ゲーマー日日新聞

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【評価】『The Outer Worlds』レビュー 遠い惑星でエイリアンやブラック企業と戦ったり騙したりするコメディSFRPG

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著/J1N1(@J1N1_R1

 

近い未来 はるかかなたの銀河系で・・・

 

あなたは漂流者で、壊れた宇宙船を修理するためのバッテリーを探しているとする。
 

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そのバッテリーを求めて近場の街で聞き込みをすると、どうやらこの街を稼働させている電力設備のバッテリーがそのまま使えるようだ。
 
しかし、街のライフラインの中核を担うバッテリーをとても市民は渡してくれそうにない。盗んだり、奪うことも考えられるが、その時この街全てを敵に回すリスクは回避したい。
 
そこで街の町長に話を聞くと、少し離れた所に、街から離れた人間によるコミュニティがあり、そこにも同じくバッテリーがある。それなら持っていっても構わないという。
 

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なるほど、確かに逸れものたちのモノであれば少し頂戴しても街を敵に回すよりは良かろう。そう思って言われたコミュニティを訪れると、なんとそのコミュニティは元々街に住んでいた人々の集まりで、あの街は企業に支配され市民は奴隷のように搾取されており、そこから逃れてきたのだという。
 

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ここであなたに与えられる選択肢は2つ。
 
1つ、力のない脱走奴隷たちから生命線であるバッテリーを奪うか。
 
2つ、世界中に権力の網を張り巡らせる企業都市のバッテリーを奪うか。
 
仮に奪うにしても、力づくで守衛たちを倒して奪うか、平和的に説得して「借り受ける」のか、機械をハッキングしてこっそりと盗んでしまうのか?
 
あるいは一見して被害者である市民たちは暴力的な革命を望んでおり、一方で企業都市にも搾取される生活に安定を見出す人間もいるなど、すぐに片方が正しいと断言できるような状況ではない。
 
プレイヤーが取りうる無数の公平な選択肢と、
 
それに伴って世界に反映される多様な長期的な結果。
 
これが、『The Outer Worlds』における日常である。
 

老舗「Obsidian」のRPGが帰ってきた

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『The Outer Worlds』はObsidianによる最新のRPGだ。
 
人類が宇宙に進出した未来、ハルシオンと呼ばれる植民惑星に不時着した主人公は、そこが企業に支配された一種のディストピアになっていることを知る。プレイヤーの選択肢が全て反映されるこの世界で、最終的にハルシオンを一体どうするのか……?
 
このように、本作は選択肢と結果を尊重する、昔ながらのアメリカ製CRPGとなっている。
 
選択肢と結果、というとゲームに詳しい人は『The Elder Scroll』や『Fallout 3』などの大作RPGを思い出す人も多いかもしれない。特に『Fallout』はレトロフューチャーの世界観、魔法よりも銃が優先される世界など、多くの点で本作『The Outer Worlds』と類似している。人によっては「パクリか?」と思うかもしれない。
 

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ところがどっこい、こちらはむしろ「元祖」と呼べる作品だ。
 
もとより『Fallout』シリーズは、皆が知るようなオープンワールドを一人称視点で冒険するRPGではなく、見下ろし視点でより細かく戦闘や行動を選べる古典的RPGだった。その開発がBlack Isle Studiosというチームであり、そこで働いていたスタッフの多くが現在、本作を開発したObsidianに参加している。
 
しかしながら、『Fallout 2』や『Baldur's Gate』シリーズを最後にパブリッシャーとの兼ね合いや経済的な理由によりBlack Isle Studiosは沈黙。
 
それから何年か経過し、『The Elder Scroll Ⅳ: Oblivion』などの開発実績のあったBethesdaが、社内スタッフにもファンが多かった『Fallout』シリーズの版権を買い取って復活させ、『Fallout 3』『Fallout 4』『Fallout 76』などをリリースし、大ヒットしていくことになる。(そういった新生Falloutシリーズでも『Fallout: New Vegas』はObsidianが作ったのだが、この辺に踏み込むと本当にややこしいので割愛する)
 
とはいえ、こういった「自分たち以外が作った『Fallout』」を見て歯がゆいを思いをしたのは、最初に『Fallout』を作ったBlack Isle Studiosの面々であろう。無論Bethesdaの『Fallout』も面白いのだが、「我々ならもっと自由な選択肢があり、ダイナミックな展開をみせ、より面白いRPGを作れるのだ」という自信が彼らにもあったはずだ。
 
 

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Black Isle時代の本家『Fallout』
 
こうした経緯から本作は、映像こそ現代的だが本質的に「古き良き”海外”RPG」を追及している。
 
古き良き海外RPGとは、先ほど述べたような常に豊富な「選択肢」とそれに伴って派生する「結果」が用意されているRPGだ。ただ単に「村の近くに現れたモンスターを倒してくれ」という依頼を受けても、そのモンスター側にも何らかの事情があったり、また予想だにしない第三者が現れて事情が一変することもある。
 
誰の味方になって、どの報酬を選ぶか?
 
