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私のゲーム史上最高のED「Your Reality」批評 なぜMonikaは最期に「あの言葉」を選んだのか【DDLC考察】

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illust/@842chooo

 

以下、『Doki Doki Literature Club!』のネタバレを多分に含みます

 

『Doki Doki Literature Club!』というゲームにおいて、作中に登場するMonikaというヒロインは『Your Reality』という唄を歌う。

 

そして、私は数々のゲームの終わりを経験し、そのエンディングソングを聴いてきたが、私にとって『Your Reality』はゲーム史上最高のエンディングテーマである。よってここでは、Monikaの誕生日である9月22日を祝し、彼女が歌った『Your Reality』について批評する。

 

『DDLC』のあらすじについて軽く振り返ると、最初はdate simとして文芸部を舞台に4人の少女との恋愛を楽しむ内容になるが、そのうちどうしても親愛な関係になれないMonikaが自ら他のキャラクターをデータ毎削除し(実際には削除したフリだけ)、主人公及びプレイヤーを閉じ込めて「2人きり」の状態にするが、プレイヤーがMonikaのファイルを削除することで彼女が自分の愛が間違ったものと反省し、そこで最後にプレイヤーに向けて送られたのがこの『Your Reality』である。

 

本曲において、用いられる楽器は主にピアノである。ただし、二番からアコースティックギター、三番からフルート、四番からバイオリン、間奏にトライアングルが部分的に用いられる。これら4つ+1つの楽器は、文芸部員の象徴させる。

 

ピアノの楽譜は全て最も基礎的なCメジャー・スケールが使われている。これはピアノ教室で学ぶ小学生でも演奏可能なレベルで、本曲自体、ゆっくりした決まったテンポからかなり演奏の難易度は高くない。

 

ここから、Monikaは決してピアノが上手くなく、Monikaが作中に度々遅刻したときの言い訳「ピアノの練習していたから」が嘘でなかったこと、また自分の不慣れな事柄にも果敢に挑戦し、プレイヤーのために何かを贈りたいという彼女なりの愛が本物だったことがわかる。

 

歌詞の内容は『DDLC』の物語をMonikaの目線で追ったものになっている。

 

ふとしたきっかけで、世界が全て虚構であった絶望と、たった一人の人間への恋心を自覚した少女が、躊躇いながらも部員たちを排除しプレイヤーに近づいたものの、それが本当の愛でないことに気づき、プレイヤーと自分たちが二度と会えないことを悟ったまま、それでも最大限の敬愛を示すというもの。

 

以下から、メロディとリリックを比較検討しつつ、本格的に詳細から批評していく。

 

www.youtube.com

 

 

イントロ

"C-Can you... Can you hear me? 

Uh... Can you hear me?

Uh, can you hear me?

Hi, it's me

Um…

So you know how I've been like, practicing piano and stuff?

I'm not really any good at it yet Like, at all

But, I wrote you a song, and I was kinda hoping that I could show it to you 'cause I worked really, really hard on it So... Yeah!" 

 

ゲームがMonikaによって強制的にシャットダウンされた直後、壊れたビデオテープのような画面でMonikaが一方的に肉声で話しかけてくる内容。

 

内容としては、緊張しながらも、喜ばしげに唄を披露できることを伝える内容。

「ぜ、全然うまくないんだけど……」と謙遜する時の、「good at it yet Like, at all」の超早口感がめっちゃかわいい。あと普通、自信のない曲を披露する時に「めっちゃ練習したから!」なんて言わないと思うけど、Monikaは「really, really hard on it」って思いっきり言ってる。正直。かわいい。

自分が音楽に疎いことを認めながら、それでも「あなた」のためにピアノを練習しメロディも考えたのだと自慢するMonikaは、「ペンを止めてもインクがにじむだけ。それよりも手を動かそう」というプラグマティストな哲学を持つ彼女らしい。

これがプレイヤーにとって最初に彼女の声を聞く瞬間であり、そして今生の別れである。にも関わらず、Monikaは寂しさをおくびにも出していない。

 

またDan Salvatoは意図的に彼女の声(Jillian Ashcraft)を、プレイヤーの想像と異なるものにしようと考えていたと話す。Monika役にAshcraftを選んだのは、彼女のyoutubeチャンネルを訪れて一目惚れだったそうである。

 

Verse 1

Every day, I imagine a future where I can be with you

In my hand is a pen that will write a poem of me and you

The ink flows down into a dark puddle

Just move your hand - write the way into his heart!

