじめてゲームが進む。会話のキャッチボールが見事に当てはまっていると感じた。

 

開発の大野さんにもお話をうかがった。まず今回、Switch版を開発した経緯として、じっくりと腰を据えて遊べる『ALTER EGO』を作ってみたかったとのこと。そして特にユーザーから「エスともっと話したい」というフィードバックを受けて、エスの表情を大幅に追加したり、そのための演出を作り、会話量も大幅に追加したいようだ。

 

やはり『ALTER EGO』においてエスは最も重要なファクターなのかと聞くと、「かなり」とのこと。それ以外にもユーザーのフィードバックにかなり耳を傾けられているようで、だからこそSwitch版の完成が待ち遠しい。更に今後の展開として、Steam版やPS4版の開発も検討しているそうだ。

 

『ALTER EGO S』を試遊した感想として、モバイル版『ALTER EGO』をプレイした時に感じた可能性が見事に結実しているというか、「まさしく、これが作りたかったのではないか」と思わせる魅力があった。コンセプトとゲームプレイが見事に噛み合っており、これは非常に期待できる。

 

ROCKFISH Games『EVERSPACE 2』

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『EVERSPACE 2』はドイツROCKFISH Gamesが開発する、宇宙を舞台にしたフライトシューティング&ローグライクだ。広大な宇宙をさまよい、海賊たちを退治しながら自分の宇宙船を強化していく。

 

前作の時点で、その美しい宇宙の描写と中毒性の高い内容から、既に高い評価を得ていた『EVERSPACE』だが、今作の進化は相当なものだ。まず宇宙の表現に関してはもうAAA級に匹敵するレベルで、特に惑星の影からまばゆい光と共に恒星が少しずつ登っていく様などは、これがとてもインディー規模とは思えない。

 

そして何よりボリュームが大幅に増えた。前作はローグライクといっても使えるマシンや武器に限りがあったが、本作はそうではない。数種類だったマシンは数十種類へ、武器やアイテム、NPC、フィールドも詰め込めるだけ詰め込んだという。

 

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開発者のシャーデ・マイケル氏曰く、本作が目指したものはスバリ、スペースオペラの『Diablo』だという。とにかくボリュームが増えたし、それによってロールプレイも楽しめるようになった。戦闘、交易、冒険、そういった宇宙でやりたいことを何でもできるのが本作の醍醐味と。(因みにシャーデさんには思わずビールを奢ってもらった。なんというビール好き。)

 

またドイツのパビリオンを開いたドイツゲーム協会の方にもお話をうかがった。

 

今回TGSで出展したのは、ドイツゲーム協会の意向だという。ドイツ連邦政府との連携と出費を通じて、ドイツの優れたゲームを世界に広めるために世界中のゲーム展に出展しており、特に広告を出す予算がないが優れたインディーゲームを広報したいのだとか。まったくもって羨ましい限り、日本も政府レベルで同人ゲーム、インディーゲームの文化的価値をもっと尊重してほしいと思わずにいられなかった。

 

FIREFLY『Stronghold Warlords』

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最後、ぶっちゃけ個人的な大本命が『Stronghold Warlords』。

 

いやー、楽しみだね。初代『Stronghold』は防備と籠城に特化したRTSとして人気があり、私自身『Stronghold』の大ファンで、例の「おすすめ50本記事」にも入れてるほどなんだけど、その先の続編がどれも今ひとつで、特に最新作の『3』は散々で続編も危ぶまれていたけど、今回『Warlords』を試遊してかなり期待できるんじゃないかと思った。

 

『Warlords』の舞台は東アジア。これまでの『Stronghold』シリーズと同じく、ざっくり「西欧」「アラブ」みたいな感じて「東アジア」なので、侍と弩兵と遊牧民が同じ部隊にいたりするなんちゃって世界観だ。私はこれが結構好きなのである。

 

ユニットの描写も素晴らしい。『Stronghold』といえば、自分の領地で労働者をせっせと働かせている姿を見て回ることだと思うが、今回は建築物から何まで全部アジア風に刷新していて、ずっと見ても飽きない。田んぼで米を植えたり、養豚場を作ったり、石切場から牛で運んだり……。『Banished』が好きな人なんかはドハマリするんじゃないかな。

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開発FIREFLYのニックさんにもお話が聞けた。まず今回東アジアを舞台にしたのは、純粋に自分たちがアジアの歴史や文化に対してすごく好意的で、それをなんとかゲームにしたかったからとのこと。あえて文化圏をごっちゃにしたのも、「武将(Warlords)」システムをうまく活用する上での工夫なんだとか。

 

そして何より聞けて嬉しいのは、今回は初代同様に防戦一方でも勝てるゲームにしたってこと。じっくりと領民を増やし、巨大な要塞を築き……といった元来『Stronghold』が持っていたあの楽しみ方に返り咲いていると聞いて、期待せずにいられない。一人用のキャンペーンは防戦一方なのに対し、ちゃんとスカーミッシュやマルチプレーも存在していて、そちらでは攻城用ユニットなども活躍するようだ。

 

さっと試遊してみた限り、やはりプレイフィールは初代『Stronghold』に近い。既に領民やユニットたちはかなりディティールまで作り込まれていて、早くて2020年にリリースされるというのは、ある程度確かなものだろう。日本語化も既に進んでいて、こちらにも期待したい。




さて、TGSも早くもあと1日。素晴らしい大作のブースもよいが、インディーゲームブースにも魅力的な作品はたくさんある。もし現地に行かれる方がいれば、是非そっちにも足を運んでほしい。

 

知られていないだけで、優れた作品はたくさん存在する。特に今回した5本に関しては、実際にプレイした限り既にかなりクオリティが高く、発売日が待ち遠しくてならない。