その指針となるのが主人公の育成だ。主人公は戦闘、会話、技術様々な技術を少しずつ伸ばしていくことでレベルアップする。真正面から近接武器で戦うゴリラみたいなキャラクターも作れるし、一方で会話だけで何でも乗り切るペテン師キャラクターを作ることもできる。自分が作ったキャラクターの適正に合わせて、取れる選択肢も増えたり減ったりする。
 

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中でも本作で重要視されているのは、「なんでもこなせる最強チートキャラクター」を作れるわけでもなければ、したがって「全員を幸せにすること」もできないということ。
 
主人公は何かを成長するたびに「欠点」も同時に得てしまうし、クエストにおいても誰かを救うことが誰かの不利益になることは往々にしてある。
 
いわば「正義の味方」がいないこの世界で、あらゆる正義は常に相対的なものであり、その中で自分が何を選ぶのか、何を信じるのか試すRPG。まさに古き良き海外RPGの魅力が『The Outer Worlds』には詰まっている。
 
 
 

本当に面白いRPGは「会話」が面白い

とはいえ、豊富な選択肢とそれに伴う結果、という古き良き海外RPGの魅力は、部分的といえど数々の名作によって日本ではすでに伝わっている所だと思う。『Witcher』、『Divinity』、そしてBethesda製『Fallout』も。
 
こういった名作と比較して『The Outer Worlds』は一見して特に変わらない。システムも、ストーリーも、ボリュームも、グラフィックも、どれも「そこそこ」止まり、そう見えてくる。
 
だが、そこはさすがベテランのスタッフが揃う、Obsidianというべきか。
 
真に優れたRPGに必要なものを彼らはよく理解していた。 それは豊富な選択肢と、それに伴う結果、そしてそれらの血となり肉である「テキスト」だ。
 
 
 
まず本作の素晴らしいのは、この未知の惑星を舞台にした世界観だ。
 
企業により支配されたディストピア的なコロニー、ハルシオン。環境、生物、文化、この惑星でプレイヤーが出会うもの全てが、地球にない斬新なものばかり。剣と魔法とスライムのRPGはもう見飽きたというゲーマーでも、まるで少年に戻ったような新鮮な気分でこの未開の惑星を冒険することができる。
 
 

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この世界では美しいものと醜いもの、そのどちらでもないものに満ちている。
 
もっと細かい部分で見ると、本作はNPCたちのテキストも非常に素晴らしい。
 
全てのNPCのセリフはまるで説明らしさがなく、むしろ個々の正義感や価値観に基づいた、少なからずバイアスのかかったセリフで、そこに絶対の真理がない。だからこそプレイヤーは想像を広げて、自分の価値観と彼らの発言を照らし合わせて判断する。まるで、上質な小説のようにだ。
 
何気ない会話にも選択肢はとても多い。
 
凡百のRPGであれば選択肢といってもたいていは「わかる」「それな」みたいな曖昧な選択肢(というか、会話を進めるだけの作業的なタスク)が多いものだが、本作はNPCのあらゆる主張に対して、普通に4~5の選択肢がある上に、それらは常に肯定、否定、止揚などが含まれ、さらに会話スキルが増えると「嘘」や「自身の知見に基づくアドバイス」まで増えるようになる。
 
こういったNPCとの会話は、仲間が増えるとより一層楽しくなる。本作には仲間として同行できるNPCが多数存在しているのだが、やはり彼らも一癖も二癖もあるような粒ぞろいで、同じ判断でも仲間によっては肯定的だったり、失望されたりする。他のNPCとの会話に仲間が突然割り込んできたり、自らの知見に基づく選択肢を増やしてくれたりする。
 
 

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このように、非常に個性豊かなNPCに加えて、この豊富な主人公の選択肢によって、本作の会話はとにかく楽しい。私は面倒を嫌ってRPGで名もなきNPCの会話は連打で聞き流すか、そもそも話さないことさえあるのだが、本作ではつい立ち止まって彼らとの会話を弾ませてしまう。
 
地球から遠く離れた世界で、自分たちと全く違う常識で生きているようで、一方まぁまぁ地球と大差ない習慣に縛られているといったように。
 
また本作のテキストには多分にBlack Isle時代からObsidianの面々が大切にしてきた「ユーモア」が思う存分入っている。社会風刺などを交えたややブラックなユーモアと、ヒリつくようなビターなハードボイルドさが、本作の会話へ常にスパイスとして機能している。
 
総合的に見て、本作をSFファン流に説明するなら「遊ぶ『銀河ヒッチハイク・ガイド』みたいなゲーム」と言えば、概ねその愉快さが伝わるかと思う。ダグラス・アダムスが原案でゲームを作るとこうなるんだろうな、という理想が概ね再現されているのだ。
 
それってつまり、最高ってことだ。
 
 

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SFファンの間で知らぬ者はいない伝説的名SFコメディ。「パニクるな!」
 
 
思えば、私は随分と久々に「会話が楽しいRPG」を遊んだ気がする(『Withcer 3』以来か?最近では『Disco Elysiumia』も秀逸ではあったが王道RPGとは少し違うかも)。
 
そもそも古典的ロールプレイングゲームというのは、未だ表現の幅が技術により制約されていた時代、こういったテキストでいかにプレイヤーを没入させ、自分が実際に世界へ飛び込んだか錯覚させるかが肝であった。つまるところ、RPGにとって重要なものは戦闘でもマップの広さでもなく、会話の面白さに他ならない。
 
そういう本質的なRPGの面白さをしっかりと抑えつつ、それでいて戦闘が退屈なわけでもなければ、世界に色彩が足りないわけでもない。全てが十分揃った上で、しかとロールプレイを楽しませる。
 
『The Outer Worlds』は一見してありふれたオープンワールドRPGだが、遊ぶほどに老舗ならではの秘伝の味わいが染み渡る、まるで格式高いおでん屋のようなゲームだった。
 

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