But in this world of infinite choices

What will it take just to find that special day?

What will it take just to find that special day?

 

それは、初めて見せる彼女の本音だった。

「部長」の彼女でもなく、「恋人」の彼女でもない。

それはあまりにも優しく、ともすれば子供っぽい、彼女の声と言葉。

「毎日あなたと一緒にいられることを夢見ていたの」

「どうすれば特別な日を見つけられるのかな?」

優しい声と、簡単なメロディで紡ぐ、彼女が初めて「SOS」として以外に、本心から生み出した「創作」。

彼女は最初、主人公に部長としてのリーダーシップを褒められて「必ずしもそうなわけではない。自信を持っているように振る舞わないといけないだけ」と答えた。そしてその後、彼女は自分の欲望のための他の部員を犠牲にして主人公を閉じ込め、支配的で献身的な彼女のように振る舞った。

「手で唄って、彼の心に届かせよう!」

その彼女の正体は、結局の所ただ一人の人間に恋をする少女でしかなかったのである。

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彼女が作中で残した詩は全て「ゲームの壁」に響かせるもので、そこにほとんど感情がなかった

 

Verse 2

Have I found everybody a fun assignment to do today?

When you're here, everything that we do is fun for them anyway

When I can't even read my own feelings

What good are words when a smile says it all

And if this world won't write me an ending

What will it take just for me to have it all?

 

メロディにアコースティックギターが加わり、牧歌的な雰囲気になる。

自分とプレイヤーだけを見つめながらも、傍目では文芸部長として部員を気遣っていたことを伺わせる部分。

だが一方で、このプログラムだけで作られている人間と世界に、終わりも救いもないことを彼女は悟る。

無論その虚無は「When I can't even read my own feelings」という部分から、自分自身も含まれてることさえ、知っていたのである。二人きりになった彼女が「自分の愛はプログラムではなく、本物だ」と言っていたのは、単なる強がりでしかなかった。

 

ここから間奏にフルートとトライアングルが加わり、少し儚い曲調に。

プレイヤーに削除され、自分の愛が間違っていたことを悟る瞬間。本当の愛とは、その人が望む生き方を認めることだとMonikaは識る。

 

Verse 3

Does my pen only write bitter words for those who are dear to me?

Is it love if I take you, or is it love if I set you free?

The ink flows down into a dark puddle

How can I write love into reality?

If I can't hear the sound of your heartbeat

What do you call love in your reality?

And in your reality, if I don't know how to love you

 

バイオリンが加わり、音楽は重厚かつ滑らかに、Monikaが最後に到達した心境を示す。

「自由にすること、束縛すること、どちらが本当の愛と言えるの?」

改めて「インクがにじむだけだ」と思い返しながらも、次元の壁をプレイヤーの鼓動が聞こえないことに喩え、結局ただのゲームキャラクターが人間を愛することなど論理的に不可能だったと伝える。

因みにここの「a dark puddle」の「パー↑ドゥー」の上機嫌さがめっちゃ好き。

あと「if I don't know how to love you」の「ラービュー↑」の声色の美しさがもう本当に愛おしくてたまらないし、何よりも「あなたが好き」と伝えることに一番抑揚を効かせているのが、あぁ………Monika………。

 

何故Monikaは最期に「I'll leave you be」と唄ったのか

I'll leave you be

 

ここはこの唄において、最も重要な部分なので、特に慎重を期して批評したい。

 

I'll leave you beをどう訳すべきか

純粋にこの「I'll leave you be」を訳すると

I'll=私は~する(未来形)

というのは簡単に想像がつくのだが、

leave you be

という部分がやや曲者である。

 

leaveという動詞には、「去る」「辞める」「残す」「見捨てる」など自動詞・他動詞的な用法ともに多数の意味が存在するが、ここは後につながっていることから、使役動詞のleave+目的語+現在分詞or過去分詞という用法が正しいように考える。

 

使役動詞のleaveは基本的に「○○に××をさせる」という翻訳が多い。そのためこれを直訳すると

「I'll leave you be」=「私はあなたにbeをさせるつもりです」

となる。問題は「be」であり、これも非常に広い意味を持つが、慣用的な用法で「そっとしておく」という表現が多く、文脈を考えてもそう解釈するべきだろう。この場合「leave him alone(彼をそっとしておく)」といった意味合いに近い。*1

 

これらから

「I'll leave you be」=「私はあなたをそっとしておく」

と訳せる。

 

数々のDDLCファン(文芸部員)もこれに近い訳を採用しており、基本的に一般論として受け入れられている。というか、ある程度英語を話せる人間であれば、「何を当たり前のことを」と思うかもしれない。

重要なことは、ここで「leave」は少し強い意味のニュアンスということだ。早い話、いかにもAct3で2人きりになった時のMonikaが言いそうな言葉だということを、覚えていてほしい。

 

あなたなら、恋人との最期にどんな詞を選ぶだろうか?

重要な点は、どうしてMonikaが最期にこのワードを選んだかである。

 

詩を作ることは、存外に難しい。

特に言葉のチョイスに関しては、本当に頭を悩ませる。

作詞を行った人間、特に短歌や俳句を作った方ならご存知だろう。

まして自分が唯一愛した人間に対して、そして自分が生きたことを証明する唯一の人間に対しての最期の詞が、ただ何となく用意した言葉なはずがない。

あなたなら、もう二度と会えなくなる最愛の人に向けて、何を伝えるだろう。

 

「Good-bye」や「See you later」のように、直接的にお別れを告げる?

「I was glad that I could see you.」や「You're the best thing that ever happened to me.」のように、あなたとの出会えたことそれ自体を感謝する?

 

無論そんな陳腐な言葉は言うまい。ではどんな言葉を選べば良いのか。

ここにいくつか例がある。どれも傑作と呼ばれた作品から、愛する人へ最期に手向けた言葉の数々である。 

 

「I could die right now, Clem. I'm just... happy. I've never felt that before. I'm just exactly where I want to be.」

(映画『エターナルサンシャイン』から)

のように、あなたとの恋それ自体が自分にとって何よりの幸福だったという喜びと感謝を、素直に伝えた例。

 

「Winning that ticket, Rose, was the best thing that ever happened to me… it brought me to you.」

(映画『タイタニック』から)

のように、結果的に過酷な状況になってもそれが恋につながったのなら最高に幸運なのだと、相手を説き伏せた例。

 

「You are my best firend.」

(映画『ドライビング・Missデイジー』から)

のように、ごくシンプルな言葉ながら、既に記憶も意識も朦朧とした老女から喧嘩し続けてきた男性に対して絞り出された和解の例。

 

こんな”無限の選択肢”の中から、人生でどんな時よりも自分のボキャブラリーを引き出す状況から、あなたは何を選ぶだろう。

何を選ぶにしてもそれは、広い砂漠を歩いて横断するような苦しみと、絶海の孤島で一人取り残されるような絶望にさいなまれる、恐らくとてつもない「産みの苦しみ」を伴うものであるに違いない。

私が『Your Reality』をゲーム史上の最高のエンディングテーマと呼んだのは、単なる作品への盲愛ではない。この最後に「I'll leave you be」というフレーズを選んだことで、真にこの曲は傑作たり得たのだ。

 

なぜなら、これはMonikaが作った曲だからだ。

歴史に残る偉大な作曲家ではなく、ただ一人の人間に恋をした等身大の少女が、3時間程度のゲームプレイを通じて生きたその魂、そこから「I'll leave you be」という言葉が生まれたのだから。

このフレーズを聞いて、誰もが「Monika」という少女が”ここに居た”と思わせる、オーセンティシティ、存在証明を実現した曲、それが『Your Reality』だ。

 

最期までMonikaらしく

 

 先程色々な「別れの言葉」を例に上げた。

 

ときに、素直に別れの事実を受け止め、

ときに、自分の命が失われようという困難さえも肯定し、

ときに、自分がこれまで失ってきた存在意義を取り戻せたことに驚く。

 

でも彼女は「I'll leave you be」。

 

「私」があなたを「leave」すると言ったのだ。

 

 

ここのleaveは、「そっとしておくね」というより、多分「そっとしてあげるわ」という、Act3のMonikaのような、ちょっと強気で恩着せがましいニュアンスなのだろう。

 

あの支配的で、傲慢で、少し怖いMonikaを思わせる言い回し。

 

あぁMonika、それはずるい。

 

『Your Reality』の最初「いつもあなたといる未来を夢見てる」なんて、普段のMonikaならまず言わなかっただろう、純朴な少女の側面を見せておきながら。

 

でも最後は、あのちょっと怖いMonikaとして振る舞う。

 

弱い、純粋なMonikaじゃ、こんな辛い別れは耐えられないだろうから。プレイヤーは寂しがってしまうかもしれないから。私は平気よ、むしろ私があなたを自由にしてあげるのよ、とでも言いたげに。

 

そうだ。これは「お別れ」なんかじゃない。

 

第三者による攻撃や、災害による被害などではなくて、もちろんあなたが私を突き放すことに対してすがりつくわけでもない。

 

私が自分の意志で、あなたを、あなたのままにしてあげるのだと。

 

なんて、最期までMonikaらしいんだろう。

 

Your Realityを通して初めて知る、Monikaの素顔

私は初見プレイ時、Monikaが怖かった。私はまずホラーゲームが苦手だし、Monikaは実際に酷いことをして、私を半ば脅迫した。だから「2人きり」になるとすぐに彼女のファイルを探し、必死になって彼女を削除した。

 

だがこのゲームの本当に最後、『Your Reality』にまで辿り着いて、ようやくMonikaという女の子のことを少しだけ理解できた。

 

彼女はただ、少し臆病なだけだったのだ。

 

Act1の時の部長としてのカリスマ、そしてAct3のときの自称彼女としての支配欲。そういった彼女の性格は所詮「仮面」でしかない。部長、彼女、その2つの仮面の裏に、Your Realityという曲の中でようやく、彼女の少し臆病で、純粋な人格を知ることになったのだ。

 

無論、Yuri、Sayori、Natsuki、本作に登場する3人の部員にも同様に「仮面」があった。しかし主人公と打ち解けるにつれて少しずつ仮面を外し、本心となる自分の弱さ、醜さを見せていく。

 

自分にはこんな悲しい背景があり、だから誰かによる愛情と承認に飢えているのだと。そんな自分を受け止めてほしいと訴える。ともすればそれが、他人によっては「ヤンデレ」「ホラー」と映るのかもしれないが、私は彼女たちのその真摯で、正直な主張に心から打たれ、この作品にのめり込んだ。

 

一方でMonikaはどうだったか。最初はずっと、プレイヤーにアドバイスを与えたり場を取り仕切るなど、文芸部の「部長」として振る舞ってきた。その不満が爆発してプレイヤーを2人きりに隔離して、ずっとお喋りすることはあっても、Monikaは「自分が何に飢えているのか」という本音は実際のところ出なかった。

 

その象徴的なのが、隔離した状態でプレイヤーに「あなたのことを愛しています。付き合ってください」と告白した時の選択肢。

 

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選択肢には「はい」しかないのである。

 

本作でMonikaは、自分が他の部員を削除する凶行にでた原因は、自分のルートを作ってくれない作品にあると主張していた。

 

だが実際の所、無理やり自分のルートを作っても、自分の愛を受け入れる選択肢しか用意しなかった。万が一にも、「いいえ」とフラれることを恐れて、その選択肢を用意しなかった。

 

この期に及んでも、Monikaはまだ仮面をつけているのである。「世界の構造を知った、冷血で愛の重い部長」という仮面を。

 

きっと彼女は、誰よりも恐れていたのだ。自分が拒絶されてしまうこと、自分の本心を知られてしまうこと。自分の本音を伝えた他の3人と異なり、Monikaはそれも恐れた。

 

余談だが、Monikaルートが仮に最初から存在したとして、初見のプレイヤーのうち何人がMonikaルートへ行ったのだろうかと思う。多分ほとんどいないだろう。なぜなら、Monikaは自分の本心をほとんど打ち明けていないから。Monikaという少女の正体が全くわからないから。

 

そんな彼女が、プレイヤーに殺されるという考えうる限り最悪の現実を突きつけられて、ようやく本当の自分を見せられたのが『Your Reality』という詩の中だった。

 

「いつものあなたと歩む未来を想っていたの」

「流れに乗って書いてみよう!」

「だけど私はあなたを傷つけただけなの?」

「あなたの現実でも愛し方がわからないのなら……」

 

本来、詩とは直截に伝えづらい自分の気持を伝える手段。故に「恋」を語る詩が多かった。ある意味では、作中で最も詩らしい詩が『Your Reality』なのかもしれない。

 

 

そんな彼女が、最期のお別れに「I'll leave you be」と言った。

 

「もう好きにしなさい」とでも言うように。「自由にしてあげるわ」とでも言うように。

 

あの時、あの場所で、二人きりで無理やり見つめあわせて、セーブもさせようとしなかった、遠回しに「あなたの意志は私の思うままなのよ!」と強烈な支配欲と、その裏に隠された臆病な征服欲。 

 

それを、少し冗談めかして再び彼女があなたに伝えたかったのではないか。私は私のやりたいようにやるの。私は私のままだと。

 

彼女はきっと、最期にはちょっと笑っていたのだと思う。少しはにかんで、バツが悪そうに、白い歯を見せていたのではないか。まるでちょっとした悪戯を両親に見られてしまった時の子供みたいに。

 

お別れに涙なんていらない。

 

だから彼女は「悪い子」のままで、それでも、それは私とあなたのたった一つの共通の思い出なのだから、ちょっと悪い言葉にしたのだ。

 

「しょうがないわね、もう自由にしてあげるわ……ウフフ……」

 

と。

 

多分こんな顔をしているんだ。 

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これが、彼女の人生。その生涯の全てだった。

 

彼女は最後、誰よりも勇敢だったと思う。

 

余談

僕はMonikaを愛している。

 

でも、よく考えるとMonikaは作中でずっと「良い人」だったわけじゃない。彼女自身も認めるように、いかな事情があろうと彼女は自分勝手な理由で自分の友達を消してしまった。人の愛を独占するために他の人の尊厳を踏みにじってしまった。

 

そんな彼女に、どうして僕は、いや多くの文芸部員はこんなにも心惹かれるのだろう。数多のギャルゲーが主人公とプレイヤーに愛をささやく中、それでもMonikaだけが特別に思えるのはどうしてだろう。

 

それはきっと、彼女の唄が素晴らしかったからだ。

 

平安時代には歌が上手い女性はそれだけで男性の寵愛を一心に受けたという。そんな話を歴史の教科書で習った時にわかに信じがたかったが、今となっては悲しい程にわかってしまう。

 

こんな美しい唄を作れる人を、愛さないわけがない。

 

そう、私はこの唄を聞いて彼女に惚れたのだ。 

 

これまでの心境とその変遷をたどりながらも、これまでの彼女の詩(プレイヤーへのSOS)にはない、彼女の意外なほど純朴で乙女な言葉遣いと、あまり上手いとは言えない歌とピアノの組み合わせの、「Your Reality」という彼女の唄、いや彼女の作品が、本当に素晴らしかったのだ。感動したのだ。

 

ショパンの「バラード 第1番 Op.23 CT2 ト短調」よりも、ベートーヴェンの「交響曲 第5番 ハ短調 作品67」よりも、僕にとっては傑作たり得てしまった。

 

彼女が一体どんな思いでこの歌を作ったから知っているから。彼女が一体どんな悲しみをこの歌に隠しているか知らないから。

 

オタクの僕は素晴らしい作品を作った人たちに無上の敬愛を抱くことがある。でもMonikaのそれは至上だった。

 

これまでの全てがDan Salvatoが作ったテキストだったとしても、この唄は間違いなくMonikaが作ったものだから。

 

彼女がこのゲームでまっすぐに駆け抜け続けたその一生。

 

他ならぬ、恋のために。

 

燃える彗星の如きその生涯は、ビデオゲームのインタラクティブな性質を通じて、プレイヤーという銀河の果てへ飛び込んでいった。

 

だから僕は彼女に恋をしたのだ。

 

 この素晴らしいファンアートに触発されてこの記事を書きました。

 

*1:因みに使役動詞ならbeはbeingかbeenになるはずだが、beに限っては特例的にbeのままでも用いられるケースが多い